全ては霊の仕業です~魔法の不条理の謎は全て解けた。霊が魔法を演じているんだ。俺はこの事実を使ってざまぁする~

喰寝丸太

前編

「おんぎゃあ」


 赤ん坊が泣いている。

 何だ俺の声か。

 えー、転生しちまったのか。


 母親はどこだ。

 よく目が見えないな。

 仕方ない待とう。


 1歳になり、名前が判明。

 俺はエクエスという名前らしい。


 そして、3歳になり俺の母親は俺が生まれた時に死んでいた事が判明。

 母親だと思ってた人は乳母だった。


 何で分かったかというと乳母が首になったので、俺に最後のお別れを言いに来たからだ。

 それから始まる地獄の日々。


 魔法の的にされて俺はここが異世界だと悟った。

 死ぬかと思ったが、魔法の効果は俺には及ばないらしい。

 転生特典かな。


 6歳になって魔法の勉強を始めて転生特典ではない事が分かった。

 魔法が使えなかったのだ。

 原因は分からない。

 たぶん、転生が関係していると思う。

 そう思うが、手の打ちようがない。


「好きな様に逃げていいぞ。動く的じゃないと練習にならないからな」


 俺は貴族の庶子で、おまけに母親がいない。

 守ってくれる人がいないわけだ。

 俺の前に立って杖を持って構えているこいつは本妻の子で、コリドラス。

 歳は7歳で俺の一つ上だ。


 馬鹿らしいと思いながら、俺は駆け出した。

 動かなくて魔法が当たっても痛くも痒くもないが、こいつらに逆らうと飯が出て来ない。

 腹が減るのは御免こうむる。

 スポーツの一種だと思えばそれほど嫌でもない。


 嫌なのは殴られたり蹴られたりだ。

 魔法は平気でも物理は防げない。


 真剣に逃げる為に何度も振り返る。

 火の玉が俺を追尾してくるのが見えた。

 駆ける速度よりも早い。

 俺は追いつかれて火の玉を食らった。


 ふう、いい汗かいた。


「兄様、こいつ気に入りませんわ」


 俺達を見ていてそう言ったのは、腹違いの妹のイルミナだ。

 うるさいな。


「その目つきが気にいらないのよ。木剣で殴ったらどうかしら」


 おいおい、それは勘弁だ。

 だが、俺はコリドラスに木剣でしこたま殴られた。


 頭は庇ったが、手や足に痣ができた。

 覚えてろよ。


 そして、12年の歳月が過ぎ。

 俺は18歳になった。

 何時もの様にコリドラスに呼び出された。


「今日は真剣で魔法剣を試してやる」


 おいおい、冗談だろ。

 纏わせた炎は問題ないが、真剣はやばい。


 俺は逃げ出そうと隙を伺った。


「逃げたら。飯抜きだ」


 飯より命が惜しい。

 俺は逃げ出した。


「逃げるな」


 火魔法を唱えたのだろう。

 火の玉が追いかけてくるのがちらりと見えた。

 当たっても痛くも痒くもないぜ。


 でも、投げナイフなんか投げられたら堪らない。

 俺が振り返ると、火の玉の中に人間の顔が見えた。

 はて?

 火の玉に顔を浮かべてなんの得が。

 顔はすぐに消えた。

 たまたま、そう見えただけか。

 何だろう何かが引っ掛かる。


 魔法には追い付かれたが傷は負わない。

 そして、自室で一息ついて、考えた。


 魔法っておかしいよな。

 何がおかしいって、魔力を使うと怠くなって、使い過ぎると死んでしまう。

 そりゃあ、生きる為のエネルギーを使っているんだろうけど、生きる為のエネルギーって何だ。

 体温、糖分、それとも電気か。

 地球で暮らしていた俺は納得がいかない。

 それに火になったり電撃になったり、睡眠させる力になったり、そんなエネルギーって何だ?


 石弾の魔法では石が現れて、魔法が終わると石が消える。

 エネルギーを物質化して、またエネルギーに戻す。

 そりゃどういう理屈だ。


 そんな物があるのか?

 想像がつかない。

 いや不思議エネルギーっていうのだろうけど、何かしら法則性があったりするはずだ。


 それに魔道具だ。

 模様を描いたら、エネルギーが色んな種類に変換されるって、どういう不思議だ。

 おかしいだろ。


 発動プロセスもそうだ。

 イメージして詠唱。


 頭の中を覗いて、言葉を聞き取る。

 そりゃ、どんなエネルギーだ?


 ナノマシンが魔力の正体なら分かる。

 しかし、イメージを読み取るナノマシンは物凄く高性能に違いない。

 ナノサイズにそんな機能を持たせられるか?


 それに魔力は体の中にあると思われる。

 外に出るって事は肉体を透過してるって事だよな。

 まさか汗が魔力なんて事もないだろうし。


 細胞より小さいナノマシンなんて実現可能か?

 まだある。

 俺が魔法のダメージを受けないのはなんでだ。

 物理現象ならダメージを受けるだろう。


 俺はある仮説が浮かんだ。

 魔法って幽霊なんじゃないかと。


 それなら数々の疑問が解ける。

 幽霊が見せる幻覚と霊障。

 この組み合わせなら、不合理も納得だ。

 これは検証してみないと。

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