4 番外
『継紅美村』
ある日の話です。私と友人で車を使って、観光地に向かっていました。ですが携帯のナビに従ったせいで、私達は山の中に迷ってしまいました。
確かに車が通れそうな道ではありますが、舗装されているとは言い難い道です。ただ時間がすぎていき、途方に暮れていたところ、遠くから白い軽トラックがやってきて私達に声をかけました。
迷っている旨を伝えると、おじさんは納得して「あるある」と笑っていました。
どうやらナビを頼りに村の通り道に迷いにくる人物いるらしいとのことです。この先に村があるとは思えなかったのですが、おじさんが村の住人らしく『
私達はナビや携帯で検索すると継紅美村という村はちゃんとありました。私達がいる道は農道らしく、ちゃんと舗装された道路が村にあるらしいです。村から町に行く道路があるとのことです。私達は近くに竹林のある道路を通っておじさんの車について、村につきました。
高台にあるのどかな村で、棚田や畑があります。
若い人は何人かいて、名産は竹炭や竹細工のようです。私達はおじさん達のあとについて行きますが、もう真夜中になっていました。
村には宿もなく、おじさんたちは私達を自身の家に泊めてくれました。おじさんの奥さんも快く迎えてくれて、夕飯もご馳走になりました。お風呂も着替えも用意してくれて快い待遇をしてくれます。
不思議に思いつつも、夕飯を食べ終えた後のことです。ゆっくりしていると、おじさんたちは私達に話しかけてきました。
「お姉さんたち、この村に伝わる昔話を知っているかい?」
と。知らないと首を横に振って答えると、おじさんは昔話を語るように教えてくれました。
簡単に話すと。
『昔このあたりは美しい娘が住んでいたらしく、病気の家族のためにせっせと竹を編んでいた。しかし、ただの茶色いのでは意味がない。そこで娘は自分の血をつけて色を付けていたらしい。その血の竹細工は飛ぶように売れたとのこと。しかし、他の人の血で塗られた竹細工は売れず、娘の作った竹細工だけが売れたのだ。娘の親の病気は良くなり娘は良い男と結婚した。結婚した後も竹細工を作り続け、子孫代々にその技法をここに伝えた。
その美しい娘の血を引く人間が多く住む村。またはその竹細工が赤く美しかったゆえに『継紅美村』というのだ』
とのこと。血を塗料として使っていた時点でホラーだったのですが、おじさんは話を続けました。
この昔話は脚色されためので、子どもたちに柔らかく伝えているもの。本当の昔話はもっと残酷だというのです。
簡潔に話しますが、ここから少し長くなります。
『この村には美しい娘が住んでいました。娘の親は畑を耕さすなど仕事をせず文句ばかり、自分の娘を殴ったりけったり。娘は竹を編んで竹細工を売りに出て、お金を稼いでました。
竹細工の出来は良いのですが、あまり売れません。稼げたとしても稼いだ金は親がすべて使い、酒や博打などで消えていきます。稼げないお金に関して親から文句を言われ、どうしようかと悩んでいたところ、一つ思い浮かびました。
そうだ。親の血を竹細工に塗ってみようと。
親が寝ている間に縄を両手にくくりつけて、身動きできないようにしていたのです。首を傷つけて桶に血を流して、血が出なくなるまで沢山の血の桶ができました。親は動かなくなったので、近くの山に埋めて置きました。娘が作る血の竹細工は美しく、飛ぶように売れました。血で塗られたとしらずに、人々は買っていきます。
その血が尽きて竹細工が売れきれた頃、娘は結婚しておりました。夫は良い人であり、二人の間に息子が生まれました。
夫が働き者のこともあり竹細工を作る必要もありませんでしたが、家族が増えると稼ぎも増やさなければありません。娘は親ではなく、自分の血で塗った竹細工を作り売り出していきました。親の血で塗った竹細工よりも売れ、娘は己の血で塗った竹細工を売っていきましたが、娘は竹細工を作っているさなか、死にました。残された親族は娘が血を塗った竹細工を作って売っていたことに驚き、怖くなりました。
血の竹細工のことについて、彼らは口を
と。
『血に濡れた竹細工の
この由来からこの村は元々は『
私と友人は怖くて震えました。
おじさんたちも笑いながらも、地元の工芸品の竹細工を見せてくれました。赤く着色した竹細工がありましたが、流石に血ではなく普通の塗料だそうです。
私達は工芸品を見ながら、お風呂に使ってお部屋で泊まらせていただくことにしました。
寝ている間、何やらちくっとするような感じで何かが抜き取られているような感じがありました。気付いて目を薄く開けてみると、先程のおじさんとおばさんが注射器で私と友人の腕から血を抜き取っていました。
ちょうど血が抜き終えた頃なのか、注射器を手慣れたように抜いて、絆創膏を貼っていきます。
「目覚めてないか」
「大丈夫よ。あなた。血を抜き取ったから。目覚めたら、いつものように口を噤ませればいいのよね」
「ああ、そうだ。我々村の伝統である竹細工は廃れさせてはならない。今でも血を使った技法を使っていることは話してはならない」
「けど、目覚めてくれたほうが、血が多く抜き取れるのだけど」
「都合よくいかないだろ」
「そうね」
「バレたらいつものように」
「口を噤む、のね」
おじさんとおばさんは寝る前とは別人のように見えました。おじさんとおばさんが去るまで私は狸寝入りをし続けて、朝まで起きていました。
血が抜かれたせいか、貧血気味で友人も体調が悪そうでした。
腕の絆創膏は友人は不思議に思ってましたが、私はあえて何も言いませんでした。おじさんとおばさんは気遣って、朝食は食べやすくて
私達はご飯を食べていきますが、昨夜のこともあってあまりご飯は食べれません。
ご飯を食べ終えて村に出ていく前、おじさん達はお土産に赤い竹細工の工芸品をくれようとしましたが、すぐに断って私は急いで村に出ていきました。
国道らしき場所を出て行き道路を走っていくさなか、友人は驚きの声を上げました。なんだと聞く前に、友人は「継紅美村の名前がない」と言います。
どういうことだと聞くと、友人はマップのアプリ画面を見せられました。昨日はあったはずの『継紅美村』の名称がありません。
私は車のナビを調べました。同じように『継紅美村』の名はありませんでした。
どういうことだと考える前に、この一帯から去ったほうがいいと
ちょうどお昼ごろだったので、近くの食堂の駐車場で止まってその食堂でご飯を食べました。ご飯を待っている中、『継紅美村』について話すと年老いた店員さんが不思議そうに話しかけてきました。
何でも『継紅美村』の出身の人らしく、血を取られた話以外の話をすると。
「確かに、そんな昔話と工芸品はあったわ。けど、おかしいわね。『継紅美村』は六十年前ぐらいに廃村になったはずなんだけど……」
と、いっていました。
まさか、そんな。と思い、簡単に調べたところ、『継紅美村』は本当に六十年前ほどに廃村となってました。
では、私達が遭遇したあの村とあの人達は一体。友人は顔を真っ青にして怯えていました。私は絆創膏された腕の方を見ましたが、絆創膏はありません。
ただ、腕にある注射痕だけが夢ではないと告げているかのようでした。
あの後、心配になって神社と寺でお祓いをしました。あのような不思議なことはありません。ですが、私は注射がだめになりました……。
友人にも血が抜かれたことを話したかというと、今でも話してません。話すと、何故か口を噤まれるような気がして……。
第三者なら見られても大丈夫じゃないかと思い、ここに書きました。
今でも思います。あの時は一体何だったのでしょうか。
(この先、この継紅美村の書き込み主が現れることはなかった。一部の人間は口を噤まれたのではないかと話題になっている)
『継紅美村』
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