第三話 終わらない仕事

あの出来事の約数時間程前



「今日も晴れてんなぁ。はぁ…腹減った」

今日も俺は公園のベンチで、空を見上げながらたわいもない事を口にしていた。


が、そんな暇はない。まだ仕事の半分も終わってないのにも関わらず、公園で空を見上げ怠けている現状。


やる気はある、あるのだが未だ朝ごはんすら食べていない。いや、正確に言うと食べれない。何故か?金が無いからだ。一銭もと言う訳では無いが、毎日3食分程の金額は持ち合わせていない。


一日一食、早朝に食事を取ると夜には必ず空腹で吐き気を催し眠れなくなるので絶対に夜に食べる事にしている。



にしても月から土曜まで毎日仕事。朝七時から深夜二時まで、そして休みはたったの日曜だけ。それで給料は20万以下。


毎日激務で命も懸かってる、その割にこの給料の安さは、流石にふざけ過ぎじゃないか?デビルハンターは日本だけで20万人近くいるんだぞ!なのに何でこんなに激務で格安なんだよ!とお偉方に言ってやりたい。


「おい!黒瀬!」不満を爆発しそうになっていると、公園の入り口辺りから女性の怒鳴り声がした。こちらに駆け足で近づいてくる足音。聞き馴染みのある声、だいたい察しはつきながらも、視線を声のする方へと向ける。



「……七瀬二等お疲れ様です」

「サボりか?サボりだよな?お前、仕事舐めてる?」やっぱりだ。この誰から見ても整った顔立ちに、黒髪ショートヘア。そして全く似合わない土埃カーキ色の軍服。面倒い上司のお出ましだ。



「やー黒瀬君」そしてもう一人の上司、茶髪ロングの可憐な女性。

「相川二等お疲れ様です」

「おい、聞いてるか黒瀬!お前まだ仕事終わってないよな?公園でサボる暇があると、本気で思ってんのか?」



「いやだなぁ、……休憩ですよ休憩。ん?あれ?そういえば、なんで俺が此処に居るって分かったんですか?」



「ん?何でって、GPSだよ、GPS。少し前に渡しただろ、忘れたのか?」腕を組み不思議そうな顔で問いただしてきた。GPS…?



「あー、そうでした」完全に忘れていた。デビルハンターは常に命の危機に晒されているため、連絡手段の無い時のために、小型GPSを強制で持たなくてはならない。しかも2個。



「ていうか俺の休憩に気付くとか、どんだけ確認してるんですか」

「1日で大体100回くらい…だな」束縛彼女と思わず言いそうになったが、失礼過ぎるのでグッと堪えた。

「疲れないんですか?」



「疲れるさ。だが命が懸かってるんだ、どれだけ疲れてもやめないよ」

「は、はい」強い眼差しで見つめてきたので思わず謝ってしまいそうになってしまった。意識の違いというかなんというか、俺と先輩との格の違いが身にしみて分かる瞬間だった。


「で、パトロール終わったの?黒瀬君」

「え、えーと。ま、まだです」もうお昼過ぎなのにまだ半分も終えてないなんて言える訳がない。納得のいく言い訳を必死に考えようと目線を地に向けた。


「はぁ、まだ終わってないのか…。無能な部下を持つと大変だよ全く」そう言うと組んでいた腕を解き、呆れた様子で、俺の座っている一つ横のベンチへと腰をかけた。


ほんと無茶な仕事を格安で押し付ける会社には困るよ全く。「もう仕方ないなぁ、この相川お姉さんが半分手伝ってあげよう!」

「ほ、本当ですか⁉︎あ、ありがとうございます!」


こちらを見つめ、優しく言い寄るお姉さん!天使は実在するのだと心から思い知らされた。「おい!甘やかすな。いつまで経っても成長しないぞ。いいのか黒瀬、このままじゃずっと無能ままだぞ?」「俺が無能なんじゃなくて仕事内容がおかしいんですよ」


そう、おかしいの仕事内容であって、俺じゃない。そもそも午前中は見回り、午後は雑務。そして深夜もまた見回り。


朝七時から夜の2時まで。それで月25万。手取りではなく税金含めてこの給料。しかも運が悪ければパトロール中に悪魔に出会しあの世行き。こんなのを毎日続けるのにどれほどの労力を費やすか。おかしいのは世界だ。


「そんなに嫌なら辞めちゃえば?黒瀬君バイトでしょ?」

「いやまぁそうなんですが。少し……やらないといけない事があるので」

『……ん?』



「いいから早く行きません?相川先輩」一瞬空気が凍りついたが、気にせず話を進める。

「そうだね!さぁ、行くよ!」と、言いながらもポケットから飲み物を取り出して、ベンチへと直行そして俺の横に座る先輩……。



「あの先輩」

「何だね黒瀬君や」

「言ってる事とやってる事が真逆なんですが」

「大丈夫、大丈夫。私はすぐ終わるからさ」「は、はぁ」


まぁ確かに俺と相川さんじゃ回る速さは天と地の差だが、少し納得いかない。だが人にやってもらうのだから文句も言えない。でもやっぱり納得はいかない。


「言っとくけど、これ貸しだからね?今度ご飯でも連れてっよ?」

「へーい。じゃあ担当なんですが、8区は俺がやりますので、7区お願いしますね」



「オッケー。気をつけてねー。黒瀬君回るの遅いんだから小走りで行きなよ」

「分かりました。行ってきます」


一言多いんだよなぁ。10分程の雑談を終え俺は、重い腰を上げ、8区へと足を向けた。





主人公紹介



名前 黒瀬くろせ異綺いき

身長179 cm

体重 68キロ

誕生日 2月14日

性格 人付き合いも良く、明るく、冷静?

普段着 毎日黒スーツ

趣味 アニメ観賞、読書、映画鑑賞

能力 血の操作、結晶化

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

暴食の悪魔とデビルハンター 緑川 つきあかり @midoRekAwa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ