12 後日談 全面解決

 後日の朝。地元ではちょっとした騒ぎが起きている。地元で心霊スポットと噂される廃墟が一夜にして崩れたのだ。ある農業の人が通っているとき、その建物の外観崩れていると知ったようだ。

 啄木は別の用事があり、一緒に行っていない。

 丁幽から話を聞いて、三人はかつて探索した建物も前に来た。

 あまりにも様変わりした光景に三人は言葉を失う。

 塀は壊れていないが、敷地内の建物は言葉通り崩れている。屋根も崩れ、壁も瓦礫の山とかす。敷地内の地面は耕されたかのように盛り上がっていた。玄関の前にあった木はなくなっており、もはやただの瓦礫置き場と化している。

 かつて探索した建物の跡形はない。重光はあまりの様変わりした光景に立ち尽くすしかなかった。


「……これ、ほんまにどういうこと……!? 一夜にして人が行えるもんやない」


 葛ははっとして目の前の有様を見た。


「……そういえば、啄木さん。何が起きても報酬はもらっておけって言ってたけど……まさかあの人がやったのか……!? 変に責任を感じてみたいやし……まさか……」


 真弓も啄木の言葉を聞いていた。三人が啄木が責任を感じていたことに気付いていた。しかし、それは全て啄木の責任ではなく三人にもあると、彼女達は認識していた。


 責任を感じ、この屋敷を倒壊をしたのだとしたら。


 少女は目の前の崩れ去った建物を見て息を呑む。『ひとつなぎの屋敷』化した凶宅の跡地に、異様な気配はない。曰く付きと言えるような気配はない。


 啄木一人で倒壊できるほどの建物でないと、真弓も見てわかる。


 地元の人間が倒壊する際、音や衝撃が伝わっていないのがおかしい。

 被害が出てないのも不思議だ。また建物を崩す際も、解体作業などが重機が必要である。建物を崩す際の業者の知らせの看板がない。

 真弓がやってくる道路の途中に、倒壊をする際の看板は一切なかった。


「……啄木さんがやったとしても……どうやって?

啄木さんは建物から出てくる際、すごく疲れてた。術での倒壊は難しいし、時限差にするにしても、啄木さんにそんな術を仕込むようなことなんて、状況的にできなかったはず。それに、地面も機械や術でやったと思えないぐらいの、地面の耕され方だし……」


 妹の意見に、兄は汗を流しながら目の前の土地を見る。


「……俺達はあの人を詳しく知っているわけじゃない。怪しいと思うことはあるが、間違いなく今は信頼できる人だ。基本的に干渉しあわなければいいはずなんだが……」


 葛は少し怯えたように笑う。


「……正直言うと都合よく進む状況とこれ見て、啄木さんが少し怖くなった。……本当にあの人は何者なんだ」


 畏敬いけいの念を抱く。三人は思考停止、思考放棄しているわけではない。啄木に関する情報を集めようにも、正体を掴む情報があまりにもないからだ。いわば、彼らは雲をつかもうとしているようなものだ。


「……そう、だね。啄木さんは何者なんだろう」


 兄に真弓は同意した。

 商売敵にもなり得るとも啄木は言っていた。真弓は意味を理解できない。しかし、助けてくれた神獣と啄木が無関係だとは思えなくなった。



 あのあと、啄木の言葉通りに三人は報酬は貰う。恩をどうやって返すかと同時に彼らは、啄木の存在について改めて考えた。




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