サイコパスな専属メイドは俺を溺愛している

ネリムZ

第1話

 この学校にはクールビューティーのマドンナが1人いる。

 その人の名前は空閑柚月である。

 銀髪の髪を揺らして廊下は歩く姿は百合の花であった。

 誰かと話した姿は見かけないが、沢山の人に告白されているらしい。


 そんな彼女は⋯⋯俺と一緒に住んでいる。

 俺の家は屋敷であり、両親が無駄に大きな家として建てた別荘の一つだ。

 沢山の使用人と一緒に俺はこの屋敷で住んでいる。

 ただ両親と離れたかったと言う理由があるが、1番大きな理由は柚月から離れたかった。

 しかし、柚月は付いて来た。


 柚月、彼女は俺佐内天城の専属メイドだ。

 幼い頃からずっと一緒に居る彼女、見た目は確かに凛として綺麗だ。

 だが、俺は恋愛感情を抱いた事が無い。


「あの、胸押し付けるの止めて貰えます?」


「えぇ、天城様〜喜んでいるではないですか、私の能満な胸を押し付けられてアソコ立⋯⋯何もないですね」


「恒例行事に成り掛けているからね。重いから止めて」


「それだけ大きいって事ですね〜」


 そう、無口からクールで美人で済むんだが、口を開くと甘ったるい声でギャルっぽい話し方(尚、偏見)をする。

 仕事をサボっている訳でもないし、寧ろ仕事人一倍やっているし、この屋敷の使用人の管理もこなしている。

 つまり、超優秀で誰も止めてくれない。


「そんな株なんて止めて一緒に遊びましょうよ〜」


「嫌だよ! ゲームでもボードゲームでも俺全敗するやん!」


「天城様が弱いんですよ〜」


「あんたが強いんだよ!」


 そして晩御飯の時間。

 俺の前にはフォークやナイフ、箸する無い。

 あるのは口元に突き付けられるじゃがいもだった。


「はい、あーん」


「ゆっくり自分で食べさせてくれない?」


「それだと私の間接キス作戦が出来ないじゃないですか!」


「いや、するなよ」


 しかし、この時の他のメイド達の考えは一致していた。


(直接しなくても後から取って舐め回しているじゃないですか)


 だが、立場は柚月の方が上で、何も言えなかった。


 俺は毎日こんな生活をして、結構疲れている。

 父親や母親に文句を言っても『いいじゃないか。愛されて。結婚なら俺は止めんぞ』『そうね。政略結婚とかも無いから、好きにしなさい。問題は起こさないでね』などなど。

 両親は柚月側の人間なのだ。


 味方がいない俺は逃げた⋯⋯逃げたのに、なんで付いて来るのか。

 別に嫌いって訳じゃない。

 本当に俺が嫌いな事はしないから。


「はふー」


 今俺は無駄に広い浴場に入っている。

 風呂は良い。

 疲れを一気に吹き飛ばしてくれるから。

 ゆったりと休めるしね。


 俺は体を洗う。


「お背中と下半身全部お洗いしますね。隅から隅まで、内部まで」


「あー頼⋯⋯じゃないね。何しに来たのよ?」


「天城様の欲求不満を解消しに来ました!」


「出てけよ! てか、タオル巻いて来いよ! 最低限は隠せよ!」


「私の体、心、全ては天城様のモノですぅ!」


 抱きつこうとして来る柚月を手で押し返す。

 そんな悶着をしていると、足を滑らして後ろに倒れる。

 柚月のあられもない姿が見える。


「天城様、大胆」


「さっさとどけやあああああ!」


 ベットに向かい、中に入る。

 寝るのは良い。

 疲れた現実を忘れて冷静に成れるからだ。

 中には学校や会社で憂鬱だと思う人も居るだろう。

 だが、俺は学校と言う場所が好きだ。

 柚月に絡まれないしな。

 ベットも柔らかいし、左手の部分は何かぷにぷに⋯⋯いやこれはポヨンポヨンとした感覚で暖かく、ドクンと言う振動を感じる。


「こんな機能はなーい! 毎日言ってるよね! 寝る時は1人にしてよ! これ毎日5歳の時から言ってるよね!」


「それまでは一緒に寝ていたじゃないですか」


 メイド服では無くパジャマ姿の柚月が俺のベットに入っていた。

 艶かしい笑みを浮かべて右手を伸ばし、左手を胸元のボタンに伸ばしていた。

 俺は左手を掴んだ。


「何しようとしてんの?」


「既成事実を、ね?」


「出てけ」


 俺は柚月を部屋から追い出した。

 俺は寝た。


 朝起きると下半身がスースーしていた。

 ズボン及び下着が無かった。

 下半身丸裸だった。


「スーーーーーハーーーーー」


「⋯⋯柚月、何してんの?」


「何時ものです♡」


「何時もパンツ嗅ぐな! 結構冷えるんだぞ!」


「こちらお着替えです」


 別の下着と着替えを渡して来る。


「着替えるから出て行って」


「全部見せてください! 5歳の時から1度もしっかりと天城様が意識ある時に見た事ないんですよ!」


「⋯⋯」


 もう何も言うまい。


 布団の中に入り着替えを済ませる。

 俺もこの技術はとにかく高く成った。


「はしたないですよ」


「お前のせいだろ!」


「天城様って暴力振るいませんよね」


「当然だろ。セクハラになるだろ」


「⋯⋯ふふ。そう言う所も天城様です。ですが、私は天城様が望むならSにもMにもママにも妹にも姉にも成ります!」


「どうでもええは!」


 ちなみに今日は土曜日だったようで、制服は渡され無かった。

 休みは憂鬱だ。四六時中柚月が後ろに付いて来る。

 柚月が俺の事を好きな事は分かる。

 逆にここまでして好きじゃないなら驚きだ。

 だけど、怖くてそれを受け止める事が出来ない。


「何処に行かれるんですか?」


「アニメイト。友達と一緒に回る予定」


「着替えて来ます」


「柚月、今日はマジで来ないで」


 俺は低く冷たい声でそう告げた。


「⋯⋯畏まりました」


 こう言う時、彼女は素直だ。


 俺はアニメイトへと出発した。


 ◇


「天城様」


 あぁ天城様。今日もかっこいい。

 素敵。めっちゃ好き。超大好き。

 調教して欲しい!


「はぁ。天城様の匂いを嗅ぐと頭が来るってしまいます」


 私は他の使用人達に今日の仕事は休みだと伝えてある。

 そして私は私服に着替える。


(天城様が居ないと綺麗な子なんだけどなぁ)

(持っいないよな)

(ほんとそれ)


 執事の小声を無視しながら、私は天城様の後を付けた。

 学校では接近禁止令を出されているが、休みでは適応外だ。

 ただ、近くにいては天城様に迷惑なのも事実。

 なので、後を付ける。ストーカーと言われても文句は言えない。

 その点は自覚している。


 だが、それでも天城様の友人関係は把握しておく必要はある。

 情報屋を使って調べてはいるが、やはり自分の目で見ないと。


「な、なぁ。あの人めっちゃ綺麗じゃね?」

「まじだな!」

「お前声掛けてみろよ!」

「無理無理。お前行けよ」


 綺麗な顔は時にめんどくさい。

 帽子はチクチクして嫌いだし、サングラスは耳痛く成るし、マスクは純粋に嫌い。

 だからこそ、基本的に私は自分を飾らないし偽らない。


 天城様の匂いが空気中に霧散されてあまり嗅げない。

 しかし、近くに近づくのはダメよ柚月。

 今日は気温が高い。

 きっと帰った後の服は⋯⋯ぐへへ。


「はっ!」


 妄想している暇はない。

 この人混み、見失ったらやばい。


「ねぇそこのお姉さん」


「話し掛けんなゴミ」


「え」


 おっといけない。

 天城様と同僚以外の人と会話する時の私が咄嗟に出なかった。

 やばいやばい。


「あはは。ゴミ、か。俺、そう言われたの初めてだな。遠目から見て⋯⋯」


「うるさい黙れて邪魔だどけ」


「おいおい、そう言う成って。俺と、行ことしない」


 近づいて肩に触れて来る見知らぬ男。

 私に触れていいのは佐内財閥の御家族だけで、そして素肌に触れて良いのは天城様だけ。


「え、いだあああああ!」


「喚くな」


 うるさいあいつの口を手で塞ぎ、周りにバレない程度の小声で言う。


「二度と私に関わるな。次は貴様の目玉をくり抜く」


 私の邪魔をして来る奴は、誰であろうと粛清する。


「は、はひ」


 ◇


「天城氏、沢山買いましたな」


「ああ。これは必需品だからな」


「分かるでござる」


「同じくでやんす!」


 アニメフィギュアは必需品である。

 ただ、気をつけないと柚月に捨てられる。

 経験がある。

 あの時の柚月の目はマジで怖くて、その日以降数日コスプレして来た(しかも高クオリティ)。


 帰宅途中、俺は絡まれている女の子を見つける。

 見た目的には同級生かもしれない。


「いいじゃん。俺達と遊ぼうよ〜」


「こ、困ります」


 ここは助けに行くべきか。


「あの、その子困ってますよね」


「邪魔すんな!」


「ぐへ」


 り、理不尽。

 せめてそこはテンプレで「なんだお前?」とか聞き返して欲しかった。

 まさか容赦無く腹パンして来るとはマジで思わなかった。


「良いところだったのに邪魔しやがって」


「このガキが!」


 6人のリンチを耐えて逃げなかった女の子に話し掛ける。

 あいつらは攻撃されてもヘラヘラしている俺にビビって逃げて行った。

 あの程度で痛みは感じんよ。妹の方が怖いし強い。


「大丈夫でしたか?」


「それはこっちの台詞ですよ! 大丈夫ですか? ボコボコ攻撃されていましたが、それでも笑っているし! もしかしてMなんですか!」


「助けたつもりなのにそれは酷い!」


「⋯⋯」

「⋯⋯」


「「ぷは。あはははは」」


 笑いあって俺は帰った。

 勿論フィギュア等は違う場所に置いていたので無事だ。


 ◇


 あの女あああ! 私の、私の天城様と馴れ馴れしく笑いやがってええええ!

 殺っちゃう? 殺りますか? 殺りましょう!

 違う違う!

 まずはあの男達が先だな。



 みーつけた。


「あの、お兄さん達」


「お、どうしたの、おねぇーさん」


「さっきの見ましたよ。男の人をボコボコにしたの」


「えー照れるなぁ。カッコ良かった?」


 ⋯⋯あーキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイ。

 こう言う人種でどうしてあれがカッコイイとか思うんでしょ。

 マジで意味が分からないしウザイ。


「そう思うと思いますか? 多対一でリンチして」


「え」


「あーもう無理。取り敢えずあんたら、泣いても叫んでも警察呼んでもボコすから」


「え」


 私は呆然とする6人の男達に向かって、砂鉄の入ったサンドナックルを両手に装備して、接近する。

 他にもメリケンサック、アイスピック(改造版)等など護身用具を所持している。

 天城様の妹様の影響で様々な武術を習っている私。

 私の拳は正義の為に有らず、天城様の為にある。


「死ね」


 ま、殺しはしないけど。だが、9割殺す。


 ◇


 家に帰ると、柚月が出かけていた。

 俺はすぐに風呂に入る。

 ゆったりと入る為に晩御飯の前に風呂だ。


「ふへ〜」


 今日は何事も無く体も洗えたし、ゆったりと入ろうかな。


「天城〜しゃま〜」


「いつも間に!」


 隣に座って体を寄せて来る柚月。

 マジでいつの間に来やがった! 毎回毎回音立てずに来やがって。

 幽霊かよ。


「〜〜」


「なんか今日は機嫌が良いな」


「天城様が楽しいそうでしたから」


 そう言って、笑顔を向けて来る柚月。

 彼女は学校ではクールで凛々しく綺麗な人だ。

 だが、この家で専属メイドと働いている彼女はとにかく怖いし危険だしキモイ。

 だけど、笑顔を見るのは、本当に悪くない。

 幼馴染で俺の傍にずっと居てくれる優しい人。


 ん?


「ちょっと待て、もしかしてお前、ストーキングして来たのか!」


「⋯⋯」


「おいコラ目合わせろやああああああ!」


「きゃーせめて初めてはベットの上で〜」


「違うわ! 説教するから正座!」


「私の裸を見たいんですね!」


「よし、上がってから説教だ!」


「天城様が私に向かって長文で話してくれるやったぁ! 今日は最高の1日」


 ダメだこの子、俺が怒っても意味が無い。


 最終的に姉に電話して説教して貰った。

 何故か柚月の顔がほのかに赤く、嬉しそうだった。

 姉、きちんと説教してくれたのだろうか。

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