第4話 叫んで雨、五月雨の金。

 水溜まりができている。ハヤテの魔法だ、金の毒の雨を薄めてくれている。ナナちゃんの攻撃でしばらく魔王は動けなかったはずなのに


 ぱしゃん


 水溜まりにに金色が混じる、そこに頭からぶざまに落ちた。右半身がすれる。痛い。だから、俺は生きている。


「パーティは全滅だな、これで物語は終わりだ。フェニックスももう力を失って横たわっている。聞こえているかトナ、小娘。貴様は勇者ではない、俺を、倒せな、くては」


 横になったまま動けない。魔王の足を見ながら話を聞くしかない。


「俺を倒す勇者はどこにいる?こ、こは、勇者の村、村長は俺、この村、こわ、こわ、こわした、俺、勇者は生まれ、うま、生まれない?そん、そん村長、も生まれ、ない、お、俺は?これ、」


 あきらかに様子がおかしくなる。ぱしゃぱしゃと足を鳴らすから顔に水がかかる。こんな物語は終わらせなきゃいけない。力を振り絞って叫ぶ。


「勇者も魔王も生まれなくていい!闇は自分で抱えていく!いけにえもいらない!!」


 そして俺は、魔王を抱きしめた。いつか親父にそうしてもらったように。今までの勇者がしてきたことを俺はしない。魔王を倒さない。殺してしまうから、伝説の剣が勇者を殺すんだ。剣だけがあの台座にもどってくる。あの場所がいけないんだ。あの空間がいけない。


親父と村長の話が聞こえてしまった。この世界の平和のための秘密。


 剣を握りしめて、怯える魔王と親父に言った。


「こんな剣、いらないんだ」

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