第6話 意見箱
自分が通院する度に泣いてばっかりで
家に帰ると心は死んでいた
誰にも言ってないし言えるもんじゃない
だからずっとずっと我慢してた
我慢し続けた結果が
何もかも嫌だった
どうしたら楽になれるのか分からなかった
「自分らしく生きるには」
大学の授業でよく言われてた言葉だ
『自分らしく生きる』ってどうしたらいいのか分からなかった
自分はあの
自分で判断させてくれなくて、だんだん分からなくなった
あの
周りに助けを求めてもダメだった
「……。」
どうしたらいいのか分からなかった
『主治医を変えたい』って自分からは言えなかった
言えるはずもなかった
「転院するんだって?」
「え?あ、うん」
「何で?」
「親子で同じ先生に罹るのは良くないんだってさ。だから大学指定の病院に転院することにした」
「お母さんのこと言ってないだろうねぇ?」
「(「うん」って言ったら問い詰められて殴られるやつだ)言ってないよ」
「あっそ」
転院しても、また転院しても、副作用が身体を蝕み、主治医の言葉で心を余計病ませた
「どうしたらいいん……?」
通院の帰り際にふと目に入ったのは『意見箱』だった
「皆様の意見をお聞かせください」
「『意見』ね……」
とある動画アプリのオススメに、『病院の意見箱』をネタにしてる人を思い出した
「ここに書いてしまえば何か変わるのかなぁ」
自分の生活歴も
自分の環境も
自分の受診のことも
受診中にゲームしている先生のことも
全部全部書いた
表面だけじゃ書ききれなかったから
裏面にまで書いた
次の通院日に全部書いた意見書を入れた
期待はしてなかった
「これで何か変わるんだろうか……」
数週間後、外来の相談員さんに呼ばれることになる
「投函されていた紙のことで、後日来て貰えますか?」
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