8 可怪しさの原因探り
頬を押さえる安吾に、啄木はしゃがんで顔を合わせる。
「……まあ、久々に出てきたから咎めはしない。協力でチャラにしてやる。安吾」
頬を押さえながら安吾は息をつき、笑みを浮かべた。
「構いませんよ。
問われて啄木は割れた式盤を手にして見せる。
「六任式で占術で女郎蜘蛛を占ってほしい。できるだろう?」
真弓は目をまるくして、頼まれた内容に安吾は呆れる。
「……啄木。占いは防犯カメラの機能はありませんよ? 六任式とは
「わかっているから、彼女の遭遇した女郎蜘蛛を占ってほしいのさ。安吾」
真弓に顔を向け、啄木は彼女を優しく引き寄せて前に出す。
「その場合、三善さんの協力が必要になるけどな」
「……私の?」
きょとんとする白椿の少女に、安吾はまじまじと見つめて納得したように微笑む。
「──なるほど。
「えっ」
状況が追いつかない真弓に、啄木は教えた。
「陰陽師が頑張れば勝てるはずの女郎蜘蛛が急に強くなった原因。これから確かめる」
教えられ、少女は驚愕した。
「……うそ、わかるんですか!?」
占いで完全にわかるとは思えない。占いとは、あくまでも判断や予言と予測のようなものだ。彼女の驚きの言葉に啄木は渋々と頷く。
「確認だから、わかるってわけじゃない。失敗する可能性もある。けど、やらないよりかはいい」
彼は自分の相棒に目線を向ける。安吾はうなずいて、割れた式盤を隅に寄せて箱からまた別の式盤を出す。式盤を中央に起き、安吾は手をかざした。式盤の文字が光だし、驚く少女に啄木は指示を出す。
「三善さん。安吾の真似をして、襲われた女郎蜘蛛の姿を思い出して」
霊力によって作動した式盤が呪具だとわかり、真弓はすぐに使用方法を察した。
「……っはい」
彼女は深呼吸をして、戦った際の記憶を思い起こした。縁ある相手を思い浮かべ、その相手を占う使用だ。安吾は何かをつぶやき始めると、文字が書かれた式盤の円が動き出す。勝手に動き出す光る式盤は何個の円盤を回転させ、ふっと止まる。
安吾は呟くのを止めると光が消え、一部の文字だけが光りだす。妖怪を占えてしまったことに真弓は言葉を失う。
安吾は手をかざすのを止め、真剣に式盤を見つめた。
「……これは、いけませんね」
啄木は頷く。
「ああ、やっぱり、予想通りか。女郎蜘蛛に人間の魂の運勢がでてるな」
「……えっ、人の魂!? まさか、人の魂を食って力にしているのですか!?
無機物に魂を宿すならともかく、魂を自身の糧とするのは良くないことですよね……。退魔系の職業でも、妖怪でも守らないといけない事項のはず。妖怪でも、人でも、魂魄……言わば魂は天か地に返すべきと……まさか……」
真弓の話に啄木は頷いた。
あの女郎蜘蛛は人の魂を食っている。
妖怪や人間でも魂を己の糧とするのは禁忌とされている。禁忌となったのは、力を得て世を乱すだけではない。啄木や安吾の所属している組織が、輪廻の巡りを邪魔する者を
彼は話を続ける。
「そう俺が確かめたかったのは、この占いで女郎蜘蛛の中に取り込まれた人の魂を占えるかどうか。……予想通りに食ってたな」
後半の声色を低くした。
予想通りと聞き、真弓はぽかんとした。予想をついているとは考えられないだろう。言葉を発せずに驚く彼女に啄木は教えた。
「普通の妖怪が急に力をつけるなんてない。俺たちはよく知っている。これは経験則だな」
退魔師以前に彼らは妖怪との戦いはこなれており、様々な状況と遭遇している。冷静になっていられる二人を真弓は尊敬の眼差しで見る。多く困難な状況をくぐり抜けたのたろうと、彼女の中ではハリウッド映画並みのアクションを広げる啄木と安吾を想像していた。
「すごい……!」
貫禄を感じて感動している真弓に、安吾は式盤を上で手を払う。浮かび上がっていた光が消え、安吾は息をついた。
「……ふぅ、僕の仕事はここまでですか?」
「女郎蜘蛛の監視。動くべきときの手伝いだ」
仕事が
「わかりました。では、僕は片付けてますね」
相方が式盤を片付けていると、啄木の目は真弓に向けられる。
「三善さんは怪我を治すことに集中。相手は──」
「私も手伝います!」
「駄目だ」
手伝いを申し出る彼女に啄木は即答した。陰陽師としての責務と正義感から、真弓は食いかかるように聞き返す。
「なんでですかっ!? 人の魂が囚われているなら助けないといけないではありませんか!」
彼は怒りを顕にし、真弓の怪我した箇所を指差す。
「
スマホの画面を見せた。
画面には白い紙の『そそっかしい妹の取り扱い説明書』と載っている。兄からの贈り物に、真弓は口をあんぐりと開けた。本当に送られてくるとは思わず、ご丁寧に十枚ほどのプリントアウトができる。
余程の問題児だと内容を帰って来る前に確認し把握した。啄木はにこやかに、怒気を孕ませながら笑う。
「あっはっはっ、悪いけど俺同業者の前に医者なんだわ。医者の言う事はちゃんと聞けよ。治りたかったら聞け」
笑っているが声が冷ややか。かつてない
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