青い夏
真昼
第1話
あの青い夏を覚えているだろうか。
咽せ返るような暑さと鳴り止む事のない蝉たちが私たちを終わりのない永遠の世界に残そうとする。
一生脱ぐことはないと思っていた制服と染まる事のない黒い髪。
お昼を知らせるチャイムにヘルメットと自転車。そして、若さに期限は存在しないと疑わなかったあの頃。
すべてが永遠だと思っていた。
けれども、もう戻ることは出来ない。許されない。
どれだけ大金を用意しても懇願しても繰り返すことはない。
そして、いつしか忘れる。
私が見たあの青い夏はやってこないし、あの頃の私はもう隣にはいない。
そう思うたびに苦しくなり、苦しさから逃れるために考えることすら辞めていた。
でも、あの頃のように私を呼ぶ声が確かに聞こえる。
聞こえるはずのない渋谷のスクランブル交差点の真ん中で。
振り返ると信号は既に点滅を繰り返していた。
足早に横断歩道を渡り、誰も居なくなった車だけの交差点をじっと見つめる。
ちょうど季節は社会人になって初めての夏になろうとしていた。
異様な喉の渇きに夏の訪れを感じながら、フラフラとケータイのカメラで何もない交差点の写真を撮り、歩き出した。
永遠が崩れた瞬間だった。
青い夏 真昼 @mahiru_2
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