どこかの青春

森ノ内 原 (前:言羽 ゲン

どこかの青春

 僕は決心した。今日こそ言う!

 相手は、同じクラスの同級生。性格はいつもぼーっとしているおとなしめな子。いつも何考えてるのか分からない。 

 彼女をみんなが帰った放課後に、帰らないでほしいと伝えてはある。

 二人きりで教室にいられるようになった。


 「○○さん」


 普段通りぼーっとしている。最初返事が聞こえなかった。


 「なぁに……?」


 全然気力のない声だった。


 「ごめんね。こんな時間までいさせて」


 「………」


 「僕、○○さんに言おうと思って」


 「………」


 こくりと、それはそれはゆっくりと頷く。

 彼女が目線を合わせながら、無気力な動物に見えて仕方がない。

 僕の話を、聞いているのか?聞いていないのか?頷くだけだと、真剣に聞いてくれているかわからないが、それでも伝えたい事は伝える。


 「えっと…」


 「…………」


 「○○さん。クラスで気になる人いますか?」


 「………」


 「………」


 無音の教室で、互いに目を合わせながら沈黙を過ごす。

すると、○○さんがゆっくりと首を傾げる。


 「……気になる人って……?」


 また微かなボリュームの声で言ってきた。


 「あっ、その…ずっと意識しちゃう人って言うか…」


 アハハと、笑ってみせる。しかし○○さんは無表情だった。うんともすんとも言わず、表情を変えずにいる。ロボットみたいだ。

 首をゆっくりと元の位置に戻した○○さん。しばらくまた沈黙が続く。


 「みんな意識してる……」


 そりゃあ、僕も同じ。

 そうじゃない。こう、口で言うのがなかなか言いづらいのだけど……。

 …好きな人。

 

 「そ、それは僕も同じだよ」


 取り敢えず返事を返すと、思い切って言ってみるか!と内心気合を溜め込む。


 「えっと…」

 

 ずっとこっち見てる。すごく癒される///

 そして可愛い。好きな人の前だと、なんだか伝えにくい!


 そう、僕は彼女の事が好き!ずっと僕が気になっていた人だ。

 前から早めに告白をしようと心の準備をしていたのだが、いつ言うべきか悩んでいた。

 そして今日!放課後の誰もいない教室で、二人きりになった時にはっきり伝えようと決めた。


 「じゃ、じゃあ言うね!」


 彼女が真っ直ぐと視線を離さずに見てくれている。照れる///


勇気が湧いて来ない…ドキドキしてきた…

 僕は今まで告白なんて事してこなかったから、今不安で落ち着かない。内心焦りが止まらない。

固唾を飲み、しっかりと目の前の彼女に告白する。


 「…気になる人って言うのは……」


○○さんは、こくりと頷く。


 「好きな人……とかです…」


 「………」


 また沈黙となった。

 正直この時間は耐えられない。内心『やっちゃったかも!』と脳内に再生している。


 「その…男子生徒の中で……」


 「………」


 だめだ…段々と自信がなくなってきた。このまま気持ちを伝えても無理かもしれない…

 

 「……ううん」


 首を横に数ミリ振ってくれた。それで反動なのか、体も微かに横に揺れた。

 恐らく体に力が入ってないから、首を動かしたその振動で体も後からついてきたのだろう。


 「いないけど…」


 第一関門突破した!

 それがわかった僕は、最後のメッセージを伝えるのみ!

 残りの勇気を振り絞り、彼女に言った。


 「……そう、わかりました。あのさ、僕が言いたかった事なんだけど…」


 「……」


 彼女がこくりと小さく頷いた。

 この後、僕はしっかりと目を合わせて伝えた。


 「……僕!○○さんの事が好きです!僕でよかったら!付き合ってください!」


 「………」


 もう全てを投げ出して頭を下げた。後から手を出し忘れたのに気づいて、すっと手を差し伸べる。


 「………」


 「………」


 手から汗が止まらない。なかなか返事がない。

 僕は胸の鼓動を抑えたくても、我慢しながら返事を待った。


 「………」


 「………」


 なかなか返事がこない。


 「………」


 「………」


 …………ピタッ。


僕の手に彼女の指らしき感触を感じる。

 ゆっくりと顔を上げて手を見る。


 「……………いいよ……△△君」


 そっと彼女が僕の手を優しく握ってくれた。


 


 


 



 

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