どこかの青春3

 体育大会。これから行う競技は男子と女子混合の『鉢巻取り』!


 私達は紅組である。相手の白組達は皆、男子は背の高い人が多く、何より力が強い人達ばかりである。私にとって少し不利なのである。

 一方女子達は、運動神経が高い人達も多い。

 相手が強すぎる。


 「うわぁー…やばっ」


 思わずビビってしまった私。

 私の横には一人の男子生徒が立っていた。


 「ヒャッホー!楽しみだわ!こりゃ!」

 


 △△君。隣でテンション高い状態で高揚している△△は、私と違って緊張なんてしていない様子だった。


 「△△。お前無茶な真似すんなよ。馬鹿なんだから」


 「あぁ、なるべくしないようにするわ」


 他の男子達とそんなやりとりをしていた。

 そして鉢巻取り合戦が始まろうとしてる。

 気合を入れて、いざスタート!


 私は誰か同じくらいの背丈の人を探す。


 「誰か、誰か…」


 まず男子は怖い。絶対に勝てる自信がない。


 だから女子を相手にする事にした。


 「おっと!白組がリードしています。どんどん紅組の選手達が鉢巻を奪われていく!」


 えっ!私達ピンチじゃん!


 そして同じチームで、互いに頑張ろ!と励まし合っていたメンバーがグラウンド内に居なかった。

 みんな鉢巻を取られて、退出している。

  

 「え?え?ヤバい!もうやばいじゃん!負けちゃうじゃん!」


 白組の方がグラウンド内に多い気がする。

 本当にこのまま負けてしまうかもしれない。

 そして私が逃げている間に、とうとう目をつけられる。1人、2人がかりで私を追いかけてきた。


 「うわぁぁぁ!」


 しかも相手は全員男子。みんな背が高く、堅いもいい人達ばかり。絶対に捕まったら最期。


 「おい!反対側から挟め!」


 私は相手のその指示を聞いて横に視線を送ると、サイドから白組の人が追いかけてきた。

 反対側は逃げようとした。もう手遅れだった。行き止まりだった。


 計3人がかりで私を囲い込まれる。


 「よっしゃ!仕留めるぞ!」


 こっちに猛ダッシュで全員走ってきた。

 もうダメか…そう思っていた。


 「○○!」


 「えっ?」


 私を呼ぶ声が聞こえた。


 3人の間から誰か紅組の人が来ているのを見えた。


 「△△!」


 白組の3人のうちの1人に後ろから抱きついて動きを止めると、白い鉢巻を奪い取った。

 そして、すぐさま私の方に△△が走って来た。


 真ん中の人がやられた事で間に隙間ができた。そこから△△が割って出てきて、私の前へと現れ、手を掴んで引っ張って行く。


 「え?えっ!?」


 「オラオラ!走って走って!」


 彼のお尻のポケットには何人かの奪った鉢巻が入っている。

 

 その後△△と逃げ続けた事によって、私達はゲーム終了まで生き残った。


 結果……なんと紅組が1人差で勝ったのだ!


 もし私があの時取られていた場合、負けていた可能性があったのだ。


 笑顔でみんなと楽しそうにいる△△。

 そんな彼を見惚れていた私に、仲のいい友達が迎えに来てくれた。


 「おめでとう!○○。勝ったね!」


 「う、うん」


 そしてメンバー集合となり、退場した後だった。△△を見つけた。


 「ねぇ…」


 「おぉ!○○。お疲れ」


 「ありがとう…助けてくれて」


 彼はニッコリ笑顔で返してくれた。


 「勝ったな。俺ら!」


 「うん…。なんで一目散に助けに来てくれたん?無理するなって言われたたのに」


 「なんでって…」


 そして彼はこう答えた。


 「……助けたかったから」


 曇りのない瞳でこっちを見ながらそう言った。


 「あっ、うん……」


 あー///思わず照れてしまった。


 「次の競技、△△出るだろ?頑張れよ!」


 そう言って、私に手を振って自分の席に戻って行く。


 「………」


 私はその後、彼のいなくなった所で呟く。


 『ありがとう!』

 


 


 

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どこかの青春 森ノ内 原 (前:言羽 ゲン @maeshin

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