8 古今の邂逅2
奈央と麹葉は驚き、八一も目を丸くした。
夜久無は背中を強く蹴られて、河口側までふっとばされる。八一が蹴りつけた訳ではない。夜久無を蹴りつけた相手は別にいる。その人物は
長い
「身隠しの仮面か。懐かしいものを引き出したな。直文」
名を呼ばれ、彼はそれを外して顔を見せた。淡々とした月光を思わせる無表情。
「
指摘を受けて直文は目を丸くし、表情を
「……まったく、何処まで事情を把握しているだ。八一」
親しげに呼ぶ彼に、八一は楽しそうに答える。
「保護した協力者のお嬢さんから未来が変わらない程度まで。お前の話も大体聞いた」
「なるほど、把握した。まったく、手早いな」
過去の仲間に直文は苦笑した。そこにいるのは奈央の知っている久田直文である。また遠くからは声が聞こえてきた。奈央にとっては聞き覚えのある友人の声だ。
「……ちゃーん……なおちゃぁーん!」
顔に紋様の描かれた布のようなものをつけている。
「依乃ちゃんっ……はなびちゃん、はなびちゃんっ!」
やって来る依乃の元へと駆け出して、互いを抱き締めた。
抱き締めるときの感触はあり、温もりもある。
「っわぁーん! はなびちゃんっはなびちゃんっ。本物? 本物だよねっ!?」
「うん、うん……! 私だよ。奈央ちゃんっ。……よかった。本当に過去にいた……!」
涙ぐむ依乃の顔を見て、奈央は力強く友人を抱き締めた。
「っ……寂しかったよ……。帰りたいよっ……!」
「悪いがお嬢さん。そうことは簡単に済まなさそうだ」
河口側の方を八一は見つめる。蹴り飛ばされた夜久無がボロボロになりながら、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきたからだ。直文と依乃の登場に、夜久無は顔に出ている動揺を隠せていない。敵の狐を
「八一。現状の説明を簡潔に」
「あいつは田中奈央狙いでここに来た。ちょっと呪いをかけて痛めつけたんだけど、とんでもないことに時駆け狐はあいつが取り込んで一部にし
厄介そうに直文は顔をしかめる。簡潔な説明だが帰りが難しくなったことをすぐに把握したようだ。動揺せずに直文はここに来た方法を話した。
「俺達は時駆け狐に似せたもので未来から来た。だから、片道で帰りはない」
「まじか。理由は……ありそうだな」
苦笑する八一を見て、直文は夜久無に目線を送る。
「どうする。八一。あいつを
「直文。むしろ
「なるほど、いいな」
八一の提案に直文は頷く。
怖い会話を聞き、夜久無は表情を
八一は目を向けると、夜久無は「ひっ」と怯えて煙と木の葉を撒き散らして姿を消した。
アニメや絵本に出てきそうな典型的な狐の消え方に、八一はため息をつく。
「おいおい、逃げ方で三流の実力を見せるなって」
直文は八一に疑問をぶつける。
「逃がしてよかったのか?」
せっかくの帰還方法をつかむ相手を取り逃がしたのだ。最もな疑問に八一は頷き、難しそうに川の奥を見つめる。
「ここで痛めつけても、
一部になっている以上、八一達も下手に動けないのだ。
「……まあ、
八一は少女達を見つめて、直文に提案をする。その案は賛成であり、互いの情報を共有することが先決。仲間の提案に彼は頷いて、少女達に近付いて申し訳なさそうに声をかける。
「二人ともごめん、怖いところを見せた」
依乃は首を横に振る。
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
奈央はガッツポーズを作り、直文に笑う。
「私も大丈夫です。夜久無ざまぁみろが強かったので怖いとは思いません!」
いつもの明るい
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