第80話 ロドニー発見
ティティアだけではなく、全員のレベルが上がっている。さすが数時間ぶっ続けで狩りをしたかいがあったというものだ。私とタルトとリロイは68に、ミモザは64、ブリッツは65だ。
かなりいい感じでレベルが上がってるから、このままいけばボスの〈ルルイエ〉も倒せるようになるだろう。転職したケントとココアのレベル上げの手伝いも、かなりスムーズにできるね。
私はこんな感じにスキルを取得しましたよ。
シャロン
レベル:68
職業:ヒーラー
スキル
〈祝福の光〉:綺麗な水と〈空のポーション瓶〉×1で〈聖水〉を作れる
〈ヒール〉レベル10:一人を回復する
〈ハイヒール〉レベル5:一人を大回復する
〈エリアヒール〉レベル5:自身の半径7メートルの対象を回復する
〈リジェネレーション〉レベル5:体力を10秒毎に体力を回復する
〈マナレーション〉レベル5:30秒毎にマナを回復する
〈身体強化〉レベル10:身体能力(攻撃力、防御力、素早さ)が向上する
〈攻撃力強化〉レベル3:攻撃力が向上する
〈魔法力強化〉レベル3:魔法力が向上する
〈防御力強化〉レベル3:防御力が向上する
〈女神の一撃〉:次に与える攻撃力が二倍になる
〈女神の守護〉レベル5:バリアを張る
〈キュア〉:状態異常を回復する
〈聖属性強化〉レベル1:自身の聖属性が向上する
〈耐性強化〉レベル5:各属性への耐性が向上する
〈不屈の力〉レベル5:体力の最大値が向上する
私は攻撃スキルを一切取ってなくて、支援特化だ。もう少ししたら取ってもいいだろうけど、今はタルトがいるから問題ない。あとはレベルを上げて、基礎能力をあげるパッシブスキルを取っていきたいところだ。
「これだけ強くなれば、ロドニーを捕まえるのも容易そうですね」
ミモザが嬉しそうに言うけれど、私はそれはどうだろうか? と首を傾げる。確かにこの世界の住人がすごく強いというのはあまり想像できないけれど、ロドニーには配下が多い。数が多いだけでなんとかなることもあるのだ。
私が悩んでいると、リロイが「一度奥へ進んでみてもいいと思います」と告げる。
「ロドニーたちがどの地点にいるか確認することは必要だと思います。相手の数がおおければ、一度引き返して……それこそ、レベルを上げるのもいいでしょう」
「確かに敵がどうしてるか知ることは大事ですね」
もしかしたら、モンスターにやられて倒れている可能性だってワンチャンある。さすがにここにきてそんなことをされたら、だらしのない悪役だと呆れてしまうけれど……。
「進むスピードを上げれば戦闘訓練にもなるので、先へ進んでみましょうか」
レベルも上がってきたので、固定狩りじゃなくて移動狩りでもかなり経験値は美味しいだろう。ロドニーに追いつく間に、レベルも70くらいにはなっているはずだ。
と、先へ進むことに決めたけれど休憩も大事だ。先へ進むのは明日にして、今日はしっかり休むことに決めた。
……まあ、ダンジョン内は夜という明確な区切りがないから寝て起きたら出発という感じだ。
寝る前に〈純白のリング〉を使って体の汚れを落とし、少しだけ作戦会議……と思ったけれど、タルトとティティアが速攻で寝落ちしてしまった。
「わー、二人に無理させてたよね……ごめんんんn……」
一日中ゲームばかりでぶっ続けてモンスターと戦っているような私とは違うのだ……。反省して、明日からは一時間毎に休憩を取ろうと心に誓う。
しかしそんな私をフォローしてくれたのは、以外にもリロイだった。
「確かにティティア様は辛かったと思いますが、それ以上に嬉しかったと思いますよ。今は、一刻も早くロドニーを捕えなければいけませんから。シャロンがいなければ、ここまで来るのも容易ではなかったでしょうし、レベルだって上がっていなかったはずです」
「リロイ……」
「シャロンのレベル上げの速度は変態ですから……」
「リロイさん……?」
女の子に何を言うのかこの聖職者は。
「って、リロイも目がうつらうつらしてるじゃない……」
どうやらリロイも眠かったようだ。
「自分がテントに運んでおきます」
「ありがとうブリッツ」
リロイはブリッツに任せて、同じく眠そうにしていたミモザにもテントに行って休むように告げる。見張りは私一人いれば問題ないだろう。
「ふ~~」
全員が寝入ったのを確認して、私は大きく息を吐いた。そして数秒後……顔がにやけてしまう。いや、仕方ないよね。今日一日でレベルがかなり上がったんだから、にやけてしまうのは仕方ないよね? これなら〈アークビショップ〉になって、〈聖女〉になる日も近いかもしれないね。
「といっても、〈聖女〉クエストはどれくらいの量かわからないんだよね」
ティティアとリロイの呪いを解いてクエスト達成! となればいいのだけれど、そう簡単に進むとは思えない。だって、それだとクエストが簡単すぎるから……。
「…………今まで、〈聖女〉になったプレイヤーは一人もいなかった。もしかして、新パッチの女神フローディアが関わってくるとか……? いや、考えてもどうしようもないか……?」
いろいろ考えると、ロドニーのこともあって頭がこんがらがりそうだ。とりあえず今はロドニーをしばいて、ティティアに教皇として返り咲いてもらおう。
***
「〈
数匹の敵をまとめたブリッツが、防御スキルを発動する。それに合わせて、全員が一斉攻撃をし、私がブリッツに支援スキルをかけ直す。
昨日と変わって移動しながらの狩りだけれど、かなりスムーズに動けるようになってきた。何よりブリッツの釣りが上手くなった!!
……ロドニーの件が片付いたらぜひともパーティにほしい人材に育ってきてるけど、〈聖騎士〉はみんなティティア大好きだから無理だろう。
「シャロン。かなり進んだと思うんですけど、今はどの辺りにいるかわかりますか」
「ダンジョンの内部の……そうですね、ざっくり9割程度のところまで来ましたよ。ボスの〈ルルイエ〉がいるところまではもうすぐで――」
「静かに!」
目と鼻の先ですというところ、先行していたブリッツから静止の声がかかった。緊張を含んだその声から、何かあったのだということはすぐにわかる。
タルトとティティアは声を出さないように、自分の口元に手を当てている。
「……〈聖堂騎士〉が一二人と、ロドニーがいます」
「「「――!!」」」
そうかもしれないと予想はしていたけれど、いざブリッツの報告を聞くと息を呑んだ。どうやら通路の先……角を曲がったところにロドニーたちがいるようだ。
私とリロイは小声で全員にスキルをかけ直し、ロドニーたちの様子を伺うためそっと角から顔だけを出す。
……いた! あれがロドニーか!!
ロドニーは、騎士たちに守られるよう一番後ろにいた。
凝った装飾の法衣に、長杖。体はお腹が出ていてふくよかで、金色の長い髪を後ろに流しておでこが全開になっている。もっさり生えた口ひげが、いかにも悪者っぽい。
なんというか、いかにも悪いことを考えてますって顔だね。
ひとまずロドニーたちの戦力を把握したいので、戦闘の様子を見ることにした。基本的に騎士たちが戦い、たまにロドニーが支援スキルを使うというスタイルみたいだ。
「ロドニー様をお守りしろ!」
「ルルイエ様の元まであと少しだ!!」
騎士たちは剣を手に持ち、それでモンスターと戦っている。しかしレベルが低いのか、戦い慣れていないのか、連携が不十分だからなのか……動きが悪いし、攻撃を受ける場面も多い。
「ん~~……?」
私はなんだか嫌な予感がしたので、〈星の記憶の欠片〉を取り出した。これはレベル50以下の人のレベルと職業がわかる使い捨てのアイテムだ。
……さすがに、あの中にレベル50以下はいないと思いたい。
そう思いながら、私は〈星の記憶の欠片〉を全員に使う。まず〈聖堂騎士〉の一人目、見えない! よかった、彼はレベル51以上だ。敵だというのになぜかホッとしてしまうから困る。次の人も見えなかった。よしよし、全員この調子で高レベルであってくれ! そう思いながら見ていたら――アッッッ!
「うわ、見える人がいた……誰だよ最低」
ロドニー・ハーバス
レベル:46
〈ヒーラー〉
――お前かよ!!
盛大に心の中でツッコんでしまった。どうやらロドニーは自分よりレベルの高い騎士たちに守られながらここに来たみたいだ。
「む……〈エリアヒール〉!」
何人もの騎士たちが負傷したのを見て、ロドニーがやっとスキルを使ったが……誰も全快していない。どうやらロドニーのスキルレベルが足りないみたいだ。
「儂のマナが回復するまで攻撃を防げ!」
「はっ!」
「奥からさらにモンスターが来ます!!」
「絶対に儂のところまで来させるんじゃないぞ! 〈身体強化〉!」
ロドニーは叫ぶように、自分自身に〈身体強化〉をかけた。
「は? なんで自分に支援してるの? そこは騎士に支援するところでしょう?」
……クソみたいな支援しやがって!
ちょっとロドニーに物申したくなってしまい出ていこうとしたら、リロイとミモザに「何をしてるんですか!!」と押さえられてしまった。
「だってロドニー見ましたか!? 支援の風上にもおけないんですけど!?」
「いったいロドニーに何を期待してるんですか、シャロン。私たちはロドニーの戦力を確認して、捕獲するかどうするか決めるんですよ」
「ハッ! そうでしたね」
予想の百倍ロドニーが酷かったので、頭の中からすっぽり抜けてしまっていた。危ない。
「〈聖堂騎士〉たちの戦いを見る限り、そこまでレベルは高くなさそうです。一気に突撃して、捕獲しちゃうのがいいと思います」
私がそう告げると、リロイも「同意見です」と頷いた。
「……あ、進むみたいですよ」
話している間に、ロドニーご一行はモンスターの殲滅に成功したらしい。騎士たちは疲労困憊といった様子だけれど、ロドニーだけは誇らしげに歩いている。
「――行きましょう」
私がそう告げると、全員が頷き走り出した。
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