ゴスロリ私立探偵、現る!

オーバエージ

ポルシェで参上!冬の校庭で何が起こったか!?

昨日まで降っていた雪はやんだが、寒さは氷点下を超えていた。

学校前の一部が警察によるテープで囲まれていた。

男子生徒が2人も死んでいたのだ。野次馬が現れていたが、泣いてる女子もいる。

警察車から私服刑事が2人現れた。白い息を吐きながら、刑事の1人が、

「現状報告しろ」

体をさすりながら叫ぶ。

「はい!1人は鈍器のようなもので数回殴られた痕跡あり、もう1人は後ろから刺されたあとがありますが凶器は無し、指紋も鑑定中ですが無いと思われます。」

「凶器なし、か…。」

犯人は同じ生徒の可能性が高かったのだが、凶器を無くす知恵を持っているので大人の可能性もあった。

その時、警察車に紛れて黒いポルシェが止まる。颯爽と現れたのは白黒のゴスロリ探偵である。

「探偵!」

ゴスロリ探偵も白い息を吐きながら、落ち着いた喋りで言った。

「事件と聞いて駆けつけましたの」

刑事の1人は情けない顔で何とも困ったように言った。

「凶器も動機も指紋もない難事件でして…」

ゴスロリは2人の死体をかがんで観察し、

「確かに謎ですわね」

刑事は寒さをこらえながら言った。

「1人は固い鈍器のようなもので複数回殴られ死亡。」

ゴスロリの服がわずかに揺れた。

「あと1人は?」

「はい、後ろから刺されたようですが、凶器は無しです!」

「うん…」

ゴスロリ探偵は死体をじっと見つめてから、うなづいた。

「確かに謎ですわね」


そこへ警官がやってきて、白い息を大量に出しながら報告した。

「刑事!聞き込みによると、死んだ2人は1人の女性を取り合っていたとのことです!」

「よし!そいつを割り出せば犯人は決まったようなものだ!」

ゴスロリ探偵がさえぎるように言う。

「それだけで逮捕は早計ですわ」

刑事達は白い息を吐きながら固まる。

「例えその生徒がやったとしても、証拠がない以上逮捕できませんわ」

「それは…困りましたな」

「消えた凶器も、必ず身近な所にあるはずですわ」

「身近な所ですか…」

寒さで手袋をさすりながら刑事は困っていた。

「警察を全員総出で凶器探ししたいと思います。探偵も何とかお力をお貸し下さい。」


それからは聞き込みに行っていた警察官も全員招集し、凶器探しにやっきになっている。

探偵はあくまで2人の死体周辺を見ていた。

するとゴミ箱の屋根に何本もつららが出来てるのを発見し、

「これですわ!この鋭いつらら!」

刑事の1人が驚いた。

「なんですと⁉」

「このつららで逃げようとした男生徒を、刺したにちがいありませんわ」

刑事2人は寒さに耐えながらうなずいた。

「なるほど…だから凶器が溶けて無くなったわけですな!」

「さすがゴスロリ探偵、見る目がちがいますな!」


「…しかし」

「はい?」

ゴスロリの表情が苦悶を表した。

「こちらの鈍器で殴られた生徒の物的証拠が私にも未だに謎ですの」

刑事の1人がこちらへやってきて叫んだ。

「一度学校内のストーブでコーヒーでも飲みましょう!」

探偵もうなづいた。


学校内の教室で、ストーブを焚き、刑事と警官は皆コーヒーを飲んでいる。

「生き返りますな…」

探偵も警官も刑事もしばし黙ってコーヒーを飲んでいる。

少し落ち着いた所で、ゴスロリ探偵が口を開いた。

「特定の女生徒がいて、証拠も一つ判明しています。あとはもう一つ、物的な凶器さえみつかれば逮捕できるのですが、なかなか見つかりませんわね」

刑事が口をはさんだ。

「警察側も必死の捜索をしましたが、見つかっておりません」

警察に対して探偵は話を続けた…

「あと問題は動機ですけど、正直動機には興味ありませんの。女性の取り合いでもしていたのか分かりませんが、とにかく物的証拠が一番のカギですわ。鈍器で殴られているので、つららではないはず。難しい事件ですわね…」

刑事2人も答えを見つけ出せず、歯がゆい思いをしていた。

「休憩が終わったら再開しましょう。どこかに必ず何かがあるはずですわ」


ゴスロリ探偵がそう言った直後である。

「殺された2人と密接な関係のある女生徒をつれてまいりました!」

「おお!」


その女生徒は警官2人に連れられて、教室に入ってきた。

「なによ!」

ゴスロリ探偵はその女生徒にゆっくり近づき、ささやくように語り掛けた。

「あなたの仕業でしょう?吐いたほうが身のためよ」

「はぁ?発見者は?物的証拠は?動機は?わけわかんない」


女生徒はあくまで口を割らなかった。しかし痛い所を突かれているのも事実である。

探偵は言った。

「物的証拠が、つららなのは判明してるのよ」

そう言うと女生徒は少しピクっとなったが、

「なんでつららって断定できるの?なに言ってるのよゴスロリ!」

探偵はゆっくり息を吐くと、女生徒に言った。

「もう一つの物的証拠が判明すれば、貴方は捕まるのよ。あまり私を怒らせないでちょうだい」

「ちげーし!ふざけてんじゃないわよ」

「動機は何?恋愛のもつれ?それも言えない?」

女生徒は黙っている。

「もうこれ以上言っても無理のようね」

ゴスロリ探偵は元の椅子に戻り、

「あともう1杯コーヒーをいただいたら、捜査再開しましょう。女生徒は監視しててください」

「了解であります!」


再び寒さに耐えながら警官全員が証拠をさがしていた。しかし学校の回りは広い。探すのは砂浜にあるダイヤを探すのにも似ていた。

あくまでゴスロリ探偵は死体の周辺を探している。

「刑事さんちょっと」

探偵に呼ばれて刑事の1人がやってきた。

「なんでしょう?」

「わたしにも皮の手袋をいただけないかしら?」

「すぐ持ってゆきます!」

刑事は一旦警察車内に入り、手袋を持って戻って来た。

「どうぞ!」

「助かるわ」

そう言って黒い皮手袋をはめたゴスロリ探偵は、死体の周辺の雪をゆっくりとまさぐり始めた。

警官も総出で探してるが、見つからないでいた。さすがに刑事も、

「これは迷宮入りにはさせたくない事件ですな」

と言いながら、レシーバーで何やら会話をしている。

探偵はゆっくり雪を掘っていた。なるほど手袋が必要なはずだ。


2時間以上の捜索も泡と消え、証拠は未だ見つからない。

探偵は相変わらず死体周辺の雪を丁寧にほぐしている。

と、その時である。

ゴスロリ探偵は、なにかの欠片を見つけた。土ではない。

しばらく悩んでいた。刑事も駆けつける。

「何か見つかりましたか?」

「なにかのかけらをみつけましたわ」

「なんでしょうね、これは…」

そう言うと同時にゴスロリ探偵は、口に入れ食べだした。

「探偵!」

刑事は予想外の行動に焦りを感じた。

「モグモグ…これは‼」

「何です?そもそも食べ物なんですか?」

「ドンキポーテのビッグカルパスですわ!」

刑事達は顔を見合わせた。

「どうしてわかるのです?」

「食べたことがあるから、分かるのです。」

「鈍器だけにドンキポーテですか?」

ジト目で刑事に言った。

「そんなダジャレ言うために言ったのではありませんわ」

「失礼!」

「彼女はこれで複数回なぐり、凶器であるカルパスを食べて無くしたのにちがいありませんわ」

刑事がレシーバーで、

「近くのドンキポーテの監視カメラを押さえろ!今すぐにだ」

「彼女が映っていたら、即刻逮捕ですわね」

そう言って皮手袋を外し、刑事に渡した。

監視している女性にその事を伝えると、うなだれてしまったらしい。

「さすが名探偵ゴスロリさま、いいお仕事ぶりでしたな」

「こんなの朝飯前ですわよ。」

刑事と警官は探偵に敬礼をした。

「それと…」

「なんでしょう」

「もう一杯コーヒーをお願いできるかしら?」

刑事2人は、

「喜んで!」

と教室に案内するのであった。

ずっと雪をほっていたので、さすがの探偵もやはり寒かったらしい。


何か事件が起きたなら、すぐに私をお呼びなさい。


THE END

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