🎐4−3章 三人の陰陽師 一人の半妖

『ひとつなぎの屋敷』

 とっても怖い思いをしたから、俺はここで話さなきゃならない。俺がまだ大学生でオカルトサークルに入ってた頃だ。

 怪談とか話したり、有名な心霊スポットとか行ったり、廃墟の撮影したり、肝試ししたり。本当にホラー好きが集まって、心霊スポットを一目見てその場の観光地を楽しんでただけ。

 俺もその時は普通のホラー好きだった。ホラゲーを楽しんだり、廃墟の探検をして、恐怖のドキドキ感も楽しんでた。

 でも、俺はある日。そのサークルをやめた。いや、やめざる得なかった。

 やめざる得なかった理由をここで語ろう。

 ある日の夜のことだ。

 俺が車を走らせて、俺達はサークル活動である心霊スポットに向かう最中。ある町外れの道路を走っていると、怪しげな屋敷を見つけたんだ。

 敷地と建物もとっても大きくて、怪しげで良さげで絶好な廃墟だった。俺達はここを探検しようってなったんだけど……好奇心は猫をも殺す。その好奇心が良くなかったんだろう。


 俺達は車を近くに止めて、その屋敷に入った。


 屋敷に入るための門は閉ざされていて、『侵入禁止』っていう看板がある。屋敷の門や塀には多くの札が貼られたり、御経のような文字が多く書かれていた。俺達はよじ登って入っていった。不法侵入とか、そんなの気にしていなかった俺達はどんどん入っていったその廃墟の探索に入った。

 埃っぽさと長年の古びた感じに、皆で変にドキドキしていた記憶がある。


 俺達は2つグループに分かれて、廃墟の探検をしていった。


 部屋、厨房、エントランスに大きな広間。中に怪しげなものはなかった。

 色んな部屋を探索してみたけど、ホラーゲームのような定番もなかった。フリーホラーゲームの定番は期待していた最中。俺達は戻ろうとしたき、廊下の角の方からペタペタとなにかが歩くような音が聞こえてきた。

 なんだろうと俺達は見ると、奥の廊下の角からそれは現れた。


 人の数本の手足がペタペタと動かしていた。人の手、人の足、人の手、人の足。こんな順番に何かにつながっている。

 あまりの異様さに背すじが凍ったが、それは恐ろしい恐怖に変わる。

 そいつは、ジャンプをして顔を見せたんだ。

 人の顔の横から手足が生えていた。いや、くっついていたんだ。

 普通の人の顔を中心に人の手足が花びらのように展開していた。壁と床に手と足をつけて、俺たちを見てはにたり笑っていた。


『人だ。ひとだ。ひゅーまん、ひゅーまん』


 子供がおもちゃを見つけるように言ったもんだから、俺達は怖くなって慌てて逃げ出した。そいつは手足を使って追いかけてくる。器用に顔からはやした手足を使って追いかけてくる。

 俺達は必死に逃げきって安全地帯までついた。化け物の遭遇なんてそれらしくなってきたと、俺達は興奮と恐怖が合わさった状態だった。

 次、どんなのに出会えるのかなんて軽いことを考えてた。

 そんな考えが次で吹っ飛んだ。歩いていくと、廊下の奥に見覚えのある後ろ姿があった。そいつは分かれたグループの一人だった。


「おーい、何やってんだ」


 仲間の一人はそいつに声をかけて、方に手をおいたところあらぬ場所から仲間の手が現れた。

 胸の辺りからのびて、そいつの手をつかんだ。そいつはびっくりして手を離そうとしたけれど、伸びた手は離れない。

 伸びた手を伸ばしたそいつが振り返ると、両目に人差し指が生えていて口から継ぎ接ぎの長い舌。胸には両手が生えていて前面の服だけボロボロだった。

 人差し指のはやした目からボロボロと涙とヨダレながしながら。


「ひーほぉ、ヒーほぉ、ひー、ひー、にー、にげ、にへてにへてにへてにへてにへてにへてにへてにへてにへてにへてにへてにへてにへてにへてにへてにへてひひひひひひひひひひひひひひひひにひひひひひひひしきにひひにひひひひひひひひひひひひHHHHHHHHH-ひゅーひゅーひゅーひゅーはん、ひゅーはん、ひゅーまんひゅーまん、ぎぃあ、ぁああ! ひゅーま゛ん゛!! ひどぉぉぉ!!」



 継ぎ接ぎの舌を噛み切って言ったあと、そいつは仲間を捕えようとした。俺はそいつにタックルして、地に倒させた。

 俺は急いで立ち上がって。


「逃げるぞ!!」


 声をあげて仲間と一緒に逃げていく。全力で走って逃げていくうちに、背後から声が聞こえてきた。


「ひゅーまんひゅーまん、つなぐつなぐ!」

「ひとひと、人だ。くっつくひとつなぐ! つなぐつなぐ!」

「いっしょ、いっしょ。ひとつなぐつなぐつなぐ!」

「なかまなかまなかまなかま、だめ、だめにげろにげろだめだめにげろにげるだめひゅーまんつなぐつなぐ!」

「いやだいやだいやだいやだいやいやじゃないひとつなぐ。楽しいたのしいたのしくなくなくないつなぐつなぐつなぐ!!」

「つなぐ、いやだめ、にけへ、あは、あはあはあはあはあひあはあはははははははは!!!」


 声に悲しみ、おののく。その全て声が別れたグループの声だった。その後、俺達は外に出て門をよじ登る。

 門の前で降りると、ガチャガチャと門を開けようとする音がした。振り返って俺達は、見てしまった。別れたグループの変わった姿を。

 顔と胴体が逆さまになって、別の人間とくっついてできたもの。顔だけで、跳ねて来ているものや。真ん丸く太って無数の頭を増やしているもの。

 俺達は全力でその場を逃げて、車に乗って急いで屋敷の前から去っていった。



 その時、俺達は車の中で一夜を過ごした。

 ……変わり果てた仲間の姿は夢にも出てくるものだった。俺達は夢見が悪くも、やっぱり仲間が心配だった。その日の朝、屋敷の前に行ったんだ。

 すると、門前の前でお坊さんや神社の人らしきひとがいた。

 俺達は気になった。仲間の一人がその人達に声をかけたんだ。


「すみません。何をしているのですか?」

「うん、お兄さんたちは?」

「……ええっと、××大学のオカルトサークルのものです。この屋敷に入った仲間が心配できたのです」


 と、素直に話した瞬間、二人の顔色が変わって。


「この、馬鹿者が!!」


 と激しくお坊さんから怒られた。俺達はそのまま神社でお祓い。その後、寺でお経やお焚き上げなどでお祓いをしてもらった。

 お祓いを受けた後、仏前の前で俺達はお坊さんと神社の神主さんからある話を聞いた。


「あの屋敷の持ち主はとんでもない奴でな。あの土地を儂の叔父から盗んだ輩なのだ。あえて家相の悪い屋敷を建て、自分の身と周囲に悪いことを起こさせた。保険金と賠償金いう金欲しさに諸々悪事をしていたのだ。あやつは近所迷惑になるたびに難癖をつけていた。あの周囲では当り屋をして有名でもあった。そして、裁判を起こしては有利に持っていき、金を貰っていた。入院とかの医療費も、非のない相手に支払わせていたのだ」


 とお坊さんが語ったのは、あの屋敷の持ち主の件。関係ないだろうと思ったけど、そんなことなかった。


「だが、そんな悪事も長く続かない。屋敷の家相から土地から嫌われ、悪行から先祖に嫌われ……。更にその持ち主から受けた怨みが積み重なり、その屋敷の持ち主とその屋敷全体が狂い始め、魔窟まくつとなった。……中を見ただろう。人が異様な姿になっていたところを。あそこには、屋敷にいた家族と持ち主が化け物となって徘徊し、屋敷に入った人間を化け物たちは同族にしているんだ。

人の一部をもいでは繋いで、人とは違う形にする。

故にあそこは『人繋ぎの屋敷』と地元では呼ばれ、近づかぬように住民や子供たちに言い聞かせているのだ。あの化け物は外に出ることはないが、あそこの土地一帯は悪影響を出しかねない。私達の曽祖父が封印の札をはり、お経で防いでいるのだ」



 と。

 要は、『屋敷の持ち主の悪行から土地や先祖に嫌われ、守ってくれるものがなくなり、怨みがまとわりついてあの化け物が生まれた』とのこと。

 とんでもない場所だった。

 俺たちにお祓いをしたのは、その屋敷の悪い気を取り払ってくれたからだという。けど、お坊さん曰く、俺達が助かったのは本当に運が良かったからだという。もう二度とあの屋敷に近付かないことを約束したけど、俺は他のサークルの仲間が助かるかどうかを聞いた。

 神主さんは。


「もう化け物となっては助からない。……助かる方法は残念ながら一つだけ。その意味は君達もわかっているだろう。それに、あの屋敷が要になっている為、倒壊や火事が起きない限り、あの屋敷の中で化け物として生き続けるだろう。……まあ簡単に起こせるものではないけどな」


 行動を起こす前に、屋敷の一帯の気がまとわりついて狂うだけだと神主さんから言われた。……勝手に家壊すのも、放火も犯罪だからしないけどさ……。

 その後日、俺達はサークルを解散して俺はオカルト関連に関わることやめた。

 もう危険なことはしたくないし、自分の命も仲間の命を大切にしなきゃと思ったからさ。……けど、関わることやめたとはいえ、化け物になって屋敷に囚われた仲間の件については後悔している。

 あのとき、俺が止めてたら何かちがったのかなって思い出すたびに思うんだよ。





『ひとつなぎの屋敷』

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