『留囃子』

 ネットやSNSで情報の収集をしました。その中で何通かあり、近場の人に声をかけていきました。まず囃子が聞こえたという人の元へ向かいます。その人はまだ成人して間もない人で、一人暮らしをしている学生です。

 その人から話を聞く。囃子をちゃんと聞いたのは彼の友人らしく、彼は遠くから囃子が聞こえ、近くで祭りが宣伝のラジカセが流れているのかと思ったらしい。けど、その聞いた友人は囃子が聞こえるといったあと、影がなくなったとのこと。

 影がなくなっただけで、その後友人と彼自身はとても困惑したようです。彼は二人で一緒に影を探している最中、違う囃子の曲が遠くから聞こえ、振り返ったときには彼の友人はいなかったと。

 話している最中、彼はこんなことを話しました。


「時々、遠くから囃子の音が聞こえる。大きな神社の中に行くと聞こえなくなるけど、外に出て数日には何度も聞こえてくる」


 と。

 まるで相手を巻き込むように囃子を響かせているらしく、音を録音したようですが聞こえなかったようです。父親がこんな音かと、昔撮影していたお祭りのデータをスマホに移行して保存していたそうです。すると、彼はビクッとして「そうです! これです!」と声を上げてました。


 『留囃子』と『送囃子』を聞いて懐かしさが込み上げます。

 懐かしい囃子ですが、父親は険しい顔で彼にしばらくその生活を続けるよう言いました。またお守りは持って置くべきだときつく言います。

 険しくなるのもわかります。二つの囃子はこんなホラーのようなものではなかったはずです。

 『留囃子』は一箇所にとどまって住人は踊って、亡くなった人の魂を安全な場所に留めるものです。『神幽魂』した人を依り代として、亡くなった人の魂を天に送って踊る『送囃子』です。

 魂を送る彼岸の祭りなのに、なんでやっていることがネジ曲がっているのか。私達はしばらく各地で囃子を聞こえた人の情報を集めて、会いに行っていきました。

 そんな最中です。私達の話を聞き付けたのでしょう。私達に聞かせたいことがあると連絡が入りました。ある老人ホームで祭りのことに詳しい人がいるらしいのです。アポイントを取った後、私達はその人に話を聞きに行くことを決めました。



 翌朝、テレビとネットに最初に情報収集したあの学生の彼が行方不明になったとニュースが流れてきたのです。



『留囃子』


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