🎐4 終章

ep 新たな関係性の門出

 最終日の帰る日。真弓は啄木の協力者という位置で落ち着き、直文達が身の上を明かして彼女を卒倒しそうなった。四人も神獣の半妖がいるとは普通にありえないが、気絶しないだけ偉い。

 帰宅する際、直文達は清水港に向かうフェリー乗り場にいた。荷物は郵送で送る故に手ぶらである。が、フェリー乗り場には啄木と真弓がいない。啄木は絶対に船を乗らない。陸から帰るために、タクシーに乗って三島に向かった。

 料金を支払いタクシーから啄木が降りる。が、あとから真弓が続いて降りてくる。タクシーが去ったあと、駅に残った二人。啄木は眉間にしわを寄せ、ため息を吐く。


「……また聞くけど……なんで、ついてくるの? 真弓」

「抗議」

「協力者なんだから諦めろよ……」


 呆れる彼に真弓は不服そうな顔をする。


「私は啄木さんに言ったよ。思い出作ろうって、なら帰ることも思い出の一つだよ」

「わかるけど……葛たちに指定した迎え場所、フェリー乗り場の近くだろ。一応迎え場所を電車の駅に変えてもらう連絡入れてよかった。……はぁ」


 深いため息をついて、啄木は頭を掻く。

 真弓の願いを連絡したときの葛が凄かった。兄は何かを察したのか、返信に間があり、謝罪とともによろしく頼む旨が来た。字面の向こうは頭を抱えたように見えたのは、二人の気の所為ではない。

 真弓は説教の気配を感じ、若干現実逃避に走っていた。

 三島の土産も買う、三島特有のコロッケである。啄木はかなり多めに買っていた。券売機で駅の切符を買い、ホー厶につくと真弓に声をかける。


「真弓。お前、兄ちゃんに感謝しろよ?」

「するよ。大切なお兄ちゃんだもの。お土産も買ったし、たくさんお土産話をするつもり。……勿論、組織のことは言わないよ。依乃ちゃんのためにも、私とおにいたちのためにもね」

「ん。破ったら、勝手に記憶消されるようになってるからな」

「うん、気をつけるよ」

「……信用ならないな」

「酷い! ……って今までの行いが物言ってるよね……」


 怒る前に自身の行動を振り返り、真弓は文句を口にするのをやめた。苦笑しつつ啄木は真弓を見ていると、駅ホームのアナウンスが聞こえる。

 線路の上を走る音と止まる音。彼等は中に入り、空いている席に座る。外の喧騒や車内アナウンスを聞いているうちに、列車が動き出した。

 各駅停車であり、特急はない。真弓は興味津々に流れていく風景を見ると、啄木も風景を見ていた。

 富士山が間近で見える光景に真弓は感嘆する。


「わぁ、すごく綺麗……!」

「そうだな……」

「って、啄木さんは見飽きてるか……」


 長生きであることを忘れていたが、啄木は窓の外を見ながら。


「いいや、飽きない。一人じゃないから飽きないよ」


 サラリと言われ、真弓は嬉しくも切なげに頷く。

 ガタンゴトン。音を聞きながら、二人は車窓の風景を目的の駅につくまで座る。



 駅についた後、駅に迎えに来た葛と重光に、案の定真弓が叱られたのは言うまでもない。叱られている彼女を見て、啄木は苦笑しつつも暖かく見守っていた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る