5. 秘めたる想い
「聞いたよ、兄貴が付き合い出したエピソード」
話し難そうな様子で、澄香に切り出した義勝。
澄香と義勝の前方には、晴れて公認のカップルとなり、義彦と一緒に帰る江奈。
その近くには、義彦の友人の1人と、急に意気投合して同行するようになった、亜砂代もいた。
「あ~、ずっと、じれったい感じの2人だった!」
「うさぎのキャンディは、澄香が仕込んだんだろ?」
義勝に指摘されて、否定しなかった澄香。
「そうでもしないと、あの2人、卒業まで、あのまま片想い続けていたと思う!」
「俺は、澄香のそういうところも好きだな~!」
「ありがと!」
それくらい想定内という様子の澄香。
「さっさと、兄貴の事は忘れろよ! 兄貴にはまだまだ追い付けないけど、いつか、俺も勉強面でも運動面でも、絶対に頑張って抜いて見せるから!」
「うん......?」
首を傾げたい衝動に駆られた澄香。
「俺はずっと、澄香の事を好きだからな!」
「分かってる! さっさとウサに追い付いてね、義勝! 期待してるから!」
どこで、どう勘違いしたのか、単に噂を信じていたのか、義勝は、澄香が好きなのは義彦だと思い込んでいた。
澄香は、周囲が勝手に噂を広めさせていた義彦との件をさっぱりと清算させてから、義勝に向き合いたいだけだった。
その疑惑は、義彦が江奈と交際を始めて、晴れて解消されたのだが......
それによって、義勝が勉強や運動面で意欲的に取り組むのであれば、自分が失恋したと勘違いさせたままにしておくのも、悪くないと思えた澄香。
【 完 】
バレンタインデーにうさぎのキャンディを ゆりえる @yurieru
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