第6話 いつか誰かの後悔の中で
しばらくの暗闇を抜け、目を開けると、俺の視界には見覚えのない真っ白な天井が写っていた。ピッピッという電子音と「意識が戻りました」という女性の声が耳に入り、ここが病院であることがなんとなくわかった。
きっと俺はあのループから抜け出すことができたんだ。だから、バイクに轢かれた直後の世界が進行しているのであろう。そうなると、彼女は無事なのであろうか。彼女は無事にループを抜け出すことができたのか、それだけが気掛かりであった。
そんなことを考えていると、誰かが走ってくる足音が聞こえ、俺は音のなる方へ必死に首を動かす。するとそこには、涙目でこちらを見つめるキョウコさんの姿があった。
「ユウマくん…! 良かった、目が覚めて…!」
そう言って、彼女は俺の手を握ってくれた。
あぁ、良かった。
俺は彼女を助けられたんだ。
そう安心した瞬間に、身体中を激痛が襲った。猛スピードのバイクに跳ねられたのだからこの痛みも当然か。
再び意識が朦朧とする中で、俺はこのまま死んでしまうのだと確信した。
死を間近にして、俺は彼女と奮闘した数日間のことを思い出していた。
どんなことにも必死になれなかった俺は、彼女のためなら命もかけられた。
俺はきっと、彼女を好きになっていたんだ。
…あぁ、死にたくないなぁ。
真っ白だった俺の視界は真っ暗になった。
いつか誰かの後悔の中で Fa1(ふぁいち) @Fa1
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