第18話 即位、エピローグ

王になることを決めた俺は早速アリエスのところに向かう。

王宮は潰れてしまっているので、王族は現在シー・イストリアのキャッスルホテルで暮らしているそうだ。

アリエスの住む6階のVIP部屋へ。


「そういうわけで俺と結婚してほしい」

「はああああ!?」


話を持ち出すとアリエスは声をひっくり返らせた。


「どうして驚いている? 以前『王様になってよ』と先に言ってきたのはアリエスの方ではないか」

「そ、そ、そうだけど! なんでそうなるのよおおお!!」


ベッドのそば置いてある枕を投げつけてきた。


「いきなりでビックリするわ! もっとシチュエーションを考えてよね。キレイな夜景を一緒にみながら指輪を渡すとかさー」

「すまない勉強不足だった。出直してくる」


そう言ってドアノブに手をかける。

  

「待ちなさい」


アリエスが俺の袖を引っ張る。


「確認させて。国を大きくするために王様になりたいってこといいんだよね?」


アリエスはいつもより低い声でそう言う。


「私を愛しているから結婚しようってわけではないんだよね?」


アリエスにとってそこが最も大事なポイントらしい。

以前の告白のときは、国を大きくするためならどんな手を使っても構わないと言っていた。彼女はそういう思想の持ち主なのだと認識していた。だからこのプロポーズも受けてくれると踏んで話を持ち出したのだが。

なんだかんだ言ってアリエスもちゃんとした乙女だった。


「悪いな。愛というやつが何なのか、今の俺にはわからない」

「いいのよ。その感じだとまだまだチャンスありそうだから!」


またしても振るような形で答えてしまったが、アリエスは悲しい素振り一つみせない。


「無理言ってしまったな。それじゃあ帰るわ」

「いいわよ? 結婚してあげる」

「え? だって俺まだアリエスのことが……」

「この国のために頑張るんでしょ。アンタの決意はその程度のものなの?」

「いや、俺には愛なんて」

「だからそれは保留にしてあげるって言ってんのよ!」

「いいのか……」

「そのかわりいつかはケジメをつけてよね! 私……いいえ私たちは待ってるから!」

「ありがとう」

「ほらシャキッとしなさいな、次期国王様。そうと決まれば、これから父上と母上に報告にいくわよ!」


王様と女王様に事の経緯を説明し、結婚の同意を求めた。

愛の無い結婚などけしからん! と大反対されるを覚悟していたが、意外にも軽い感じで大賛成してくれた。

そうしてあれよあれよと縁談が進んだ。

アリエスの意向で結婚式は行わなかった。籍だけは入れることになったので、形式上俺が次の王様になった。



そして一月もしないうちに即位式を迎える。

キャッスルホテル最上階のテラスからシー・イストリアのビーチを見渡す。ビーチにはたくさんの民衆がいて、俺の即位を祝う歓声で溢れている。

メイアもシルシィもマギナも、ギルマスも受付嬢もみんな拍手で祝ってくれている。

まさかこの地で王様になれるとは。始まりはこの海からだったことを思い起こすと感慨深くなる。


「新たにイストリア小国の王の座につくことになった、シルディ=イストリアだ。この国の民のため……いや、世界の平和のために全てを尽くさせてもらう! これからも俺たちに協力してほしい! 以上だ!」


鳴り止まぬ歓声を背にゆっくりと城の中に戻った。





そして5年が経過した。

魔国領と国を上げての戦の末、ついに悲願の魔王討伐を達成した。世界に平和が訪れる。

そして俺もケジメをつけるときがきた。


「シルシィ! メイア! マギナ! アリエス! 俺はみんなが大好きだ。結婚してくれ!」


王宮の最上階のテラスに4人を呼び出し、夜景をバックにサプライズで指輪を渡した。


「わたくしでいいのですか!? 馬、ですわよ!」

「種族なんてかんけいないさ、シルシィ! 大好きだ!」

「はい、喜んで」

「ありがとうメイア。聖女お疲れ様だった! 大好きだ!」

「私、一度はあなたを追放した身なのですよ? それでもいいんですか?」

「それはもう昔のことだ。これからは一緒だ。大好きだ!」

「ずっと待ってたんだから……まったくアンタって人は」

「遅くなって悪かったな。大好きだ!」


俺たちは時間を忘れて抱きしめあった。

その後正式に結婚式がとり行われた。 



さらに5年が経過した。

4人に子供ができた。


「はい、プラチナシップちゃんが鬼〜」

「鬼じゃありません、メディ。馬娘なのですわー」


「それではボクは先に隠れます。行きましょうシルエス」

「メイジ君が手触ってきたー、エッチー!」


中庭で遊び回る子供たち。俺はその様子を執務室の窓から鏡越しで眺める。


「あ、パパがこっち見てる! 遊ぼ、一緒に遊ぼー!」


俺に気づいたのか、メディを始め4人が手招きする。


「パパが鬼をやってやるぞー。今からそっち行くからちゃんと隠れるんだぞ!」


そう言うと俺はペンを置き、魔導書を閉じるのであった。

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耐久適性Sランクの元盾職、無傷故サボりの烙印を押されパーティを追放されるが、辺境地で魔法職に転職したら魔法適性もSランクだったので二度目の人生を歩もうと思う @SX48430

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