麒麟のお出かけの準備
目覚ましのアラームとともに起きて、久田直文はあくびをした。普段は上半身を何も着ずに寝ているようだ。
目覚まし時計のアラームを止めて、彼はカーテンを開ける。細身に見え、かなり仕上げられた上半身の筋肉は凛々しい。胸元にある勾玉のネックレスとともに、直文の全身を朝日が照らす。窓を開けて、彼は風を受ける。
「ふっ! ……んー…………ふぅ……」
直文は腕を伸ばして背伸びをし、力を抜く。纏めていない黒い艷やかな長髪を揺らした。カレンダーを見た。
十月のカレンダーでは、休日にいくつかの赤い丸がついており、直文は頬を赤くして表情を柔らかくした。
今日は依乃達とショッピングをする予定であり、直文は着替える。簡単に着替えられるような格好をし、髪をブラシで整えていく。事前に準備をし終えた着替えとウエストポーチの中身を指差し確認する。
「よし」
準備満タンであること確認し終え、朝食を食べるためにエントランスに向かう。
直文がエントランスに向かうと、机にはおかずと飲み物が入った湯呑が並んでいた。
野菜多めの和風サラダに、焼き魚と箸休めのきんぴら。飲み目のはほうじ茶のようだ。腰巻きタイプのエプロンをした相方がいた。ヘアバンドをつけず、三角巾をしてお盆で味噌汁を運んでいる。直文と目があい、彼は愛嬌のある笑顔を浮かべた。
「おはよう。直文。朝ごはん、できてるよ☆」
「おはよう。いつもありがとな、茂吉」
寺尾茂吉は相方から感謝され、瞬きした後に大袈裟に笑う。
「あっはっはっ! まっさか、俺が多めに作るのを余分に準備してるだけですよー」
「ツンデレってやつか? もっくん。けど、本当に助かってる。ありがとう」
逸らそうとし真っ向から感謝され、茂吉は調子が崩れたのか笑みを崩す。ため息を付き、直文に苦笑いをして素を見せる。
「……お前がその言葉を使うとは思わなかった。まあ、どうも。ご飯は自分でよそってくれよ。なおくん」
「ああ、わかった」
返事をし、直文は洗面所に向かう。歯を磨き、顔を洗う。終えたあとは、エントランスに戻り、お茶碗を手にしてご飯をよそう。ドアから啄木と八一が現れ、八一は眠そうにあくびをして髪をかいた。
二人も直文と同じように洗面所に向かい戻ってくる。ともに食事の挨拶をして、四人は個性は出るが、綺麗な所作で朝食を食べていく。
よく噛んで食べるのが早い茂吉は大きな釜のご飯をお代わりしていく。
八一は味わいながらも茂吉の作った料理の評価をし、「負けてられないな」とつぶやく。
啄木はよく噛んで食べ、大ぶりの茶碗をガツガツと食べるがご飯粒を残さない。直文は綺麗に食べて、味噌汁を飲み終える。
「……ご馳走様でした」
口をテッシュで拭いて手を合わせて、食器を洗い桶に入れた。スポンジで泡立てて、自分の食器をきれいにしていく。泡を洗い流し、水を切るために水切りかごに入れた。
食べている三人に振り返り、直文は声をかける。
「じゃあ、お先に。準備してでるから、彼女を迎えに行って待ち合わせにね!」
「はぁい、なおくん。しっかりしたいからって身嗜みに時間をかけるんじゃないよー」
「わかってるって、もっくん。そっちもあまり食事に時間かけると、澄ちゃんにからかわれるぞ」
「わーかってますよ!」
若干つっけんどんが混ざる。三人は笑うと、茂吉は頬を赤く染めて食べる速度を上げていく。
直文は自身の部屋に戻り、顔を服装を秋物に着替えていく。
薄い上着に七分の寒色のタートルネックを着る。スラックスを穿いて、ベルトを締めた。再び髪を梳かし、依乃から貰った髪ゴムでまとめていく。靴下を履き、クローゼットの扉を開けて、裏側についている姿見で確認をした。
顔もちゃんと汚れてない。見た目も服にも乱れはない。忘れ物もなく、お守りの予備も持っている。
「よし!」
片手でガッツポーズをつくり、直文は張り切ってドアを開けた。三人も食べ終え片付けたらしく、とっくに準備を済ませていた。
玄関で靴を履き、四人は外に出る。八一はバイクで先に向かい、三人はバス停へと向かった。駅で別れ、啄木は元国鉄の方へ。
茂吉と直文たちは同じ駅と同じ駅バス停に乗るが、迎えに行く相手が異なるため二人は別れた。
直文はハニートラップや色恋を利用した情報収集はできる。しかし、自身の色恋に関しては初心者。
故に、浮足立ちが目に見てわかるほど、鼻唄を歌いながら足の動きが軽やかである。有里家の前に来て、彼は開いている門を通り玄関の前に立つ。
朝食はすでに食べ終えている頃合いだと彼は知っている。依乃の親が海外出張で不在で、お泊まりしていたときに彼女から聞いたからだ。
ドアの向こうから気配がし、直文はタイミングが良いと微笑しインターホンを押す。ドアが開く。出かける準備をし終えた依乃は、直文を見て一礼して嬉しそうに笑う。
「直文さん、おはようございます。今日はよろしくお願いします!」
大輪の花火が打ち上がり、直文も眩しい笑顔で答えた。
「うん、おはよう。今日はよろしくね」
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