第5話 幽霊の正体

私は、一体何が起こっているのか理解出来なかった。紗英は恐怖で腰が抜け、床に座り込んでしまっている。


間も無く、エントランスの方から黒いスーツを来た体格のいい中年男性数人が近寄ってくる。


「あぁ?ガキがまた忍び込みやがったか?最近のガキは調子に乗りすぎて可愛げがないわ!」


「てめえら!何しにここに来やがった⁉︎」


私は、やっと状況が理解できた。

この人たちは、いわゆるヤクザだ。

この場所は、ヤクザが取引の現場として使っていたのだ。


私は、紗英を引きずって奥へ逃げようとした。

しかし、男たちはみるみるうちに目の前まで迫ってくる。


私は、紗英の手をギュッと握りしめた。


次の瞬間、


「お前ら!そこで何をやっている⁉︎」


今度は何が起きたかハッキリ分かった。

警察が大勢入って来たのである。

外はパトカーの赤いランプによって、一面明るく照らされていた。


「やべえ!サツだ!逃げろ!」


私たちに向かっていた数人のヤクザは、蜘蛛の子を散らした様に逃げていき、警官がそれを追いかけて行く。


「美咲ぃ…美咲ぃ…。」


隣で紗英がわんわん泣いている。

私も肩の力がグッと抜け、紗英に寄りかかって座り込んでいた。


「ギリギリ間に合ったね。」


影薄丸はと言うと、あっけらかんな顔をして、そう答えた。


『一体、どう言う事なの⁉︎』


「うーん…説明はまた来週、学校で…かな。ってか、今晩はお巡りさんが許してくれなさそう。」


と言い終えるや、私たちは警察に保護された。


家に帰ると、案の定、家族からこっぴどく叱られた。

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