10 その後
その日の夜。
「早速おめかしか? 早いな、直文」
振り返ると後ろには直文がいた。着物と
「ああ、
「……ふーん、なるほど。じゃあ、あの子を大切にしているのはそういうことで解釈して良いんだな? 直文サン」
彼のからかいを含んだ指摘に直文は「好きに解釈しなよ」と
「八一。それは?」
「お前がここに来る前に
彼らには経緯の中で瑠樹と那岐の話をしてある。八一が手にしていたのは那岐の遺灰だ。短い間ではあるが、彼は二人のやり手りと見て仲が良いと見抜いていた。また瑠樹の那岐への思いやりは無下したくないと、狐の半妖は彼らに手向ける。八一はしゃがんで風呂敷にある灰を川の中へと流す。二人は遺灰が川に流れていくのを見つめた。彼らは
直文は気になっていたことを
「八一。いつから、田中ちゃんと仲良くなったんだ。協力者にしては親密のようだが」
「はっはっはっ、いやぁ、最初は協力者の扱いだったさ」
「……じゃあ、今は?」
「奈央が欲しくなった」
直文による暴露の衝撃にも負けぬ爆弾発言。八一の発言を耳にいれて、彼は表情をひきつらせる。発言した当の本人は、謀略を
「いやはや、彼女が悪いんだぞ?
最初は一線を引いていたのに、向こうが踏み越えてきたんだ。会いたいと願う約束。私に向ける気持ち。しかも、両思いであることがばれても記憶を消されても会いたいとさ。懸命な目を見れば、落ちるものさ。だが、もっとも驚いたのは、私の好みはどうやらお嬢さんそのものらしい。確かに
悪い顔をして直文に告げる。
「だから、私の邪魔をするなよ? 直文。未来でもあの子を手にいれようと私は思っているのだ」
「……だが、八一。お前は」
暗くなる彼の顔を見つめて、何かしら八一は腑に落ちたのか頷いた。
「ははっ、なるほど。だから、配慮の欠いた発言したのか。──直文。お前の本当の任務を聞かせてもらおうか」
聞かれて、直文は悲しそうに目線をそらす。彼は話し合いをする際に、直文の
「直文。有里さんは未来にお嬢さんを連れて帰すといったが、お前に与えられた任務はそれだけじゃないだろ? 未来に影響は与えはしないが、変化させてはならない事がある。大したことはないなら、ここにいる時代の半妖に任せても問題はない。だが、問題があるからお前に命令が与えられた。そうだろ?」
「……本当、天才は嫌になるな」
「ありがとう。だが、お前も天才だぞ。直文」
「……馬鹿かっ。褒めてないっ! その様子だと俺がここにいる本当の理由も見抜いているだろ!」
直文は苛立ちを見せて大声で言い放つ。八一は大きく目を丸くして
「っはっは……、本当に表情豊かになってるな。私は
直文は
「なるほど。本当、あの子の立場が協力者でよかったよ。……この真実はお嬢さんには伝えるなよ」
「伝えるわけ無いだろ。これは──」
その言葉を放つ。八一は淡々とした表情であり、直文は渋い顔をしていた。見つからぬよう隠れていた白狐はぴくっと体を振るわせる。八一と直文が見たのに気付いて、白い狐は慌てて去っていった。
「……おい、八一。今のは」
「直文。追わなくていい。もう一度言うが、あの人は敵じゃない。翌朝に私がよく言っておくよ」
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