第4話 遭遇

入り口の自動扉は、バリバリに割れていて容易に入る事が出来た。

エントランスに入ると、広い受付とナースセンターがあるのだが…壁面はところどころ剥がれ落ち、ラッカースプレーで書かれた落書きも見える。


『酷い状態ね…私たち以外にも、これまでに入った人たちがいたのかしら。』


「そりゃ、肝試しにはもってこいの場所でしょ。」


相変わらずドライに返事する影薄丸のおかげで、私は恐怖より怒りの方が強かった。

でも、紗英はそうじゃないらしい。


「やっぱり、こう言う場所を冷やかしに来るのは良くないよぉ…。早く戻ろ?」


『紗英、私たちは冷やかしに来た訳じゃないよ。何もないって証明できれば、みんな安心するんだから。』


「ま、そりゃそうなんだけどね。確かに警察や学校の対応も良くないよ。」


影薄丸はほんとは怖いから、あえてこう言う雰囲気を作り出そうとしているのか?

ともかく私たちは、奥へ奥へ進んで行く。


散らばった書類、シーツのようなボロ切れ、医療器具の一部…そこかしこにゴミが散乱していて、足を滑らせない様に慎重に進んで行く。

建物の中は、ひんやりしていて、異様なくらいカビ臭い。


私たちは2階へ上がる階段を見つけたが、階段は途中で腐り落ちており、2階以上へ行く事は出来なかった。


1階をぐるっと1周したが、やはり幽霊の気配は一切しない。


『ほらね!紗英。やっぱり幽霊なんていなかったでしょ?』


「確かに…それっぽい影や音も一切しなかったね。」


『ね!きっと高校生たちは怖くて動画が撮れなかったから、恥ずかしくて言えなかったのよ。』


「うーん…それじゃあいなくなった高校生は?」


『そうね…。』


すると突然、


ガシャン‼︎‼︎


とエントランスの方で大きな音がした。


「きゃぁぁ‼︎」


紗英が反射的に悲鳴を上げた。


私と影薄丸が驚く間も無く、私たち3人とは違う声が廃病院に響き渡る。


「おらぁ!そこに誰がおるんかぁ!出てこいやぁ!」


声は低く、明らかに野太い声であった。

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