第6話 噂の真相

翌週、登校するやいなや、私と紗英はさっそく影薄丸のところへ行った。


『アンタ…いつから廃病院がヤクザの取引現場って気づいたの?』


「いや、そもそもあの廃病院なんだけど、幽霊の噂はあるのに、それを見た人はいなかったでしょ?それって、誰かが意図的に噂を流したって事なんだよ。」


確かに、昔から近寄るなとは言われていて、単に危ないからという意味合いもあるだろうけど、幽霊を直接見た人の話は、親からも聞いたことがなかった。


「廃病院なんてのは、ヤクザの取引現場に持ってこいだからね。幽霊が出るから近寄るな…なんて噂を流したのは、きっとヤクザたちだろうね。」


『なるほどね…面白半分で動画を撮影しに行った高校生たちも、きっとヤクザに出会ってキツく脅されたのね。それで何も言えなかった、と。』


「なら板垣くん、行方不明になった高校生は?」


「正式に行方不明になったり、死亡していたら、もっと世間でニュースになってるよ。しかも姿を見ていないって話も、家族じゃなく周りの人たちの話だよね。実際はトラウマにでもなって家に引きこもってるんだろなって思ったよ。」


『警察を呼んだのは…アンタね。』


「そう。万一の事を考えて、事前に警察へ連絡しておいた。今晩、ヤクザの取引が廃病院であるかも知れないって。」


「それで、板垣くん集合が遅かったんですね…。」


「うん、警察に動いて貰える様に理由考えるのに苦労したよ。」


正直、影薄丸がここまで考えて先回りしてくれていなかったら、今頃私たちもどうなっていたかわからない。

お礼を言わなきゃならないとは、私も感じていたのだが…。


「でもね、今回俺が1番怖かったのは。」


『???』


「吉岡さんの行動力だよ。友達を大事に思ったり、自分たちで解決しようってのは感心したけど、ちょっと無謀過ぎだね。」


前言撤回、やっぱりコイツはムカつくわ!


『アンタこそ!そこまで最初からわかってたなら、もうちょっとみんなに説明しときなさいよ!』


「いや、基本的に他人と話すのめんどくさい。」


『こら!まだ1学期でしょ!これからクラスで団結していかなきゃ、体育祭も合唱コンクールも乗り越えれないわよ!』


「まあまあ美咲、板垣くんもきっと本心じゃないよ。」


…こうして、廃病院の噂は終わりを告げた。

だけどこの事件は、後に私たち3人が解決するいくつもの事件の、ほんの始まりに過ぎなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真の闇より無闇が怖い!〜廃病院の噂〜 かぬち まさき @jhons

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る