第3話 決行当日

その週の土曜、私たちは泊まりの勉強会をすると家族に言って、夜21時に校門前に集まった。


「美咲…やっぱり辞めておかない?」


紗英は心底幽霊が怖いようだ。

鞄には、いつもなら付けていない、近所の神社のお守りが付いている。


『大丈夫だよ、紗英。いざとなったら私が必ず守るから。』


そうこう話しているうちに、影薄丸がやって来る。


『遅かったじゃない!一体何やってたの?』


「いや、ちょっと野暮用だよ。」


掴みどころの無い影薄丸に、私はイライラしながら、廃病院へ向かう。


廃病院は学校から自転車で40分程だ。

町外れの田んぼの中に、不気味な様にそびえ立っている。


道中、珍しく私は影薄丸から話かけられる。


「ねえさ、いなくなった高校生って、本当に消えちゃったの?」


『さあ?でも話では、廃病院に行った日以来、誰も姿を見ていないそうよ。』


「それは、誰が言っていたの?」


『誰って…高校生たちみんなでしょ。』


「ふーん…でも廃病院から帰ってきて、普通に登校して来ている生徒もいるんだね。」


私は、影薄丸が何を言いたいのかわからなかった。返答に困っていると、紗英が空気を読んで会話を続けてくれた。


「板垣くん、それってやっぱり、他の高校生は幽霊について口外しないから無事って事かな?いなくなった高校生は何か幽霊について話してしまったから、呪いで殺された…とか。」


「案外、似たようなものなのかもね。」


噂の詳細について確認しているうちに、私たちは廃病院へ着いた。

6月ともあって、周りの田んぼからは蛙や虫の鳴き声がうるさい程聞こえる。

だが、それ以外の音は全くしない。


私たちは、廃病院の入り口に自転車を停めると、それぞれ懐中電灯を取り出して明かりをつけた。


『2人とも、準備はいいわね。もし何かあったら、すかさず防犯ブザーを鳴らす事。』


「わかったよ、美咲。」


いよいよ、廃病院の中へ入る。

時刻は、22時をとうに過ぎていた。

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