🌌5-1章 前楽1 動き出す霊能力者たち
『送祭り』
本当に昔の話です。まだおじいちゃんとおばあちゃんの集落に人がいた頃の話になります。まだ集落があったときに『送祭り』が行われていました。『送祭り』とは、灯籠流しとか送り火に近い感覚の祭りです。
ですが、この祭りには手順があります。
一つは『留囃子』という曲を流しながら、一箇所にとどまって住人は踊ります。これは、亡くなった人の魂を安全な場所に留める。
二つは『影奉納』。人の影を神様に奉納するという形なのですが、その影を御神体に覆うようにしなくてはならないのです。
強い明かりで影を作り御神体を覆う。それが奉納という形となり、神様が私達が死んだあとに天国に連れていってくれることを約束してくれるようなのです。
三つは『神幽婚』。これは、天国に連れて行く代わりに影を奉納した一人の中から、形式的な婚姻させる儀式です。酒坏に入ったお神酒を飲み、御神体にささげてから共に隣に立つ。昔は白無垢を着ていたようですが、今は着てません。無論、一年だけなので一年は神様と婚約した状態となり、性交や恋愛などは禁止されています。
四つは終わりは皆で亡くなった人の魂を送るため、『神幽婚』で選ばれた人を中央に置いて『送囃子』を演奏して、その人を中心に踊りをします。
この一連の流れを行うことを『送祭り』と言います。
昔は小さな屋台も出ていて、こじんまりとしたお祭りですが、とても印象に残っています。
もうおじいちゃんたちの集落に人がいなくなって、『送祭り』が行われなりました。もう昔なので今では廃社しているでしょう。ここまでの話なら、廃れた伝統の話になります。
私がここで話す理由は……あります。
……実は各地で囃子が聞こえる現象が起きているようなのです。囃子が聞こえたあとに、影がなくなって違う囃子が聞こえたあとに人が消える……。
やり方が『送祭り』に似ているからです。そんな話を聞いてまさかと思いました。
一応、父親はおばあちゃんたちが住んでいた集落の出身です。その話を聞いた父は驚きつつ、私と一緒に今回の現象について探ることにしました。
父も何故各地であんな現象が起きているのか知りません。
この話は私達が現象について調べて、遭遇したことについて簡単に書き記していきます。
『送祭り』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます