勇者御一行様!知ってるか世界はモブで回ってんだぞ!
@fugiinosisi
第1話
「うわ〜なんだこいつ! なんでこのレベルのモンスターがこんなとこにいんだよ!!」
無精髭を生やし、癖っ毛な髪を汗で湿らせる男はドラゴン型のモンスターに追いかけられている。
男の名はダン。バッカス一団の団長である。
「ついてなあなー!!」
「ははは、そういうなって。これも勇者様のためだろ」
ダンが全身の鎧を軋ませながら逃走を続ける。その横に同じ鎧を着た男が並走する。
彼はジョセフ。バッカス一団唯一の団員である。
「ジョセフ! これ話が違うかないか?」
「なんの話だ? 俺はお前が何を言ってるかわからんな親友」
「てめー! このこと知ってやがったな!」
「だから〜なんのことだ〜?」
ダンが不満を口にするのも当然だ。ここは勇者が最初に旅立つ町、はじまりの町。
そんなところに魔王城付近の出没するモンスターが現れている。ダンの反応は控えめに言って、反応が薄すぎる。大抵の冒険者なら会った瞬間、絶命ものだ。
さらにここははじまりの町。このモンスターを倒せるほどの戦力は皆無である。
「あーもういい! さっさと片付けるぞ、相棒!」
「そうこなくちゃ、相棒!」
2人の並走していた足が急ブレーキをかけてドラゴンへ立ち向かう。その一連の行動は息ピタリに腰にかけたブレードを抜く。
「ははあ! 楽しくなってきたなダン!」
「どこがだジョセフ! まあ、いいとりあえず倒すぞ!」
「そうだな」
「「勇者様のために!」」
2人はドラゴンへ走り出す。自身の身を守るために、否、勇者様たちの身を守るために。
勇者御一行様!知ってるか世界はモブで回ってんだぞ! @fugiinosisi
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