四.占いあれこれ
応接室に日和を通して待っていると、ややあって紡が現れた。
「おっ」
「お邪魔してます」
「あ、あぁ、いらっしゃいませ」
紡が椅子に座りながら日和にも座るよう促していると、つばきがお茶を運んで来た。
「おっ」
真紅のチャイナメイドで髪型もダブルシニヨンのつばきは、見覚えある来客を前に驚いたような声を出す。
「さて、中田日和さんでしたか。本日はどのようなご用件でしょう?」
「どうして最初から私の分が無いんですか! 意地悪!」
「だって桃子さんお客様じゃないでしょ」
「お店のお客じゃないけど紡邸としての客人ではありますが!?」
「うるさいな! あ、すいません。あのチンドン屋共は無視していただいて、で、なんでしたっけ?」
「はい! 今日は客として占っていただきに来ました!」
ピクッと紡のカップを持つ手が止まる。そんな些細なことに気付くはずも無く、日和は嬉しそうに続ける。
「この前の占い! あれバッチリ当たったんですよ! 私あの何日か後に、ちょっと買い物で予算オーバーして! あんな急場の占いでバッチリ当たるんですよ!? これはもう、一度はしっかり占ってもらわないと!」
しかし紡は冷静に茶を啜る。
「あんなのはただのコールドリーディングです。あなたはアクセサリーをたくさん着けていらしたし、占い関連のものを見聞きすればすぐ飛び付くとか。そして何より、冬の昼間からビアガーデンにいるような人です、元より財布の紐が固い方ではないのでしょう。その上で年の瀬迫るこの時期は色々物価が高くなる。大体誰でも『思った以上にお金掛かった』となるのです」
「えー?」
一連のやり取りを見て桃子は首を傾げる。
「そのゴン
「それだけ相手の気持ちを削ぎたい事情があるんでしょうね」
「はぁ」
しかし、あまり成果は上がっていないようだ。相変わらず日和は
「それでもいいです。占って下さいよ! まぁ、こう言ったらナンですけど、占いって全部が全部信じるものじゃなくて、血液型とか星座とかライトに楽しむものもあるでしょう?」
「それはそうです」
紡はようやく真っ直ぐ日和を見据える。
「しかしあなたにはお勧め出来ません」
日和は腕を組んで背もたれに背中を付ける。
「どうしてですか? もしかしてお高いとか?」
「いえ、占いでそんなにお金は取りませんが」
「占い以外もやってらっしゃるんですね」
占いというかオカルト全般好きなのか、日和の背中がまた少し背もたれから浮く。
「えぇまぁ。でもそれはまた別の話」
「それもそうですね。あ、じゃあアレですか? 割とマイナスなこともはっきり言うスタイルってことですか? それなら大丈夫です。もちろん正しい指摘はちゃんと受け取りますし、都合の悪いことはあまり気にしないようにしてます。だから占いの結果に引っ張られて悪い方に悪い方に……、っていうタイプじゃないです!」
「はぁ」
「今まで山程占いを受けて来ましたし、毎日いろんな占い見てますけどご覧の通り私は元気です!」
「左様で」
紡は諦めたように椅子に座り直すと、溜め息混じりに切り出す。
「では中田さん。『
「選べるんですか?」
「
桃子がWi◯ipediaの『アホ』のページに写真を記載出来そうな顔をしていると、つばきが言葉に合わせて左の人差し指、中指、薬指を順番に立てる。
「『命』、『卜』、『相』です。平たく言えば占いのジャンルですね。『命』は誕生日とかそういう不変で根源的な情報を元に、人生全体を占うものです。運命や宿命、人生のテーマ、『リーダーシップがある』とか『人に奉仕する仕事が向いている』とか、『幼少期は苦労する巡りをしている』とか『四十代の頃に大きな転機を迎えるでしょう』とか」
「あぁあぁあぁ、ありますねそういうの。芸能人占う番組でそういうのよく聞きました」
次につばきは、言葉に合わせて両掌を擦り合わせる。ちょうど街角のおじさんが竹の棒をガチャガチャやっているような。
「『卜』はタロットとか
「だから転職しませんって」
次は言葉に合わせてあっかんべー。
「そして『相』。姓名判断や人相見、風水みたいな形あるものでその人の今や将来に及ぼす影響、現状の吉凶を占います。『手にますかけ線があるので成功者の相』とか『水回りが片付いていないので悪運が溜まっている』とかですね」
「なんか全然違ったり微妙に被ったりしてるんですね」
教えてつばきちゃんのコーナーが終わった頃、テーブルの方でも話が決まったようだ。
「じゃあ仕事の大詰めのプロジェクトについてお願いします」
「かしこまりました」
紡は
「つばきちゃん、
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