後編

 前世の友達が新興宗教マニアで、常に何かしらの宗教に入っている奴だった。

 良い奴なんだが、危なっかしい奴でもあった。

 寂しがり屋なので、よく酒盛りして部屋に泊まるという事をしていた。

 そいつがお経を朝と晩に唱えるのだ。

 それで俺はお経を覚えた。


 酒の席の芸としてありかなと思ったのだ。

 特に嫌な奴が絡んできそうな席ではだ。

 試してみたところ、なにこいつという目で見られて大体は引かれる。


 それで面白くなって暗記に力を入れたわけだ。


 何が言いたいかと言うと、俺は塩に向かって般若心経を唱えた。

 清めの塩を作ったわけだ。


「幽霊よ。これを食らえ」


 塩を撒いた。


「ぎゃー」


 絶叫が響き渡る。

 やっぱりな。

 いやがったよ。


「もう一回食らいたくなければ、出て来い」

「酷いなの」


 半透明な子供の女の子が現れた。

 そうそう、それで良いんだ。


「魔法って幽霊が幻覚を見せているだけだよな。魔法の被害は霊障だよな」

「ぎくっぎくっなの」


「吐いて楽になっちまえよ」

「あれっ、お兄さん。よく見たら、幽霊なの」

「どこがだ。肉体はちゃんとあるぞ」


「でも幽霊なの。間違いないの」


 んっ、どういう事だ。

 地球での俺は死んでいるから、幽霊なのか。


「もっと詳しく」

「憑依状態なの。憑依した元の人間は死んでるの」

「俺ってアンデッドなのか?」


「死んだばかりの肉体に憑依して、生き返ったの」

「そうか。なるほどな。魂が抜け出た肉体に乗り移ったんだな」


 謎が解けた。

 幽霊だから祟りも受けないし、幽霊も使えない。

 だから、魔法の効果がないし、魔法も使えない。


 そうか。

 簡単な事だったんだな。


「俺が幽霊を使役するのはどうしたらいい?」

「契約を結ぶの。幽霊は契約には従うの」

「じゃあ結ぼう。何が欲しい?」


「精気なの」

「それって俺のじゃなくてもいいか?」

「大丈夫なの」


「とりあえず。ニワトリでいいか?」

「選り好みはしないの」


 俺は生きているニワトリを買ってきた。


「どうすればいい?」

「首をはねるの」


 どこかの怪しい宗教みたいだな。

 俺はニワトリの首を刎ねた。


「けっぷ。満腹なの」

「随分と小食なんだな」

「幽霊は祟って殺した時に精気はほとんど貰えないの。そういう決まりなの」

「幽霊の決まりを教えてくれ」


「人間に許可されてないと精気は貰えないの。それと、姿を見せちゃいけないの」

「その決まりは誰が決めたんだ」

「神様なの」


 そうか。

 何となく納得。


「ところで何で素人が作った清めの塩が効いたんだ?」

「この世界の幽霊は神の力に抗えないの。契約で神はこの世界の霊に手出ししない代わりに、霊も人間に許可されなければ精気を奪えないの」


 なるほどそんな事になってたのか。

 俺が唱えたお経は地球の神様のものだから、霊と神の取り決めに抵触しないわけか。

 ついでに俺も取り決め外の霊だから、もろもろが抵触しないのか。


「そうだ。名前はあるか?」

「無いの」


「じゃあ、名前をつけよう。霊子だ」

「レイコ、気に入ったの」


「レイコ、何発ぐらい魔法を放てる?」

「100発は余裕なの」


 じゃ復讐しないとな。

 俺はコリドラスを探した。

 居間にいやがったよ。


 俺はつかつかと歩み寄ると、思いっ切り殴った。

 ざまぁみやがれ。


「何するんだ。許さん」

「レイコ、金縛り」


「ぐがが」

「動けないよな」


 俺はコリドラスをサンドバッグにした。

 ふう、気が晴れたぜ。


「これはどういう事だ? お前がやったのか?」


 怒った表情でそう問いかけて来たのは、俺の糞親父で伯爵家当主のアクトゥスだった。


「ああ、やったが何が悪い。ただの兄弟喧嘩だろう」

「許さん」


「許さないのならどうする」

「炎よ渦巻き敵を灰にしろ、火炎旋風」


 はいはい、清めの塩をパラパラと。

 炎は塩に当たる前に消えた。


 どうやら幽霊は学習したらしい。

 塩は嫌だと。

 当たる前に消えるのは手間が省ける。


 さて、今度はこっちの番だ。


「レイコ、金縛り」

「ぐがが」


 よし、タコ殴りだ。


 ボカ、ゴキッ、ドカ、ドカ……。


 ふぅ、いい汗かいたぜ。


「ぐっ、な、なぜ守りの魔道具が効かん。精神魔法の類は防げるはずだ」


 なぜってそりゃあ、清めの塩を食らいたくないんだろうよ。


「俺が神に愛されているからだろう」

「そんな馬鹿な……」


 殺さなかったのは、使用人が遠巻きに見ているからだ。

 使用人全員を口封じで殺したくない。

 中には親切にしてくれたり、可愛がってくれた人もいるからな。

 使用人を口封じしないと貴族殺しの親族殺しで指名手配されてしまう。

 それは勘弁だ。


 母親の墓にお参りしたら、ここを出よう。

 自由に生きるんだ。

 やるぞ。

 レイコもいるし、成り上がれるはずだ。


――――――――――――――――――――――――

 続きません。

 戯れに書いてみました。

 続かない理由は幽霊物は書きたくないからです。

 ホラーは嫌いです。

 ネタの情報を集める為に、そっち関係の検索をネットでしたくないのです。

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全ては霊の仕業です~魔法の不条理の謎は全て解けた。霊が魔法を演じているんだ。俺はこの事実を使ってざまぁする~ 喰寝丸太 @455834

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