架空の島を舞台にした架空の物語ですが、読み始めればすぐにそれがメタファーを用いた痛烈な社会風刺であることが分かります。寓話的な、どこか客観的な語り口で書かれているのが読みやすいです。
端的に表現された島のシステムや、七日間に凝縮された一生が、現実の世界のあり方をまざまざと映し出すようです。しかも端々にくすぐられる言い回しが散りばめてあって、皮肉とユーモアが抜群に効いています。
読者はこの架空のお話の中に、きっと自分自身や周りの人間を想起するに違いありません。痛いなあ、と思いながらも読む手が止まりませんでした。
主人公の一生をたどるうちに、このシステム化された世の中で生きることの意味まで考えさせます。
人生と社会を凝縮した風刺画のような作品。ぜひご一読をお勧めします。