かごめかごめ
『かごめかごめ』
「不思議な話ってのは世の中にあるよな」
「ありますねぇ」
「自分の知ってる話を順番にして、挙手で負けた奴が勝った人の分を払うってのはどうだ」
「いいですねー」
「その勝負、受けて立った。ね、彩月ちゃん」
「エーッ」
私が高校生ながら素人俳優としてたまに参加する劇団の練習後の飲み会で、劇団の看板俳優で三十代半ばの河口竜也先生と、同じくアマ俳優の直ちゃん典ちゃんの永遠の二十九才コンビに、過去二度ほど変わった話をしたら、こんなことになってしまった。ホントは今日参加した仲野ちゃん、いや仲野さんかな、同じようにアマで、かつては直ちゃん典ちゃん仲野ちゃんでアローントリオを結成していたが、いち早く抜け出した仲野さんも飲み会に行くはずだったが、家庭優先で参加しなかった。
「彩月には話すネタがもうないだろう」
「なるほど、だからやろうというワケだ」
「さすが竜也先生。よっ、ヒキョーモノ!」
「いやー、そんなに誉められると照れるなー」
いつも、おごってもらっているので構わないけど、なんなんだか…
「じゃあ、最後は彩月な」
「さあ、どうする彩月ちゃん」
「参ったと言え」
「心配するな。女子高生におごらせる積もりはないから」
「ホントに参ったな。ンー、じゃあ、あの話を」
「エッ、まだあるのか」
「マジか」
「マジすか」
「『かごめかごめ』は知ってますよね。あの中に、モリトモ問題の主要人物や当局が総出演してるって話は、ご存じですか」
「いやぁ、知らない」
「ホント?」
「あったかなー、そんな歌詞」
「人なんか一人も出てこないし」
「出てくるのは鶴と亀だけだよ」
「ホントか、彩月」
「じゃあ確認のために、みんなで『かごめかごめ』を歌いましょう。さん、ハイッ」
「かーごーめー、かーごーめー
かーごのなーかの、とーりーはー
いーつーいーつー、出ー会ーうー
夜ー明ーけーのー、ばーんにー
つーると、かーめが、すーべったー
うしろの正面、だーあれー」
「どこがだ」
「私、分かった。カゴイケさんでしょ?」
「そうだ、夫妻に息子さん、三人とも出てくる。そうだよね」
「はい。でもまだあります」
「私も分かっちゃった。コウノイケ議員」
「正解です。コウノイケのコウはコウノトリの鴻ですから」
「後は竜也先生だ」
「やーい、残され者。日頃の恨みを今こそ晴らしてくれるわ。ワッハッハッ」
「うるさい。残り物には福という言葉を知らんのか」
「はい、時間切れ、ブーッ」
「彩月ちゃん、答えを」
「おい、ちょっと待てッ。分かった!仲野ちゃんだ、仲野ちゃんがいる」
「エッ、どこに」
「頭から歌ってみろ」
「かーごーめかーごーめ、かーごのなーかの、…アッ!」
「でも、我らが仲野ちゃんを犯罪者集団と一緒にするな!」
犯罪者って…
「いや、でもあんな裏切り者は許せない」
「そうだっ!今日も夫が、とか言って」
「こないだも、彩月ちゃんがしてくれた即興ドラマの話をしたら、「旦那が病気になったら、私は、涙ボロッ、の後、ニヤッ、だわ」とか言ってたけど、あんなの、逆ノロケだ」
「よしっ、やっぱり仲野ちゃんも一味だっ」
モリトモと関係ないし…
「では、答えに戻ります。アキエ夫人と秘書がいます」
「エッ、どこに?」
「夜明けの晩に、のトコです」
「ンンッ、どうして?」
「夜、アキェの番に、です」
「オオッ。でも秘書は?」
「番というのは留守番とか、お庭番という意味で使います。つまり見張り、お守り役、御付きの人、という意味です」
「なるほどー」
「次の鶴と亀ですが、鶴は、あの土地を元々、伊丹空港の所有だったのをモリトモ学園に払い下げたのが国土交通省大阪航空局です」
「ウーン」
「亀にはゼニガメというのがいますから、財務省の近畿財務局、またはサガワ理財局長です」
「あー、言われりゃそうだ」
「亀みたいに甲羅の中に引っ込んでるし」
「両方とも正にスベった訳だ」
「そして最後に隠れてるのが」
「エッ、まだいるの?」
「うしろの正面だーァベー」
また竜也先生に、おごって貰った(笑)。
*戯れ句を一つ
「お・も・て・な・し 五輪桜も 裏ばかり」
かつて、姪が描いたこのかごめかごめの輪の中に、抗議の声を挙げながら一人孤独に膝を抱え、顔を手に埋め哭いている人がいた。そして今は、その人の妻が、拳を握り締めて、立っている。
2021年12月15日、国は逃げた。
ロス・マクドナルドは何故、ロス・マクドナルドなのか フラートフ @franc01s
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