M2層の私の振り返り

お前の水夫

 命の値段が今でも安い世代

※F2層(女性)とM2層(男性)はマーケティングの用語で35~49歳の人たちを指す言葉だそうです。




 最初に言ってしまうと私はオッサンです。


 私が若い頃というのは同世代の人間が大勢いて、同世代の人間同士の競争意識というものがそれは熾烈しれつでした。


 今では出来たお父さんが、お子さんに対して「同世代の競争相手が少ないのだから、今は昔より楽だし努力してほしい」という本音を包み隠さず、かなり早い段階でストレートに伝えているかもしれません。

〔※ウソを交えずに伝えるのであれば、それは良いお父さんだと思います。〕


 それくらい以前と比べて若い人は物凄く減ったと思います。


 彼らが社会に出たら驚くかもしれません。

観察力のある子達は、池袋に遊びに行った段階で気がついていると思います。

会社に働きに行っても、学校と違って自分達と同じような世代が妙に少ないのです。


 これは今がそうであるというだけで、昔は同期の人間がモッサリ居るのが当たり前でした。それぐらい人間が余っていました。それぐらい「若い人達」が多かったのです。

 そういう時代ですから

「兵器で一番安いのは人間だ」 

「コントロールしきれない若い奴らはとりあえず殺そう」

とか言うような、そんな物騒で短絡的な作品が、日本では山のように作られていました。


「若い人たちが少なくなる未来」というのは私たちにとって、完全に絵空事だったわけです。今の現実を予想した人たちは本当に少数派でした。ほとんどは現状が見えて来てからてのひらを返した人たちでした。


 今でもデスゲーム系の作品などでは理不尽に大量の人たちが死んでいきますが、私は「人間が余っている」という感覚はそろそろ古くなってきているのではないかと思うのです。

 もちろん世界人口は増えていて、もう70億を突破してますが、それは日本で起きている現象ではありません。日本人としてはそういった感覚から離れるべきなのではないかと、最近にしてやっとそう考える様になりました。


 ずいぶんと遅れて、やっと気が付いたわけです。


 ちなみにまだ若い方々の中には

「それだったら海外の人々を主人公にして『大量デスゲ系』やるよ!」

という男気とチャレンジ精神溢れるご意見もあろうかと思います。また、それはそれで良いとは思います。

 海外では他国との戦争や内戦によって、大量の犠牲者が出ており、インフルエンザなどによる大量の死者が毎年のようにいるという現実があります。

 もったいないとか言うよりも先に人が死んでいっているわけです。海外の『大量デスゲ系』は過酷な現実に更なる理不尽を乗せるものになるでしょう。他国の文化に対するリサーチも大変です。その辺については頑張ってくださいとしか言えません。


 老人の再生や、オッサンの活躍する作品が最近では増えてきている様に感じますが、ひょっとするとこれは「人間を無慈悲に消費してゆく」というかつての作品群に対するアンチテーゼなのかもしれません。


「人間が大量に死ぬ作品」も昭和の頃から比べるとかなり減ってはきました。


あれらの作品は

「たくさん死んでもなんとかなる」

「自分の代わりはいくらでもいる」

という考え方の裏返しではないでしょうか。


 人がたくさん死ぬ作品でも、フィクションであれば良いのですが、せめてすぐ上で書いた様な考え方からは脱しようと、そう思うのです。 



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M2層の私の振り返り お前の水夫 @omaenosuihu

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