最終話 : アフターインタビュー

「……あー、マイクテスッ、マイクテスッ」


「えー、音声も大丈夫みたいですね。それではインタビュー撮影を始めてよろしいでしょうか?」

「あ、ええ、はい…」

「では、改めまして、番組入りからやらせてください。カメラマン、大丈夫? OK? じゃあ始めましょう」


「始まりました、リサのORION SHOW! 今夜のテーマは今話題の時の人、"恋の叫び手" ショーコさんにインタビューです!」


「みなさん、ある恋バナが全宇宙に響き、それが巡り巡って大切な人たちを救うに繋がった、この奇妙な物語をご存知でしょうか? この"恋も叫べば、血が巡る"と題された一連の音声放送は、人知れず、全宇宙電波放送を聞いている人の中で話題となっていきました。そして、星間救助隊にも届いたことがきっかけで、救助に繋がり、無事メンバー全員の心臓は再び動き出すことになったわけです」


「今回、ぜひその当事者であられる、ショーコさんに話を伺いたいなと。では、ショーコさん、率直に言って今のお気持ちはどうでしょう?」

「あ、えっと、まだ自分でもあまり理解しきれてなくて…」

「やはり、あれですか!? 地球に戻ってきたら、いきなり有名人になってしまって戸惑っているとか?」

「いや、だって恥ずかし…」

「え、なんでしょうか?」

「あ、いや、なんでもないです」


「で、この事件、星間救助隊の実態を表に伝える、と言う意味でも社会的にもかなり注目を浴びていますよね」

「あ、はい。あのヨーデルが…」

「イケメンの彼ですね! 危機を乗り越えたと思ったら、もう一度遭難の目にあった彼! そんな彼は、初めはこちらのダンさんに助けられ、今回はショーコさんに助けられたと。ですよね、ダンさん?」

「ええ、そう考えると、彼もとても苦労してますよね。きっと、これで救助を待つ人が少しでも減ればいいなと私も思ってます」

「ですよね! みなさんも遭難にはお気をつけて! あ、そんな時は恋を叫べばあなたも救助される、かもしれませんよ!」



「では、一旦休憩入りますー!」

「あ、あの、ちょっと外の空気吸ってきても良いでしょうか? 疲れてしまって…」

「あ、大丈夫ですよ!」

「ショーコさん、大丈夫か?」

「う、うん。ちょっと行ってくる」




「はあ、久しぶりに人前でちゃんと話すの、疲れる…」

(うん? あれ、たぶんショーコさん、マイク切ってないですね! あ、音効さん、このままで! ちょっと盗み聞きしちゃいましょう)


「ショーコさん、大丈夫か?」

「あ、だ、ダン。ごめんね。なんか巻き込んじゃって」

(お、ダンさんもきましたね! これは何やら…)


「ああ、まさかヨーデルのやつがテレビに話を持っていくなんてな。感謝を忘れない、とは言ってたけど、まさかテレビであんな泣きながら語るとは…」

「だ、だよね。まあ、二回も遭難から助けられたから、感動を伝えたい気持ちはわかるけれど…」


「で、でさ、改めて言えてなかったと思って」

「え、な、なに?」

「ほら、救助されてからさ、ずっとドタバタだったから、ちゃんとお礼、言えてなかったと思って。本当にありがとう。ショーコさんのおかげでおれも助けられた」

「いや、あれは私が、勝手にやってしまったことだし、放送もただ自分のためだったし…」

(おお、これはいい雰囲気じゃないですか!)


「そんなことないよ。で、でさ、あの放送で、話してくれてた、オレのこと…」

「え、え、え」

「その。すぐ、そう、とは言えないんだけど。おれも、ショーコさんのこと、もっと知れたらなと思って。えっと、その、この放送の後、食事とかでも、どうかなって」

「え、え、え、えぇ!?」


『……くぅ〜、ショーコさん、ダンさん、おめでとうございま〜〜す!」


「え、な、なに? 館内放送?」

『ショーコさん、ついに、恋が、叫びが、身を結ぶますね!』

「え、リサさん!?」

『実はお二人のマイク、ずっと繋がりっぱなしだったので、そのままスタジオで聴かせていただいてたんですよ!』


「え、じゃあさっきの…聞いていたんですか?」


『聞いてましたよ〜ダンさん! で、今のお気持ち、聞かせてもらえますか?』

「あ、いや、ちょっと照れますね…。って、あ、ショーコ、危ない! 大丈夫!? 顔、真っ赤だけど!」

「い、いや、ちょっと、色々と感情の荒ぶりと困惑でめまいが…。あと今、もしかして呼び捨てにしてくれた…? う、心臓が…。苦しい…」


『おお! 恋の叫びが眠れる王子の心臓を目覚めさせたと思ったら、今度は姫の血を激らせ胸を締め付ける!」


「うるさい!! ああ、まためまいが…」

「ああ、ショーコ、目を覚まして!」


『ということで、リサのORION SHOW! 今日のゲストは、"恋の叫び手" ショーコさんとその運命の相手、ダンさんでした! お二人の今後にも、ふふ、幸あれ! では放送はこの辺で! また次回をお楽しみに!』


<了>

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恋も叫べば、血が巡る 蒼井どんぐり @kiyossy

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