No.1258 メルトハート

≪メルトハート≫

1.媒体と効果

 本体は1958年よりタナボタ食品が製造している食玩『メルティシュガーシリーズ』の一つである。1973年に発売された星座シリーズのシークレット品で、『金平糖の乙女』と命名されたもの。直径30㎝、先端に赤いビニル素材の小星形十二面体の飾りがついたステッキだ。

 欲求を戒める効果を持っており、所持した人間が欲求を抱くと心臓に激痛が走る。早ければ合計18時間の携帯で、ステッキを持っていない状態でも効果が確認された。しかしこれは魂の沈着というほどのものではなく、不携帯の状態が42時間程度続けば効果は消えた。


2.報告

 11月某日、学会員である桧垣氏が別件でK市K村のある家族を訪問した際に、メルトハートは発見された。娘Tが所持していたが、後の調査によって元の所持者は祖母Eであり、遺想をこめたのも同じ人物であると判明した。

 Eは厳しい父と、父に従順な母の元で育ち、娯楽を赦されない幼少期を過ごした。洋裁学校を卒業後はお針子として仕立て屋に勤める。この時から一人暮らしをしており、幼少期から憧れていたメルティシュガーシリーズの蒐集を始める。数年後、Eには連絡もないまま父によって結婚相手が決められ、家を引き払うこととなった。引っ越しの際に両親にコレクションが見つかり、処分された。しかしメルトハートだけは隠すことに成功していた。嫁入り後は敷地内にある蔵に隠していたが、孫娘によって発見され、しばらくはEの手元にあった。遺想はこの頃に宿ったと予想されており、家父長制の呪縛から解かれ、自由に生きる妻や孫娘への嫉妬や羨望が反転してしみついたものとされる。


3.備考

 被害者、被験者共に少なく、更なる効果の検証が求められる。

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