9 ep 帰る前に
安吾とは別れ、啄木と真弓はともに植田という家のもとに行く。ものの数分で辿り着く。周囲の風景にも似合うような洒落た家だ。
土地や木や庭の配置。家の外側の様子を見ても、風水的にこの家は凶宅にならぬように作られていた。
玄関のドアがあき、人が出てくる。葛と重光だ。無事に帰ってきた妹の姿に葛は安心して抱き締め、啄木に感謝をする。
啄木の先輩と奥さんに感謝すると、止めてある重光の車に四人は乗った。後部座席に座り、シートベルトを付けて車を発進する。
車を走らせている中、真弓は頭を啄木の腕にぶつかった。啄木が目を向けると、彼女は目を閉じて寝息を立てている。揺すって声をかけても、目覚める気配はない。仕方ないと微笑む。
「真弓。お疲れ様」
しばらく腕を貸そうと考えていると、葛から声がかかる。
「ですが、本当に村の破壊をしてしまうなんて驚きですよ。山の方から感じていた違和感が綺麗サッパリなくなって……何をしたのか聞いてもよろしいですか?」
「何をしたも、
重光と葛は感嘆していると、啄木は「が」と強調をしだす。
「──それをやれるかどうかは怪異次第。そして、自身の良識を一瞬でも捨て去ることが出来るかどうかだ」
言い放ち、葛と重光の二人の言葉を詰まらせる。自身の良識とは二人が持つ人としての良識を指す。即ち、人ととしての一線を越えられるかどうか。二人はそれを理解した。人を傷付けることを良しとしない穏健派には、受け入れ難い。
眼鏡をかけ直し、啄木は腕と足を組む。
「停まれる場所あるか? そこで、話したいことがある」
「……啄木さん。それって……?」
不思議そうに聞く重光に、啄木は苦笑いをした。
「彼女には、安易に話せない内容だ。諸々と物事スムーズに進ませるには、危険な道も渡らないとならない。……なんせ、これは命令なんでね」
緊張感を走らせる葛と重光に啄木は口を動かした。
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