3 文芸部と映画研究部
注文を受けたマスターが
「誰から?」
対面に座る
「
夢が
「返事なら、今すれば? 私のことはお
「あ、はい」
相手は
「夢叶、もうすぐ撮影現場に着くそうです」
「さっき? 遅めの到着ね。足がまだ痛むの?」
「いえ、
夢叶とのトーク画面から、三年生の先輩のトーク画面に切り替える。『
「夢叶が、もう着きます……と。これで、ラストシーンの撮影が始まりますね」
「ええ。長かったわね」
静乃先輩が、薄く笑った。僕も、
一年生の僕と、二年生の静乃先輩、それから三年生の
「
「どうして私に訊くの?」
「僕よりも一年分、森浦先輩のことを知ってるじゃないですか。僕もミステリに興味があるので、きっかけがあるなら知りたいです」
文芸部が今までに発行してきた部誌によると、森浦先輩はエッセイ専門で、少なくとも今年の冬までは小説を
「私も知らないわ。森浦先輩とはそんなに話さないもの」
「森浦先輩のほうは、静乃先輩と話したいようですけど。ヒロイン役に、文芸部の女子部員の誰かを強く
「どうでもいい話ね。たとえそうだとしても、森浦先輩の
静乃先輩は、
一度目は、台本が完成して間もない頃。登場人物は映画研究部の部員たちが演じるが、主役の探偵であり男子大学生の主人公は、なんと我が部で
そんな
『もう決まったことだもの。私たちにできることは、
普段は素っ気ない静乃先輩が、優しい笑みさえ浮かべて部員たちを見つめると、みんなは
「じゃあ、ミステリの話を静乃先輩と森浦先輩に訊くのは、
「どうして、その名前を知っているの?」
静乃先輩は、窓から僕へ視線をシフトさせると、少し怖い顔で
「部誌の作品を読んでファンになったんです。すごく面白いミステリを書かれる方ですよね。でも、僕が大学に入る二か月前の部誌から、
「当たり前よ。文芸部を辞めたんだから。その話は、もうやめてくれる?」
「……はい」
好きな人が嫌がることはしたくないので、僕は
「いつもは時間に
「ああ、本当に大丈夫ですよ。あいつ、病院の予約を明日の午前中だと勘違いしてたらしくて、今朝家を出る直前に気づいて、急いで病院に向かったそうです。診察が終わったその足で電車に乗ったから、ギリギリになったらしくて……」
映画研究部に所属する夢叶は、部内の
本来であれば、クランクアップ――撮影完了は、七月末の予定だった。
しかし、夢叶が撮影中に転んで怪我をしたことで、撮影スケジュールを変更せざるを得なくなった。重要なシーンはほとんど撮り終えたあとなので、
「それなら、ちゃんと
静乃先輩は、ふっと
「よかったわね。ヒロイン役を最後まで務められそうで」
「え? ああ、そうですね」
「今日は静乃先輩が来てくれて、本当によかったです。合宿には来ないって言ってたのに、僕に会いに来てくれたんですか?」
僕が合宿にいくら
「鳥肌が立つ
「それでも嬉しいですよ。あ、そういえばクランクアップ後には、みんなで海で遊ぶらしいですよ。夢叶も大張り切りで、部員のみんなと
「嫌よ。着替えなんて持ってきてないし、
静乃先輩は、ちらと厨房へ視線を投げた。カレー
スパイシーな香りに気を取られた僕を、「ねえ、
「あなたは、本当はどうしてここに来たの? 寝坊も
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