その12 ~魔法少女 vs アソ連邦 その3~
※主な出演者
ハナコ …
ダン …
カナデ …
イチロウ…
ジライヤ…
クレイ …苗字不詳の美女。金髪碧眼で背は花子より高い。ダンより少し弱い程度の実力者
ブラック…
※厳密にはゴーレムではなく自律行動型巨大ロボット(10m)で構成素材は未知の非金属
動力源はダークマターで製造したのは今は滅んでしまった別次元の高度な文明らしい
━━━━━━━━━━━━━━━
- 某対エ自・高円寺支部 -
「暇だねぇ~…」
「暇っすね…」
「本当、
実はブラック単体ではなく、仲間たちも協力して吸収しまくっているというのもある。日本だけならブラック1体で十分なのだが世界全体ともなると吸収量に限界がある為だ。
「まさか、アソ連邦以外のダークマターを吸収するとかね…」
…ということらしい。
結果、アソ連邦の支配地域ではひっきりなしにエネミーが襲う危険地帯のまま。それ以外では滅多にエネミーが現れない…2度と現れないという訳ではないが、比較的平和な土地となっていった。無論、住人はそんな危険な国には住む選択は無く…アソ連邦以外の国へと流出しているそうだ。
本来なら亡命という扱いになり住民の流出を止めることができる筈なのだが…エネミー新法の解釈では危険な地域からの移動は認められていることであり、その地域のエネミー被害を国、州、自治体の責任で抑えられないのはその地を納める者の怠慢であり、引っ越しや居住地の移動を止めることは叶わず…いわば自業自得ということである。
「何か日本に亡命してくる大陸の民が増えてるみたいだけど…」
「日本は受け入れてはないみたいだな」
「お家芸で勝手に侵入してきてるみたいだけどな…ヤレヤレ」
勝手に侵入してくるのは人の居ない夜間にでも小さい船で…ということだろう。ブラックからの報告で知ったんだけど、その場合の対処を訊かれて…
『ダンさんに訊いてくれ!』
と丸投げしといた。いや、警官じゃないからその辺わかんないし…事後報告だけど、取り敢えず匿名で近所の交番とか駐在所とかに連絡して、侵入してきた亡命者の位置を報せて現地の警察に任せてるそうだ…うん、まぁ…それでいーんじゃないか?…下手に介入すると色々と面倒だし。
- そして放置していた闇の靄が危険域まで濃度上昇… -
〈なぁ…これ不味くないか?〉
〈あぁ…ブラックに報告を〉
〈了解〉
そしてブラックを介して花子まで観測結果がもたらされる…
「え?…アソ連邦関係各所の地域のダークマター濃度が危険域に?」
〈あぁ…以前はアソ連邦の対エネミー組織で何とかなっていたのだろう?〉
「…と思う。管轄外だから細かいことはわからないけど」
元々、対エネミー組織はその国の軍隊に設置されていることが多い。何なら軍が兼任している国も多いと聞く…だがどういうことだ?…アソ連邦は大国だ。元々は南北アメリカとカナダとグリーンランド、そして(カナダと陸続きとなっている)ソヴィエト連邦の連合国家だった筈だ。世界から見れば、最大規模の国の筈なのだが…(但し、日本と比べると国家の所有する土地に比べて人口密度はかなり小さいらしい)
〈ふむ…人口密度が低い地域では対エネミー組織が各個撃破されていて撤退を余儀なくされて…エネミーが跳梁跋扈する危険地域が増えているようだな〉
「え…」
〈元ソ連国家では人類が生存可能領域が先日の作戦以前より縮小…以前は半々くらいの人類生存可能地域が今では3割程度に減少していると…〉
「おい…」
〈北米とカナダ、グリーンランドも似たような状況のようだ。今は南米に亡命者が溢れていると…尤も南米は北米よりもまだマシって状況なだけで、溢れた人員を受け入れられる状況じゃあないみたいだ〉
「…で?」
〈我々の見解では、「黙ってみてるのは非常に心苦しい」…ってのが正直な所だが?…マスター〉
「あ、そう。でもさ、現状の地域のダークマターを吸収するんで手一杯なんじゃ?」
〈ん?…あぁ…ここの所吸収した分で眠っている仲間を再起動に成功してな?…まぁ何とかなるんじゃないか?って話しになってるんだが…おーい〉
ブラックは後ろにいる誰かと話してるようだが念話ではボソボソとしか聞こえず…機械を通して話してるトランシーバーとは違うんだなぁと思っていると…
〈取り敢えず、メンテで休息を取ってる仲間を除いて…数としては何とかなるんじゃないか?って話しだ。少し時間を必要とするが…〉
「どれくらい?」
余り無茶をして欲しくないしこちらとしても安全第一でやって欲しいので「切羽詰まってはないよ?」…という感じで訊いてみる。念話では感情も少しだけ伝わってしまうらしいのでね…(電話で感情を込めて話すと伝わるというのと同程度って程度だけど)
〈そうだな…〉
暫く向こうの同僚と会話してるらしいブラック。同僚つか同じゴーレムっぽいのが一杯いるんだろうな…多分。先日こちらに現れた潜水艇とかUFOとか人間よりゴツイ降下艇部隊のロボみたいなのも同僚なんだろうかねぇ…
〈マスター、待たせた〉
などと考えてたら不意にブラックから念話が届く。あ~びっくりした。
「あ、うん。待ってないから大丈夫だよ?」
〈ダン部隊長と相談した結果、多分大丈夫なくらいの戦力を投下できると思う…うん?どうした、マスター〉
「さっきから相談してたのって…ひょっとして?」
〈あぁ、そちらのダン部隊長だが…それがどうかしたか?〉
はぁ~~~~~…と怒りを制御しつつ、長い長い溜息を体温を込めて吐き出す花子。体感で1度くらいは体温が下がったんじゃないか?…と思うくらい…
「ダンさんを交えて話すならさ?」
〈…あ、あぁ…〉
「ラグもあると思うし…一緒に居る時にしない?…勿論、他人が居ない部屋に移動してからね?」
〈…それだと色々と誤解が生じないか?…人間というのは色々と面倒なのだろう?〉
ブラックの突っ込みに、それもあるけど…と思うが、今は緊急時だ。
「それはこちらで何とかするから。取り敢えずダンさんは全部承知してるんでしょ?」
〈うむ…今頃はパソコン?とやらの得意な部下に頼んで詳細事項データを打ち込んで印刷してる頃ではないかな?…対エ自・高円寺支部の作戦として動くとかいってたからな〉
…高円寺支部限定で全バレの状態であったw
「うがーっ!…わかった!…じゃあ後は頼んだよ!」
〈…こちらからの連絡事項はダン部隊長から聞くということで?〉
「そうだよ!…じゃあね!」
こうして…花子からの念話は強制的にぶっちされるブラック。
〈うーむ…矢張り人間というのはある意味不明な所が多い生き物だな…〉
〈向こうから通信切断されたのかい?〉
〈あぁ…〉
〈婚前の若い個体なんだろう?…しかも性別雌というなら色々面倒臭いって聞くぜ?〉
〈そういうものか?〉
〈それより起こすのはこっからここまでで大丈夫か?〉
〈あぁ…戦力としては足りると思う。後は…作戦データのインストールだが…〉
〈作戦内容はダークマター吸収と湧いた尖兵エネミーの排除だろ?…大丈夫大丈夫…ヒュージ程度までなら問題無いさ…寧ろ、地形を変えないで殲滅する作戦を考えると強力過ぎるんじゃないか?って危惧するくらいなんだが?〉
〈あぁ…だが、アウターゴッズたちのことだ。若しかすると…と考えるとな?〉
〈あぁ…分身とまではいかずとも、
アソ連邦の国では内陸部は火と土の邪神「クトゥヴァ」の眷属の更に下っ端たちが。主に土の邪精霊たちが現れ始めていると聞き、湾岸部では水の邪神「クトゥルフ」の眷属の更に下っ端たち…主に水の邪精霊たちが現れ始めているらしい。
流石にまだまだ境界部がしっかりしている為に肉の身を持つ眷属が現れてないのが不幸中の幸いといえよう…他、風の邪神「ハスター」の眷属の更に下っ端である風の邪精霊たちが好き勝手に飛び回り、逃げ惑っている難民たちに手を出して遊んでいるとも聞く…今の所はエネミーより力が無いことが幸いして悪戯以上のことはされてないようだが…
〈取り敢えずこれ以上悪さができないように吸収…必要であれば浄化の準備もしていくか〉
〈あぁ、宜しく頼む〉
ブラックは件の事件以降、日本海溝の底に常駐している次元潜航艇の頭脳体と念話通信を行い、次の作戦に必要な戦力の要請を終えた。彼はブラックの所属する次元宇宙の基地とそれ単体で物資やダークマターの授受を可能とする出張基地の能力も持ち合わしており、その際の消費エネルギー量も低く抑えられるのだ。
最初に出現した時のダークマターはそれなりに多かったが、ブラックがそれまでに転送していたダークマターの半分も消費して現出した。ブラックと彼らは彼らを創った別次元の人類の課した
(まさか…本当に似たような知的生命体の文明があるとはな…それも我らの創造主の文明の黎明期に良く似た…)
残されたライブラリには可能な限りの…途切れ途切れではあるが文明の記録があった。流石に時間遡行技術までは開発されてなかったので残っている曖昧な過去の記録と、可能な限り記録された忠実な記録史だけだが…
(発掘されたアーティファクトとそれを用いて戦う魔法少女…)
まるで聖剣と花子のことのようだが、記録には魔法杖と別名の少女のことだ。映像記録もかなり痛んでいるので性別と杖らしき物を持って戦っているらしい姿しか見て取れない…
(それに少女に付き添う小動物…まぁ、私が小動物な訳はないしな…)
ごつい巨大な体を見て思うブラック。どちらかといえば、戦隊物の小道具がお似合いだろう。巨体は小道具にしては大き過ぎるが…
〈ブラック…準備が終わったが、データシートを確認するか?〉
〈あ、あぁ…転送してくれ〉
僅かの間が空いて怪訝な感情を浮かべたが、まぁいいかとスルーした次元潜航艇の頭脳体。データシートとは準備ができた者たちのスペックシートと作戦内容の現時点での教育進行具合と割り振られる作戦の部隊表などだ。十全ではないがその個々のスペックと得意不得意に合わせて割り振られた部隊一覧を見る限り、80%の成功確率を得られるだろう。
【簡易データシート】
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●ヒュージ以上対応可能部隊「戦闘部隊(暫定)」
◎リーダー :
◎サブL :
◎部隊メンバ:同上2~5(簡易思考コア実装)
◎補助メンバ:CB2~5搭乗アンドロイド部隊×18(それぞれのCBに3名づつ搭乗)
※補助メンバのアンドロイド部隊はCB1の思考コアか搭乗機の簡易思考コアの指示に従う
※補助メンバの仕事は逃げ遅れた一般民の救助を主とし、戦闘はCB部隊に任せるが止むを得ない
場合は交戦することもあるが対応できるのはミドルエネミーまでである(ハンドグレネードなら
ラージエネミーを
◎戦力…対H120%、対L250%、それ以下…補助戦力で対M100%、対S150%
◎救助…補助メンバでのみ(備品の輸送車両を用いることで攻撃が無い前提で100%)
◎輸送車両…専用アイテムボックスより取り出せる車両。見た目は大型バンで収容人数は8+1
※後部ベンチ型座席2に4名づつ8名+中央に簡易担架に怪我人を載せて1名
※輸送車両はアンドロイド部隊各々が1つづつ所有(※使用は補助メンバLの許可が必須)
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●ダークマター吸収部隊「DM部隊(暫定)」
◎
◎補助メンバ:アンドロイド部隊×10(トラファイター1基に対し搭乗数が10名)
※ダークマター吸収タンクと吸収装置を別途5基づつ搭載。これ1つで濃度70%の日本の3倍(陸
地ではなく、排他的経済水域を示す)のエリアを吸収しつくして満タンにできるが時間は掛かる
ので移動しつつ吸収しなくてはならない為、トラファイターに載せたまま行動する必要がある
※次元潜航艇の格納庫は外見より広く、空間拡張を施していると思われる。ので、トラファイター
がまとめて10基入らない気がするが実際には搭載できるし可視状態なら信ジラレナーイ!となる
※また、トラファイターの内部も同様に拡張されているのでアンドロイド部隊が30体も入らない
ように見えるが実際には入るし色々と備品も搭載されている
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〈…ま、いいだろ〉
〈一応、予備部隊も現在鋭意選出中だ〉
〈…無理して選ばなくてもいいが…もしも、があるかも知れないしな〉
〈そういうことだ。ではな〉
〈ああ…〉
音も無く終了する念話通信。こういう時、映像もあればいいのだがと思うがこちらの世界での技術に毒され始めているなと思いつつ、ブラックはダン部隊長にデータを送るのであった…尤も、
「凄い戦力が送られてくるんだなっ!?」
と驚かれたが内容を理解してるのかどうかは不明だったが…ドンマイ、ブラック!
- その夜… -
「現時刻…
此処は対エネミー自衛隊・高円寺支部の演習用地。現状は高い視界を防ぐ視界隔壁を伸ばしていて周囲からは中を見通せないように…いや、ドローンなどを飛ばせば上空から見下ろせるが…
ダン部隊長はフル装備で立っていて作戦の発動を叫んでいたが、今回は日本国内での作戦ではない…
「まさかお隣のK国の支援作戦をすることになるとはなぁ…」
ボヤクのは
「まぁ…上からの命令でしょ?…エネミーが絡んでるなら仕方ないですよ」
と、花子が嫌そうな顔ではいるがそう
(全ての国がエネミーで襲われてるって時にもお構いなくだからなぁ~…思想って怖い…)
遥かな古代からエネミー被害があるなら兎も角、エネミーが現れたのはせいぜいここ100年くらい。それ以前からある国同士の確執なんて100年程度の時間では消えないってことだろう…多分。詳しく調べればもっと長いこと前から現れていたのかも知れないけど…今はK国のエネミー退治だ。
「…で、此処にヘリでもくるんですか?…うちの装備である旧バンじゃ海は渡れませんよ?」
既に待機しているバンはエンジンに火が入っており、待機状態で停めてあるが…それを指摘するジライヤ。バンの中では同じくフル装備のクレイが頷いている。流石にバンを船には改造してないんだが?…と半目で語っている。
「安心しろ。空自のヘリなんぞチャーターしたら高円寺支部の年間予算が吹っ飛ぶからな!」
いやそれの何処に安心する要素が?…と白けた空気が漂っていると…
『お待たせしました、皆さん』
と外部スピーカーから声が…すれども姿は見えず。と、軽く着底する音が響く。
「まさか…」
「そう、そのまさかさ」
と、花子の声にダン部隊長がふふん♪と自慢気に鼻高々となる…
『では、乗り込んで下さい』
と聞こえた瞬間、バンより大きな四角い穴…というか輸送機の搬入搬出路がパカっと開いて待ち受ていた。一応、地面までは届かないので車両が通る為に板状の通路が延びるのだが…内部構造が見える状況になって初めて視えた前景。それは…
「「「え?…これ…UFO?」」」
見えてる限りの形状を見ると…どうみてもアダムスキー型のUFOです。ありがとうございます…(いや誰に対して礼してんねんw)
・
・
取り敢えず、ダンの「早く乗れ」というせっつきにカナデ、クレイ、イチロウ、ジライヤ、花子、そしてダンが乗り込む。クレイはバンを運転して乗り込んだ訳だが…
「何で私まで乗らないといけないんですかっ!?」
「いや…後ろで手綱を制御する人も必要かな?…と思ってね」
「支部はどーすんですかっ!?」
「いや…じっさまがいるじゃん?」
じっさまってのは後方支援担当のメンテ部隊の隊長だ。名前は聞いたことないので知らない。みんなじっさまとしかいわないし…
「はぁ…それはいーんですが…隣国に出張っても誰も報告とかできないんじゃ?」
少なくとも通信網は現在断裂しており、近距離での電波による通話くらいがせいぜいだ。漁船なんかで境界辺りまで漁業をしてると、必死な助けを求める声を受信するらしいけど…戦力も無い漁船が行っても意味無いので慌てて日本に帰還航路を辿って、途中で通じたら海保に連絡するくらいだそうで…まぁ正しい対処だよな。無駄死にしに行く義理も筋も無いし…反日の国だからな!
そんなに近距離まで接近しても大丈夫か?…というのは、闇の靄が10%未満まで減少するとスモールすら湧かなくなるんだそうで。生物でいえば限りなく酸素が無い空気に突っ込むことになるので活動できなくなって最悪死ぬ(=元の世界に舞い戻る)んだそうで…余程のことが無い限りは闇の靄が薄い所には近寄らないそうだ。
ブラック曰く、死して舞い戻ると恥だそうで…プライドが高いある程度実力のある(=ラージ以上)個体は死なないように気を付けてるがミドル以下の個体も簡単に死なないようには行動してるそうで…スモールも嫌な感じのする場所には近づかないように行動してるとか…危険な所に好き好んで突っ込む人類ってやっぱアホの子なんだなぁ~…と思うこの頃でした。
- じゃ、出発! -
実はアンドロイド部隊も人数を減じていたが5体程乗っていた。予備部隊の内、トラファイター1基とダークマター吸収装置とタンクを2つ。アンドロイドを5体と戦闘用装備を少々…流石に本格的な戦闘訓練を受けた者がいるとはいえ…アンドロイド用の装備を扱える膂力があるのはダンと花子のみで、その他の者は小銃から普通のロケランなら兎も角、ロケランをマシンガンのように撃ち出す装備(弾はマシンガン並みに小さい)など保持すら難しい…という訳で、ダンと花子のみ借りることとなった。
〈では、適当な座席に座って下さい〉
「「「はぁ~い」」」
まるでピクニックに出掛けるような返事ではあるが…
〈到着しました。準備をして外に出て下さい〉
「「「は?」」」
〈事前に配ったバンドは常に身に着けておいて下さいね〉
「「「あ…はい」」」
と、すぐさま立ち上がって外を覗ける小窓に取り付くクレイ。
「…此処は支部の演習場じゃない」
周囲の景色を確認すると、まだ降ろされてない筈の隔壁が無く…仮に降ろされていたとしても高円寺支部の建物も無いし、第一こんなに廃墟同然の建物なぞ無かった筈…
「…確かにな。此処は既に隣国のK国の何処かだ…このバンド型PCのマップ機能を見るとわかる」
イチロウがバンドから飛び出して表示されている空間Display(仮称)に映る画像を見て呟いている。どうやって映し出しているか原理も不明だが…ブラックの念話によれば空間上の微粒子に反射させて映し出しているって話しだ。所謂、水蒸気を出してそれをスクリーンにして表示している原理の上位版か?
「そろそろ出るってさ。配られたハイテク機器の検証も結構だが…俺らも出るぞ?」
と、ダンさんがいうと、
「わかった」
「らじゃー」
「ああ」
「はい」
などなど…了解の声を発して出発の準備は完了していたのかぞろぞろと座席から立つ面々。ちなみに俺は返事しないで無言で頷くだけに留めてる。
・
・
ブルルルル…
バンに乗っているメンツは、イチロウ(運転)、ダン(助手席)、クレイ(以降後部座席)、ジライヤ、カナデだ。助手席は3人乗れる余裕はあるが武装を置いてる関係上…3人目の空いた部分には什器…ではなく、銃器が無造作に置かれている。勿論セーフティに入れてあるので物理的にぶん殴ったりしなければ暴発の危険性は無い…と思う。いや、什器だって重いから鈍器としてぶん回せるけどね?(何そのいい訳…(苦笑))
「逃げ遅れた人はいませんかぁ~?」
後部座席で窓を開けて手持ち拡声器でガナってるカナデさん。クレイは無言気味だしジライヤだと声が怖そうだという訳で女性で声もいいカナデさんが消去法で選ばれたのだが…
「…さっぱりですね」
「あぁ…もしかしてもう…」
と、運転席側では比較的暗い雰囲気を醸し出していた。住民全滅説を唱えるイチロウは内心、
(無駄なことしないで早よ帰りたいけど…そんなこといったら怒られるだろうなぁ~…)
と、ダンをチラ見するイチロウ。とその時、
『2km先に公民館らしい建物があります!』
と、花子から連絡が入る。
「状況は?」
車載通信機のマイクを取って喋るダン。
『遠いのでちょっと見え…あぁ、ありがと。え~っと…交戦中のようです。スモールが一杯…あ、1人喰い付かれたっ!?』
ザワザワするバン側に花子が叫ぶ!
『一足先に行きます!…場所は転送するので後から来て下さい!!』
と同時に熱転写型プリンターから地図が印字され始める。ドットインパクト型に比べて音が静かで音感知型エネミーには見つかり辛いということで採用されているが経年で印字内容が消えてしまうので保管には向かないので近年余り見ないし故障した時に修理が大変なのもある。いや、だからどーした?といわれると困るのだが(古い機器を使い回している部署とは斯くもいざという時に困るのであった…)
※世の中ではFDとか生産してる国が僅かなのに未だに使ってる所とかあるそうで…まぁ秋葉なんかで高額で売ってるから何とかなってるみたいだが…余談ですけどねっ!w(FD…一般的にはフロッピーディスクと呼ばれてるけど、正式にはフレキシブルディスクというらしい…個人的にはエフディーと呼んでますがっ!(本当、どーでもいい情報だなっ!w))←MOとかのネタもあるけど被るのでいわないでおこう…え?既に書いている?…マイガッ(まてw)
・
・
「あれか…」
流石にブラックの武装だと人間も蒸発するので(何それっ!?)…
「とうっ!」
と掛け声一番、搭乗口を開けて貰って飛び降り…
「へんっ…しんっ…」
変身時の
「誰が呼んだか知らないが…誰もがその名を知っている…魔法少女花子…見参!」
だが、此処はK国…反日の国でジャパニメーションを知っている子供や青年たちは居たようだが…
「誰だっ!?」
と叫ぶのみだった!w…いやそりゃそうだよな…と心の赴くままに叫んでしまって知らないといわれてカックンする花子だが!
〈GURURURU…〉
と、ダークマターの塊の衣装に興味を示したのか、スモールの群れが攻撃を加えていた建物や青年たちからこちらへ向かって来た。
※ちなみに真っ黒ではなく、それらしい色彩の衣装にグレードアップしています…何も考えないで纏うと黒やら漆黒、若しくは濃いグレーの色になるそうで…ブラックに教わりましたw
「うーん…数が多いなぁ…」
仕方なく、防御魔法を唱える花子。
「バリア!」
ばぢぃっ!!
〈GYAN!!〉
〈GUAU~!?〉
〈GARURURURU…〉
飛び掛かって来た個体はそのまま悲鳴を上げて転がる!
接近したはいいが、先頭の個体の状況を見て足を突っ張って留まる個体。
後方で唸る個体。
(あちゃ…こいつら日本のエネミーより頭良くないか?)
罠?に引っかかったのはたったの1匹だけで殆どはこちらを見てウロウロするだけで追撃してくる様子が無い…仕方なく、
「うわ…もうパワーが切れたっ!?」
と、派手に驚く。
ニヤソ…
エネミーたちはそう口角を歪ませて笑ったように見える。
〈〈〈GUAUUUUU~~~!!!〉〉〉
一斉に飛び掛かってくるスモールの犬型エネミーたち。
「とう!」
四方八方から飛び掛かってくるエネミーを避け…真っ直ぐ上にジャンプする花子!
〈〈〈GUEEEE!?〉〉〉
最初の1匹が地面を噛み、そしてどんどん上から圧し掛かって来る仲間にエネミーたちは回避する暇も無く潰されて行く!w
そして…
「喰らえ!…ナパームショット!!」
新技…炎の範囲攻撃魔法が、構えた
ばしゃああ!…どごぅっ…!!!
ロッドから噴出した炎の塊はやや広がって行き…うず高く折り重なったエネミーたち全部に降り掛かった時点で点火…一気に高温の炎を噴出して燃えだしたのだ!
「はぁ…練習はしてたけど何とかなったか…」
練習とは?…唯単にロッドを振ればいいものではないと。効率よく周囲のダークマターを吸収させ、魅せる動きでロッド内の魔法を増幅し、そして素早く目標に向かって魔法を投射する…その為には最低でも基本のロッドダンスが必須といわれたのだ。
「はぁ…今回は周囲に大勢の目が無くて良かった…」
ひらひらの魔法少女コスにマジカルロッドで目立つダンスを踊ってからの攻撃魔法を放つ…こんなのを日本のオタどもの前で披露すれば、嫌が応にでも目立つ。見た目は美少女…でも中身はおっさんなのだ…同性である男にモテるとか心が死ぬに違いない…
「それに…変身すると微妙にだけど背丈つか年齢が落ちてる気がするんだが…」
※後で〈撮影しときましたけど見ます?〉とブラックに動画を見せて貰ったら…何か14~15歳くらいに低年齢化してた気が、する…ごふっ(吐血)…ブラック曰く…〈衣装の具現化でエネルギーが吸われてるんじゃないですか?〉って…ぇ~…ナニソレ、キイテナイヨオ…orz(変身を解くと元に戻るけどさ…)
まぁ…そんな訳で襲われていた公民館らしい建物は無事。中の人たちも保護(後から追いかけてきたダンさんたちが一時保護してUFOを寄越させて中に入って貰った。その時にも一悶着あったけど割愛)して取り敢えずこの地はクリア。
責任者らしい青年(最初に見た人)に通訳のアンドロイドを経由して(いや全員異世界言語マスターしてるらしいけど…適当に1体ピックアップして通訳してもろた)話しした結果…この辺の地区は籠城していた23人以外は全滅したらしい…
『っていってるけど本当?』
〈
取り敢えず、また通訳を通して説明すると…
「助けてくれ!」
とか、
「助けに行かないのか?…これだから日本人はっ!?」
とか無責任な要求を突き付けてくるんだけど…
「えっと、この辺りに埋まってるそうだけど?」
と、左腕のバンドが表示する地図を見せる。そこは高層マンションが建ってる辺りで偶然崩れた瓦礫の底で虫の息(=意識はほぼ無く、息をしてるだけの可能性大)になってると説明。つまり、何十階建ての高層マンションの瓦礫を撤去するだけでも(しかも底の人物だかを殺さないようにゆっくりと撤去)何箇月掛かるかわからないのに、それをやれと?…と説明しつつ半ば脅迫するようにいってみた。
まぁ、重機なんて動いてるのを探すだけで時間掛かるし、トラファイターは荷を運ぶだけで重い物を浮かびながら引き上げる力はない(中に運び込んだ物なら重量軽減機構のお陰で問題無いんだけど)し…
アンドロイドたち?…人間よりは力持ちだけどこれだけの高層マンションの瓦礫を下に居る人?に影響なく瓦礫撤去させたら…やっぱ何週間か掛かるんじゃね?…重機使っても何箇月か掛かるのが何週間かに短縮するだけでも大したもんだけど、下の人?が生きたまま救出されるかってーと…「無理」の2文字しか浮かばないよね?
(まぁ…トラファイターとアンドロイドを組み合わせても流石に1日じゃ無理だろうしな…)
生命反応はどんどん微弱になってってるし…最初は幾つかあった生命反応も今じゃ2つまで減ってるし…まぁ端的にいえば「死亡した」んだろうな。
『ここの戦闘っていつ頃から始まったんだろうね?』
ブラックに戦闘開始時期を訊いてみる。
〈戦端を開始…最初の1体が現れたのは凡そ3日程前だと記録されています〉
『それって…』
〈はい…そのヒュージが降りったのは、丁度のそのマンションだと思われます〉
「…はぁ」
遣り切れなさを覚えるが、その時に丁度生命の灯が消失した。死んでなければ何とかなったかも知れないが…聖剣の魔力…いや、神聖力というらしい(省略すると違う力と間違え兼ねないので注意w)…がすぐに尽きる。ちょっとした怪我なら何10人でも回復できるが、死の淵に居る人間を呼び戻すにはかなりの神聖力を消耗する…と聞いた。流石に自然と回復する神聖力しか使えない…ダークマターを変換して神聖力を回復とはいかないらしい。
「いうことがある…」
かなりの精神力を持ってかれたが…真実を話す。当然、やってもやらなくても間に合わなかった人助けだが…当然の権利といわんばかりに飛び掛かって来た青年は…花子にマウントを取って殴る殴る殴る!
…その行為は花子の顔面に無事な部分が無くなっても…殴打跡しか見えないような状態になっても殴り続けていた。そして…その暴力沙汰に気付いたダンとクレイが駆け付けて…青年をぶん殴って止めるまで続いたのである…
・
・
「
口の中が気持ち悪いと血を吐こうとしても痛くて口を開くのもままならない。
「はぁ…前からバカだバカだと思ってたけど…本当バカね?」
クレイ姉さん…普段は無口だけど…の毒舌が停まらない。その他ブラザーズが毒舌になると、途端に饒舌になるってのは本当なんだなぁと花子は思った。
いやまぁ…最初は最初でヒュージにタイマン張ってぶっ潰されそうになったし?
次は病院に入院してるのに空中戦やらかしてたしなぁ…まぁあれも無茶無理無謀の一種か…
あれこれ心の中で考えてる間に
「アルコール消毒」
と聞こえて、顔をひょいっと上げた瞬間に
ばしゃっ!
と…目が~!!目が目が目がぁああああああっ!!!
(俺ゃム●ク大佐じゃねーんだよおおおおっ!!!)
と、いきなり顔面にアルコールをぶっかけられて地面で七転八倒でございますよ…クッソ痛い…目がっ!…怪我なんぞに染みる以前に!!
…とそこで聖剣がおずおずと光る。
「怪我、治す?」
と…その心意気が非常に有難いので…
(今すぐ治してぷりぃず!)
と、心の中で叫びました!(いや、世界の中で叫ぶとか普通に恥ずかしいし?)
ぱあああああ!!!
その要求に応じて腰に佩いた聖剣がスラリ…と勝手に抜かれ、空中に浮遊した状態で回復の神聖力が開放される。ついでに…とばかりにここからやや離れた位置の…まだ体に無事な所の多い…ようは少しだけ怪我してるけど圧力で死亡した…圧死した死体もアポートで取り寄せるように周囲に現れ…静かに地面へと…そして。
「ん?…ここは」
「あれ…私…生きて…る?」
「怖いよ~!!」
…と、人それぞれだけど、多分全員じゃないけど…人々が…恐らく死してそんなに時間が経過してないだろう人間たちが蘇生してオロオロしていた…一部泣き出したけども。
そして…聖剣は力を失い…ポトリ…と地面に落ちて…サクっと刺さる。
「あ…こ、これは…」
青年ではなく、少し老けた感じの中年が言葉を漏らす。
「国宝の魔剣ではっ!…まさかこんな所に!?」
いやいや、それって日本の国宝だった筈なんだけど…あ、こら勝手に持っていくな!
「あのーダンさん?」
「あぁ」
「勝手に持ってかれましたけど?」
「あぁ…そうだな」
「いーんですか?…勝手にK国の国宝認定されて持ってかれましたが…」
「問題は無い。神聖力が回復すれば認めた者以外には持てない程の重量になるし、勝手に戻って来るからな」
えー…本当かなぁ?…と思うが、確かに筋力最大のダン部隊長くらいしか投げ飛ばせなかったようだし、瞬間転移はできるので空の鞘が寂しいけど放置することにした。まぁ…
(神聖力ゼロになったことで、見た目魔剣みたいに禍々しい見た目に偽装されてたし…元の姿に戻ったら違う物だと思うだろうし…多分?)
という訳で、勝手にどこぞに消えた中年を除いて輸送することにした…蘇生された人たちが10数人増えたしね。
- その頃の他の地域 -
〈ダークマター吸収率99%まで完遂〉
〈要救助者、死亡者を含み89%完遂(流石に死体が消滅した物は放置)〉
〈エネミー撃退率71%…残りは撤退した模様〉
〈K国の建造物その他の被害率は43%に抑えられた。再建の義務は無い故、避難場所に要救助者と死体を輸送して開放した後…我々も撤退する〉
〈継続して倒壊した建造物の瓦礫の撤去、並びに埋もれているであろう被害者の救助を求められておりますが?〉
〈そのような命令は受けていない。全ての要救助者と死体の放出が済み次第撤退する。全部隊に徹底せよ〉
〈がっ!?…攻撃を受けました…如何しますか?〉
〈弱装弾の
〈はっ!〉
攻撃を仕掛けたのはK国の兵隊であり、
「あのアンドロイドを捕縛せよ!」
との上層部からの命令で仕方なく…という状況で起こった
「事故」
だ…というのは軍のいい分と説明された。が…自国の市民すら巻き込んで攻撃した為に、
「暴走した軍が悪い!」
…ということでお咎めはなかった。そもそも、反撃しなかったアンドロイドが悪い訳はないだろう…
- K国からの要請で仕方なく出撃したら仇で返されたでござる… -
「そろそろ撤退だな…」
「はい…疲れましたねぇ…」
実は…花子が一番の被害者であり、顔面をぼっこぼこにされ損であった…完治したとはいえ、一時は失明と顔面変形でお嫁の宛が無くなる危機だ!…と、カナデに泣かれたのである。
(いや別にお嫁さんになる予定は無いし、相手も居ないし作るつもりも無いし…)
ちなみにマウント取られた瞬間に、久々に
「体感触遮断スキル」
が起動…それもオートで。
※流石にしょっちゅうセクハラしてくるダン部隊長のお財布がどんどん寂しくなっていくのもそうだけど、世間の平和を守っている人のHPが常時減って行くのは不味いだろう…と思って、スキルをオフにしていた訳だ
(いきなり〈体感触遮断スキルをオンにします〉って目前に表示されたのはびっくりしたなぁ…)
んで、目とか顔とか顎とか…全力で殴られて…確かに痛みは感じられないけど、目を殴られる度に視界が赤黒く染まって行くのは怖かったかな…多分だけど、顔面防御を超えた何かしらの力が働いたかで怪我をこさえてたんだと思うけど…まぁ殴っても怪我1つ負わないのは変過ぎるからそこら辺は調整されたのかも知れないけどさ…
(流石に視力ゼロになって顎も外れたのか動かなくなったのは焦ったなぁ…)
その後、聖剣頼りの回復で治ったのは感謝しかないけど…と思っていたら、
ずん…
と、一瞬だけ鞘が重くなり、いつもの重さに戻る。何がって?…聖剣が鞘に収まった時の重さだよ。
(お帰り)
ヒィン…
と応じて光が収まる聖剣。今は疲れたのか何も感じなくなっている…まぁ、今頃は大騒ぎになってんのだろうね…K国の何処か知らんけど。
と、丁度指定された報告の場となったK国の領事館からダン部隊長らが出てきた。一応、救援要請が出た時に報告は何処に?…と訊いた時に指定された場所だ。見れば少々崩れ掛かってるが人が入れなくもない感じだ…倒れないようにつっかえ棒がちょっとだけ見えるけどもw
「…これだけの戦力投入とか市民を助けて回ったんだから少しくらい日本を良く思って貰いたいな…」
とカナデさん。いい人過ぎる…
「無理じゃ?」
とクレイ。いや素直過ぎるけどもっ!…まぁ同意だけどさぁ~…あんだけぶん殴っておいて謝意も謝辞も無かったしな…シャイだから…って洒落が通用すると思うなよぉ~?>青年
「「寧ろ、何だかんだと難癖付けて、復興費用をせびるんじゃない?」」
とはその他ブラザーズの2人。もう、金金金ってそれしかないのかな?…今の世の中、日本銀行券が通用する国って日本国内くらいじゃねーかな?…そもそも金などの希少金属は在庫殆ど無いしなぁ>日本
「支援や救出には感謝している。以上だ…ハァ…ッタク…帰るぞ!」
「「「…え?」」」
「それだけ?」
だが、ダン部隊長は答えず、
ザッザッザッ…
と荒れ地を歩いて口を開けているUFOの搬入出路に向かう。
「…」
何か思慮していたクレイも無言で後に続き、何かいいたそうにしていた残りも搬入出路に歩き出すが…
パーンッ!
と、1発の銃弾がその足を止める。
「…何か用か?」
既に搬入出路の途中まで登っていたダン部隊長が振り返り…無視していた面々を睨む。
・
・
「…何か用か?」
「…全員そこから降りて欲しい」
「なに?」
「2度はいわない…早く「我が国の開発したUFO」から出てくれないかな?」
偉そうな雰囲気の人物の台詞に、
「「「はぁ?」」」
とダンを除く全員で呆れた声を返す。
『マスター…たった今、トンチキな台詞を吐いたバカの声を耳にしましたが…』
ブラックの声が震えている…恐らくは…このUFOやらブラック自身を創造した全マスターたちを侮辱したと思ったんだろうな…まぁ、俺もそう思うけど。
「あぁ…お前たちの創造主を侮辱したんじゃないかな?…だって、お前たちを創ったのは…
※ちなみに…録画と全世界に向けてLIVE放送もしている。これでK国のアホさ加減を理解して貰えるといいかなぁ~?…と思ってるけど。
「なっ!…お前は誰だっ!?」
突然の乱入に呻く偉そうな人。そして応えるブラック…ノリノリだな?w
『ふむ…誰と聞かれれば応えるというのが世の定め…だったか?…我はブラック…黒壱号だ』
ずもももも…
と不意に現れ、全身をその視線に晒す全高10mの巨大な姿に腰を抜かす面々。ちなみに効果音は出ておらず、あくまで出現時の擬音だ。
後、通常は一人称は「我」なんて気取っていないんだが空気を読んで偉そうな一人称を選択したようだ…なかなか優秀だなぁと思いながら眺めていると、
〈マスター…現在の主人は…フルネームは山田花子だったか?…そこにいる美少女と呼ばれる人物だ〉
既に念話は介しておらず、直接ブラックの外部スピーカーでがなってるのでさっきよりは鮮明な音声品質となっている。とはいえ、AMラジオ品質がCD品質になったくらいだが。
(いや…美少女って…正直過ぎるぞ!)
と、顔面百面相をしていると、引き攣ってる青年が…あぁ、昨日俺をフルボッコした奴か。一夜にして完治してるからビビってるのかな?…と思ってたら、
「悪魔だ…悪魔め…滅せよっ!悪魔あああああっっ!!!」
と叫びながら突っ込んで来て…
どぷぅっ!!!
と、腰に佩いたサーベルを抜いて突進…そのまま無防備なお腹に腰溜めしたサーベルを差し出して貫通してくれましたよ…トホホゥ~…orz
「おぐ…」
どぽぽ…
と、口から吐血。そのまま
「はぁっ!」
とサーベルをぐりん!と回そうとして、首トンされて叩き落される青年。いや、首じゃなくて体毎叩き落されて…そのままだとサーベル掴んだまま倒れて股間の位置がお腹からになっちゃうので自力でサーベルを掴んで抜いたけども…
「痛ってぇ…」
体感触遮断スキルの発動がやや遅れたので最初に先っちょがお腹に突き刺さった痛みだけ感じちゃったんですよ…いたひ。
ちなみに、女の子なら即死レベルの痛み(子宮貫通だもんなぁ…)だったのか、青年の貯金もゼロに。HPもほぼ枯渇してて、見事にレベルアップしました…おかげでサーベル抜いた途端にHP全快しましたとも…多分あれだ。昨夜の顔面殴打事件でも結構経験値溜ってたんでしょうな…って何冷静に検証してるか俺。
「ハナコォォォ~ッ!?」
あ、やべ…鬼神のような表情でカナデさんが駆けてくる。後ろのダン部隊長も追っかけてるけど、トドメを刺しそうだから止めに来てるんだろうな…その後ろの他の面々も…イヤァスイマセンネェ…メイワクカケチャッテ…俺のせいじゃないけどなっ!(すん…)
取り敢えず、抜いたサーベルを…危ないのでチャイして…
ポォ~イッ…ヒュンヒュンヒュン…ボスッ!
…と、遠くの地面にぶっ刺さるサーベル。かなり高く放り投げたせいで、柄が埋まる勢いで草が生い茂る地面に…あれ、重機使うか地面掘らないと抜けないかもな?
と思った瞬間…
ドォ〜ンッ!
と、全力疾走の涙顔のアラサーの女性が花子にぶつかって…
一緒に転がっ…
痛い痛い!
…背中!
…背中ヤスリ掛けされるみたいにぃ~…!!!
・
・
聖剣が呆れたのか治療してくんなくて…
背中の幾つかの皮膚が(何故か衣類も一緒に削れてた…これ、軍用の分厚い奴なんだけど…)焼き焦げたかのように…
ええー?…聖剣による治療って1週間に1回だけぇ~?…
いや確かにすげー大怪我したんだけどさぁ…
あぁ…悪意を持った敵からの怪我以外は回数制限があると…
え?…ヤバソウな怪我だけ治したけど残りは自力で治療せよと?
(ひでぇ…)
まぁ、歩くくらいなら何とかなるのでヨロヨロしながら歩いたけどさー…
結局、背中にできた一番でかい火傷だけ治癒して、後は地面の石ころが削った傷とか擦過傷なんかはそう時間もかからないから放置と。後は破傷風予防で消毒はしてくれたっと。
・
・
で、再三じゃなくて再二か?…よくわかんないけど…2度も致命傷を負わせた罪なんだが…意味のわかんない「自国で開発したUFOをどーたら」って意見は頭からすっ飛んでったのか有耶無耶になり、一応目の前で起きた殺人事件を表沙汰にしたくなくば…と口にチャックして貰うことになった。
一応、他言無用の契約はしてるらしーんだけど、結構無視して勝手なことをするってんで有名なお隣のK国だからね…無理矢理記憶操作ってこともブラックたちに視野に入れて貰った。どっち道、エネルギー確保ってことで吸収部隊が密かに暗躍させてるらしいんで(救援要請があって無視しないように許可した国に限り、暗躍して貰ってる)
「あー、そのー、カナデさん?」
「何?」
「離してくれませんか?」
「やだ!」
「やだって…子供ですか?」
「離したら死んじゃうからやだ!」
「はぁ…処置無しか」
こんな感じで、背後からお腹に腕を回して背後霊と化しているカナデさんが爆誕したのだが…本人は守護霊のつもりらしい(苦笑)
(あ~…背中に双丘が柔らかい…じゃあなくて!)
流石に今回のコレで懲りたので「体感触遮断スキル」は常時オンにすることにした…お仕事以外でも、ちょっと怖くてオフにできないわ…これ。
普通はダメージが貫通することはないんだけど…相手が異常な程に精神力が強いと…貫通するようだと学習した。唯…痛みを感じなければそれなりに対処する余裕は出るので…ハァ。
(魔法少女も…万能じゃないってことか)
魔法少女コスを展開してれば怪我なんて負わなかったとは思うけど…それでも完全じゃないってことかなぁ?
取り敢えず、K国の近所の病院は潰れてるし、生き残った医者が治療してくれるかもよくわからんので遠慮し…UFOの中に入って撤退…日本に戻ってから高円寺支部の近所の病院に緊急搬送されることに…
「ダンさんとカナデさん?…大袈裟じゃ…」
「「何かいった?」」
「あ、いえ…何でも」
…結局、以前入院した高級な病院まで移動したんだけどな…支部のバンで(苦笑)
━━━━━━━━━━━━━━━
日本とK国の影のやり取りで…日本の秘密兵器(花子)を抹殺未遂事件×2を出してかなりのゆさぶりを掛けることができたとお褒めの言葉を戴いたそうだけど…そんなのより平和な日常を送りたいわ…ハァ。
※これで花子の給料が上がったということは無かったそうだ…ちょっぴりの出張手当が出たくらい?(2度も死に掛けたってのに…(苦笑))
【短編】TS2(ダブルTS)シリーズ じょお @Joe-yunai
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