第2話 仲間集め
『と、言う訳でぇ…私たちと一緒に廃病院ツアーに出かけない?』
「嫌に決まってるだろ!俺たち部活があるし、何よりほんとに呪われたらどうすんだよ!吉岡と奥間で勝手に行ってこいよ!」
『あっ、ちょっと待って…って、行っちゃった。』
仲間集めは一向に進まない。
女子は絶対に断られるだろうと思って、私はクラスの男子に片っ端から声をかけたのだけど、結果は散々だ。
「ねぇ美咲…やっぱり辞めようよ。きっと誰も集まらないし…。」
紗英は不安そうな顔で私を見ている。
『紗英、誤解しないでね。私はその不安から紗英を守りたいから、幽霊の正体を暴きに行くの。』
紗英は少し恥ずかしそうな顔をしてうつむく。
『あと残ってる男子は…影薄丸か。」
影薄丸の本名は、板垣冬馬。
顔も悪くないし、成績も優秀な方なのだが、異様なくらい人付き合いをしない。
話かければ答えてはくれるが、向こうからは一切話題を振ってこない。
無論、部活動にも参加していなく、常に1人でいることから、みんなからは影薄丸と呼ばれている。
『影薄丸、今度の土曜、私たち例の幽霊の正体を暴きに廃病院に行くんだけど、一緒に来ない?』
「美咲…私たちって、やっぱり私も一緒に行くんだね…。」
悲しげな表情をしている紗英を横目に、私は影薄丸に問いただす。
『アンタは部活もやってないし、時間あるでしょ?たまには付き合いなさいよ。』
私はいつもクラスの行事に積極的に参加しない影薄丸に、心のどこかでイライラしていたのかも知れない。少し強めに勧誘していると、自分でも自覚していた。
「…例の廃病院の噂ね。吉岡さん、気にしない方がいいよ。実際ニュースにもなってないんだし。」
影薄丸の言葉に、どこか上から目線を感じてしまって、私は更に強く誘う。
『いいじゃないの!それに、気にしないって方が無理よ。警察も学校も何もしないから、自分たちで不安を払おうってのの、何が悪いの⁉︎』
「板垣くん…ごめんね、無理を言って。でも、呪いなんてないって無いって証明しなきゃ、噂はどんどん広まって、次第に小学生たちも怖がってしまうと思うの。」
私の強引な誘いを、紗英が優しくフォローする。紗英の気遣いに、私はちょっと大人げなかったなと反省する。
「別に、その考えは立派だと思うよ。立派なんだけどね…。」
『何⁉︎まだ何か言いたい事がある訳?』
「いや、何でもない。土曜だっけ。まあいいよ。また集合時間だけ教えて。」
影薄丸はあっさりそう答えて、トイレへ行ってしまった。
「板垣くん、来てくれて良かったね。」
『ふん…どうせアイツがいても大して役に立たないけど、いないよりかマシでしょ。』
こうして、廃病院に向かうメンバーが決まった。
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