第5話 さえずりはひかるあめの中で、

 剣を地面に突き刺して、親父に教え込まれた蹴りをする。なかなか壊れないな、当たり前か、今までどうやっても壊れなかったんだ。後ろからみんなの声がする。ああ生きてた。よかった。みんなで協力して剣を壊した瞬間、親父が笑った気がした。まぶしい光に包まれて、闇は世界に解き放たれた。



 雨の日でも鳥は鳴く。春になるとみんな動き出す。巣の周りは今日も平和だと知らせているらしい。


 私の家は代々この地を守っている。ラッパを鳴らす。異常なし。いつも通りの村の跡地、雑草だらけになって、虫がいて鳥がいてゆったりとした時間が流れている。


 勇者の村と魔王のお話を語り継いでいる。いけにえとなった村人は世界の闇を背負うことになる。昔はたくさん魔物がいて、それを倒してくれる勇者が必ずいる。だから世界は平和になる。それは平和といえるのだろうか。村が滅びてしまえば、呪いの剣もなくなれば、本当の平和になるはずだった。


 落ち着いた世界にだんだんと不安の種が広がり、やっぱり1人では抱えきれなかった。世界は戦い続ける。魔物なんていないのに、安心を増やしたいから争う。


 小鳥を見ながら、繰り返される命の営みを思う。当たり前で理不尽な世界。小鳥の親が餌を持ってくるけれど、巣のそばには蛇が迫っていて。


 めでたしめでたし。お話が終わる?お話は続かなくても私たちは続く。種をまくから、成長するから、鳥がいるから、話をするから。


 私たちはこの物語を続けていく。

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叫んで五月雨、金の雨。 新吉 @bottiti

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