真の闇より無闇が怖い!〜廃病院の噂〜

かぬち まさき

第1話 巷のウワサ

「ねえ美咲、例の廃病院の噂だけど…また高校生がいなくなったんだって!」


そう話をするのは、私のクラスメイトの奥間紗英だ。


『えー!またいなくなったの⁉︎ってかこの町の警察は一体何してるのよ!』


…私の暮らす町は、人口10万人ほどの小さな町。都心から電車で30分。主要駅だから快速列車も停まるし、ショッピングモールもある。不便ではないけれど…特にこれといって何もない、いわゆるどこにでもある様なベッドタウンだ。


市内に中学校は全部で3つあって、幼なじみの紗英とは小学校からずっと一緒。中学1年だけじゃなく、なんと2年も同じクラス!私の最も信頼している大好きな友達。


そんな紗英と何の話をしているかと言うと、2年の6月に入った頃、校内で噂になっている廃病院の話だ。


「さすがにやばいよね…もうこれで2人目だよ。やっぱり病院で亡くなった人の呪い…なのかな…?」


紗英は神妙な面持ちで話す。

この町にはずいぶん前から廃病院があって、私たちも小学校の頃から危ないから近寄るなって、親や先生から言われ続けてきた。


噂によるとその病院は、私たちが生まれる前に、誤診が重なって相次いで死亡事故が発生したらしい。

病院はそのまま経営破綻したけれど、建物は今でも残っていて、昔から医療事故で亡くなった人の霊が出るって有名だった。


事件が起きたのは、5月の連休明けくらい。

なんでも、ゴールデンウィークを利用して、高校生の集団が幽霊を動画撮影しようとしたらしい。


最近流行りの心霊系の動画をアップしようとしたらしいけど、そのうちの1人が消えてしまったらしい。

一緒に行った他の高校生たちも、当日の事については一切話さない。

その話が、高校生たちの兄弟姉妹に広がって、ウチの中学でも話題になっているのだ。


もともと何もない退屈な町だったから、この手の心霊話はどんどん大きくなって、消えた高校生は実は呪い殺されたとか、神隠しにあったとか、今やいろいろな憶測が飛び交っている。


『大丈夫だって紗英!今の世の中、幽霊や呪いが本当にある訳ないでしょ!紗英が怖がり過ぎなんだよ。』


「でも…だったら他の高校生たちが何かしら説明しても良いでしょ?一切何も言わないのは…喋ったら自分たちも殺されてしまうから、とかじゃないかな。」


確かに、同行した他の高校生たちが何も話さないのは不思議だ。

動画もアップして、幽霊の存在を証明しても良いはずなのに…。

私は幽霊なんて信じないけれど、何か呪いでもかけられたのかと想像してしまう。


『よし!なら私が廃病院へ行って真相を確かめてみるよ!』


「美咲⁉︎何言ってるの⁉︎美咲まで呪われちゃうよ。」


『大丈夫だって。幽霊がいるのかいないのかはっきりすれば、こんな噂も無くなるでしょ?せっかくの中学生活を、こんな噂でビクビクして過ごすなんてもったいないじゃない。』


「それはそうだけど…せめてみんなで一緒に行こうよ。1人じゃ危ないよ。」


『それもそうね…私1人が行って来ても、みんな私の言う事を信じてくれないかも知れない。うん!一緒に行ってくれる人を募集しよう!』


こうして、私たちの廃病院の謎解きが始まった。

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