No.1260 C-358 戴冠
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1.媒体と効果
媒体は昭和26年製造の十円玉硬貨。
反社会的な情動を高め、自身の言動を正当化する効果を持つ。
2.報告
まず戴冠はT市で起きた肝試し殺人事件と、その原因となったいじめ事件の二件が原因で作られたと考えられる。
事件の概要として、戴冠の持ち主である少年Aは真面目で素朴な、ごく普通の少年だったという。学校教員を目指しており、高校は進学校に進みたいと考えていたが、「荒れた環境でこそ良質な経験が詰める」という両親の方針で、県内でも評判の悪い私立高校に入れられた。硬貨はこの頃に偶然手に入れたようで、その価値を知ったAは、宝物として肌身離さず持っていたようだ。
Aは高校に入学して早々にいじめの標的になり、強請や暴行などの被害を受けていた。両親に相談したものの取り合ってもらえず、いじめに耐え忍ぶ日々が続いた。Aの高校では卒業まで、クラス替えをしないので、Aはその後3年間被害を受けることになる。
その後Aはいじめを耐えたが、最後の年の夏に町はずれにある廃ホテルに呼び出される。加害者らはそこでAに、花火を使った暴行を行うとした。はじめは逃げるAを花火を持って追い回す程度のものだったが、次第にエスカレートしてゆき、加害者らは爆竹をAの肛門に入れて火をつけようといいだした。
当然Aは激しく抵抗。するとならば口の中でやれといわれ、複数人の加害者らを前に逆らえなかったAは爆竹をくわえた。破裂した爆竹は命こそ奪わなかったものの、悲惨な被害を与えた。大笑いする加害者を見て、なにかが切れたAは、地面に落ちていたガラス片を持って加害者らに襲い掛かった。
爆竹の音を聞いた通行人によって通報がされ、警察が廃ホテルに到着した時点で4人が死亡。Aは自身も大怪我をしながら、最後の1人を組みしきめった刺しにした。この大捕り物の際、激しい遺想を浴びた硬貨が遺想物に成ったと思われる。
その後、Aは病院に搬送された。いじめの事実確認や、両親に相談があったこと、そして事件当日の壮絶な傷害などが考慮され、Aは検察官送致となったものの、罪状に対しては比較的寛大な処分が下された。現在、Aは両親と共に海外に渡り暮らしているという。一方で現場になった廃ホテルには、この事件を基にした噂話が定着しており、心霊スポットとして有名になった。
その後、戴冠は肝試しに行った学生たちの一人が手に入れ、紛失した後に付近の警察官に届けられ、最後に会員海老原氏によって回収された。
3.備考
戴冠が原因と考えられる二件の殺人未遂事件について、会員各位にはいかなる媒体でも口外を控えるよう求める。
また戴冠の効果が社会に与える影響を考慮し、学会を通さない売買・譲渡を禁止する。
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