5 地元の活惚2
休憩が終わるが、彼女達にも疲れが出てきた。真っ暗になってきており、通りにあるライトがつき始める。通りにつけられた提灯にも明かりが灯された。
別の曲が流れてくる。ねぶた囃子が聞こえてくる。
かっぽれの踊りの合図のホイッスルと共に緊張感溢れる曲調が流れて、
このかっぽれの
ゆっくりとした動作から切り替わり、歌が入ると彼女達は踊り出す。先程のレゲエよりも踊りやすいが、ダンスを楽しむならばレゲエだろう。また
踊る際、隣の直文が不意に■■の視界に入った。
直文は笑っている。花火の光を思わせる弾けた笑顔で楽しいそうだった。人が楽しいと自分も楽しい。■■は身の奥から沸き上がる衝動を抑えず、破顔した。
奈央とフードの彼は同じタイミングでサビを踊る。澄は茂吉の踊るテンションの高さに驚くものの、笑う。
踊る最中、■■の笑顔を見て驚くものも多い。
彼女が本当に楽しそうに笑うのを始めてみたものが多いからだ。直文も驚いている一人。目を丸くしたものの、直文も表情を緩ませて弾けて笑ってみせた。
祭りは掛け声でさらに白熱していき、雰囲気も額に汗が出てくるほどの熱気が溢れたものとなる。歌が始まり、掛け声が終わり振り付けが始まった。それでも熱気は途絶えず、本当は太鼓の音で熱気が更に上がっていく。
どんなに
最後の一つ音が上がったねぶた囃子で掛け声をあげていく。ねぶた囃子が聞こえなくなって最後は
息を整えているうちに、スピーカーからは明るい曲調が聞こえてくる。
シンセサイザーの音ともに、全員が手と足を動かして踊りを始めた。
ポップでありながら、何処か陽気な雰囲気を漂わせる。各
エイサーだ。沖縄のエイサーと地元のかっぽれ合わせたもの。「せいっ!」と拳を突き上げて拳とは反対側の足を上げて、■■の
歌と共に■■の動きが滑らかになっていく。元々ダンス教室に習っていたのだ。清水っ子である彼女の血とダンス魂が騒いでいるのだろう。
茂吉は楽しそうに踊る澄を一瞥したのち、穏やかに笑って踊りに戻る。奈央はフードの彼と共に気にせずに踊り、直文と■■は互いに顔を見合わせて笑顔になった。
サビにはいると、
彼女の
やって来た約二十五秒間のフリー枠。その前に、一部の各
「いくぞぉぉっ!」
「「応っ!」」
フリー枠に入る声を
フリー枠は個々ではなく
彼女のチームはクオリティの高い部類だ。
ダンスが上手い人々がクオリティが踊り、踊れない人は簡単な踊りを踊っている。
■■と直文、茂吉と澄、フードの彼とその他の人物はキレのあるダンスを踊る。特に■■はソウルを隠さずに、楽しそうに踊って見せた。
各
フリー枠が終わり、全員が同じ振り付けをする。
二番目に入ると同じ振り付けであるが、各
■■は先程のダンスで体力を全部使いきってはない。直文は汗を流してはいるが、熱気のせいだろう。
奈央も疲れを見せ始めているが、フードの彼はまだ余裕そうである。茂吉も同じように余裕だが、澄は少し疲れを見せ始めた。
サビにはいる。各
声を聞いて、■■は隣にいる彼のことを考える。
いつも一緒にいたが、名を取り戻せば彼のいない日常が戻ってくるのだろうと。だから、この時間を大切にしたい。忘れたくない。大好きな花火のように弾けて記憶に刻み込んで踊ろうと、彼女は体と手足を動かす。
曲の終盤に近づくとき、全員が声をあげた。
「「「よいーとな、よいよいっ!」」」
せいっと声を上げて、手もあげる。序盤の曲調に戻って振り付けも最初のものに戻る。最後に向かうまでの振り付けを行い、最後は両手を広げた。
「「やぁっ!」」
終わりと共に掛け声をあげる。汗で濡れた服と額と髪を感じながら、■■は肩を上下して息を荒くする。彼女と同じように
アナウンスが長い休憩を入れると話す。各
■■はふぅと息をついて奈央と澄に振り返る。奈央は踊る体力の配分を間違えたらしく、フードの彼にタオルとスポーツドリンクを渡されていた。茂吉は澄と軽く談笑しながら汗をぬぐい、ドリンクを飲む。彼女はほっとすると頬に冷たい物が当たる。
「ひやぁっ!?」
慌てて振り返る。直文が悪戯っ子の微笑みを浮かべていた。
「ははっ、今度は間違いじゃないよ」
「な、直文さんっ。いきなりはやめてくださいよ!」
「あっははっ、ごめんね。はなびちゃん。はい、これ」
「もう……ありがとうございます」
スポーツドリンクとタオルを渡され、仕方なく笑って■■は受け取って感謝する。スポーツドリンクは踊る前に飲みきった。気遣いしてくれるのは嬉しかったが、お茶目をするとは思わない。タオルで汗を脱ぐってスポーツドリンクを飲み、直文に目を向ける。彼は優しく見つめていた。その目線が恥ずかしく、スポーツドリンクの冷たさがよくわかる。
二人のやり取りを見て、茂吉は近付いてニヤニヤと笑う。
「やっだー、なおくん。彼女にお熱だねぇ」
指摘されて名無しの少女は周囲の目線に気付いた。
「……? もっくん、彼女は熱源ではないから熱くないぞ?」
「いや、そうじゃないよ。ってか、そこで天ボケかますな」
茂吉は突っ込みをいれて、直文は訳がわからずに瞬きをする。相方にあきれて、茂吉はため息をはいて教えた。
「もう率直に言うよ。直文。人の多い場所で彼女とイチャイチャして優しく見つめるなんて、彼女にお熱い証拠さ。しかも
「えっ? それは…………あっ」
彼は瞬きをしたのち、頬を赤くした。
「気付いて、ちょーっとは恋愛レベルアップした? 少しは行動を考えなよー」
茂吉は軽く肩を叩いて去っていく。直文は慌てたのち、彼女を見て照れ臭そうに視線をそらす。彼の気持ちはわかっていたとは言え、あからさまに好意を示されて■■は恥ずかしくなってタオルで顔を隠す。
生暖かく見守る視線と「何を見せられているのだろう」と嫉妬が混じった視線が二人に注がれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます