第76話 移動開始!
無事に〈ヒーラー〉になった私は、その後少しだけ雪原でタルトとレベル上げをした。〈ヒーラー〉のスキルを覚えないのはもったいないからね。
ということで、そこそこレベルも上がっていい感じだ。ちなみに、レベルはタルトとマルイルのところへ向かう際も少し上がっていたので、転職したときのレベルは44。
シャロン(シャーロット・ココリアラ)
レベル47
職業〈ヒーラー〉
スキル
〈祝福の光〉:綺麗な水と〈空のポーション瓶〉×1で〈聖水〉を作れる
〈ヒール〉レベル5:一人を回復する
〈ハイヒール〉レベル5:一人を大回復する
〈エリアヒール〉レベル5:自身の半径7メートルの対象を回復する
〈リジェネレーション〉レベル5:体力を10秒毎に体力を回復する
〈マナレーション〉レベル5:30秒毎にマナを回復する
〈身体強化〉レベル10:身体能力(攻撃力、防御力、素早さ)が向上する
〈攻撃力強化〉レベル3:攻撃力が向上する
〈女神の一撃〉:次に与える攻撃力が二倍になる
〈女神の守護〉レベル5:バリアを張る
〈キュア〉:状態異常を回復する
〈聖属性強化〉レベル1:自身の聖属性が向上する
今のところはこんなものだけど、すぐにレベルを上げてスキルをガンガン取得していく予定だ。この中で〈ヒーラー〉のスキルは〈攻撃力強化〉。これと、〈魔法力強化〉と〈防御力強化〉はかなり使い勝手がよく、すべて取得すると〈アークビショップ〉になったとき〈女神の使徒〉という最上位の強化スキルを取得することができる。
「レベルも上がったし……スノウティアに戻ってティーたちと合流しよう」
「はいですにゃ!」
ロドニーの部下を見つけたことも報告しなきゃいけないし、やることがいろいろある。だけど、負けるわけにはいかないのだ。
「ムサシ、あと少しだけどよろしくね」
『わう!』
私はムサシをなでなでもふもふして、雪原を駆け抜けた。
***
スノウティアに到着し、私たちは合流場所に決めておいた宿へ行く。ティティアたちはすでに来ていて、ほかにリロイ、ミモザがいる。
ブリッツは情報収集のため、少し外に出ているそうだ。
ティティアが、嬉しそうに私の手を取った。
「シャロン! 〈ヒーラー〉になれたのですね。おめでとうございます。わたしは〈ヒーラー〉の誕生を心から祝福します」
「ありがとうございます」
リロイとミモザも「おめでとうございます」とお祝いの言葉をくれた。なんだかちょっと照れるね。
それから、ミモザが大量のアイテムを取り出した。どうやらスノウティア中のお店やギルドでいろいろな素材を買い込んできたようだ。それだけではなく、食料などもしっかり確保済みだという。
「わたしはさっそく〈製薬〉をしますにゃ! いろいろと揃えるのは、早い方がいいですにゃ」
「うん、お願いタルト」
タルトは部屋の隅に道具を並べて〈製薬〉を始めた。慣れた手つきでどんどんポーションを作っていくので、私が師匠として教えることはもうあまりないかもしれない。
私がタルトを見守っていると、リロイがお茶を淹れてくれた。
「ありがとうございます」
「いえ。外は寒いですしね。こっちは何人かの〈聖騎士〉と連絡が取れましたよ。今、ブリッツが確認に行ってます」
「おお! よかったです!」
〈聖騎士〉は〈教皇〉のティティアに忠誠を誓っているので、絶対的な味方だと考えていい。ただ、〈聖堂騎士〉は信じられるものとそうでないものの区別が難しいので、現時点で接触は控えているようだ。
……味方だと思っていた人が敵かもしれない状況は辛いね。
ひとまず休憩にして、ブリッツが戻り次第情報交換を行うことにした。
ブリッツが戻ったのは、深夜になってからだった。
「すみません、遅くなりました」
「おかえりなさい、ブリッツ」
ティティアが迎え入れるとブリッツは敬礼をし、私たちを見て「無事に〈ヒーラー〉になれたのですね」と喜んでくれた。
「はい。なんとか〈ヒーラー〉になれました」
「お師匠さまはすごいですにゃ」
タルトは私を褒めながら、全員分の熱いお茶を淹れてくれる。時間が時間だったので、全員うとうとしてしまっていたのだ。熱いお茶は目が覚めるね……!
「まずは私から離しますね」
私はタルトと一緒に〈眠りの火山〉の麓で見たことを話した。ロドニーの部下の男が動いていることは、見逃すわけにはいかない。
もしかしたら、同じ司教なのでリロイは面識があるかもしれないけど……どうだろう。見ると、何やら考えこんでいるようだ。
「……その男は、おそらくオーウェン・ハーバス。ロドニーの息子だと思います」
「息子!?」
予想以上に大物で、私は声をあげてしまった。
でも確かに、あのような重要任務は腹心の部下か自分に近い人間にしか頼めないだろう。そう考えると、あの男が息子だということは納得できる。
……というか、司教って結婚できるんだね。
私がなるほどと頷いていると、ブリッツが手を上げた。
「自分が得てきた情報によると、〈眠りの火山〉の奥に女神フローディア様の村が発見されたとか」
「「「――!!」」」
ブリッツはロドニーの手から逃げのびた〈聖騎士〉と連絡をとり、いろいろ聞いて来たようだ。その相手は大聖堂内に身を隠し、今も情報収集を行っているらしい。
……ティーには頼もしい騎士がいるね。
そして女神フローディアの村が、火山の奥にある……か。間違いなく、今回の新パッチだろう。その村の名前は、〈最果ての村エデン〉。
――絶対に行ってみたい。
でも、間違いなく今の私のレベルじゃいけない。そもそも一人で行くこともできない。私は支援職だから……!
……これはやはり早急にパーティメンバーを鍛える必要があるね。
ブリッツのおかげで情報が確かなものになってきたので、私のテンションは爆上がりだ。
「つまり、ロドニーは〈常世の修道院〉に。息子のオーウェンは〈最果ての村エデン〉に向かってるということですね」
「そのようですね」
私の言葉にリロイが頷いた。
「ただ、今の私たちの戦力で火山を越えることはできないと思いますが――」
そう言いながら、リロイが私を見た。
「? なんです?」
「いえ、シャロンなら登ってしまうのではと思って」
「いやいや、普通に無理ですけど?」
タルトもティティアもミモザもブリッツも、私を見ていた。みんな私に期待しすぎではなかろうか。こんなにか弱い支援だというのに。
「あなたも人間だったんですね」
「なんですかその言い方は」
リロイさん、ちょっと裏に来ていただけませんか? と言いたいのを我慢しつつ、私たちはケントたちに伝言を残し、一足先に〈常世の修道院〉へ向かうことにした。
***
「はああぁ、すごいです……」
「ティー、すぐ街の外に行きますよ」
「は、はい!」
私たちは翌日のお昼過ぎまで休み、スノウティアから〈転移ゲート〉を使ってツィレへやってきた。このまま馬を借りてずっと南下していくと、修道院に続く道のある〈暗い洞窟〉にいくことができる。別の道で焼野原も行くことができるけれど、名前の通り焼けていて難易度も熱も高いのでそっちの道は避ける。
途中〈牧場の村〉でティティアたちにゲートの登録をして、洞窟の手前まで進んだところで野宿することにした。
野宿と言っても、私たちには〈鞄〉と〈簡易倉庫〉があるので野宿というより快適なキャンプと言った方がいいかもしれない。
たくさんのお肉に魚や野菜。調味料だって各自で好みのものを取りそろえている。しかもパンは焼き立てのまま保管されているし、なんなら出来立てのお惣菜だって入っている。
「……みんな思ったよりも〈鞄〉の使い方が上手いね」
「ティティア様に不便な思いをさせるわけにはいきませんから」
「ソウデスカ」
自信満々に告げたリロイの鞄の中には、ティティアの好物はもちろんのこと、着替えや装飾品に始まり、快適に休めるよう高級羽毛布団まで入っていた。
……ここまでするとは、さすがリロイだ。
というわけで、私たちは野宿ながらめちゃくちゃ快適な夜を過ごした。
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