『山と言う名の心霊スポットについて』

 さて、皆さん、初めまして。私は直文達の上司だ。これから話すのはオカルトばんに載っている怪談ではない。私個人の話として聞いてほしい。



 名無しの少女の地元にはある有名な場所がある。有度山うどやまの山頂を日本武尊やまとたけるのみことが登り、景色を四方しほうから見回した伝説から名付けられたもの。

 名を日本平にほんだいらと言う。四季しき折々おりおりで見せる表情が違っており、冬から春では雪化粧ゆきげしょうをした美しい富士山ふじさんが見られる。ちょっと未来では新たな展望台てんぼうだいができる。そこで読む漢詩かんしがどんなものになるのか想像したくなるが、それはまたの話。ああ、観光かんこう協会きょうかいの回し者かと思われるだろうが違うぞ。組織の上司さんだ。

 さて、何故この話をしたのかと言うとだ。

 

 皆は『心霊スポット』を知っているかな? 

 幽霊や妖怪の出現しゅつげん。または超常ちょうじょう現象げんしょうが起こる場所とされている。

 ここまで話せばわかるだろうか。そう、この日本平にほんだいらと呼ばれる場所にも心霊スポットがあるのだ。

 日本平にほんだいらにある心霊スポットといってもある廃墟はいきょ。あるトンネル。ある歩道橋。この歩道橋は新たな展望台てんぼうだいを作られた年にもう解体されている。またこの山に廃墟はいきょもそれなりにあるのだ。

 組織の上司さんとしてはこの廃墟はいきょ買い取って改装したい。

 

 失礼。ついでにもう一つ話しておくとしよう。


 山が異界と繋がっていると言う話は聞いたことある人はあるだろう。

 山には様々さまざま由縁ゆえんがあるのだ。妖怪や天狗てんぐが住み、精霊や神がおり、山にかんする怪談も多く、またあの世への入り口とも。幽霊も山におり、場所によっては溜まりやすい。オカルトではないが、現実的げんじつてきに危ないという理由もある。ほら、怖い野性やせい動物と怖い虫とかも出るだろう?

 山は人が多く集まる場所ゆえ、純粋じゅんすいな自然であっても、人工物があっても危ない。つまり山自体が心霊スポットのようなものでもあるのだ。安全な場所もあるが、まあ気を付けなさいと言う意味もあるのだ。


 普通の人間が心霊スポットにいく際は、自己責任と言わせてもらおう。相応そうおうの準備をしてから進むように。そうあまり深くは言わない。我々われわれは個々を尊重そんちょうしたいからね。


 ……ああ失敬しっけい。仕事の時間だ。


 皆、怖いもの知らずなのもいいが、命は大事にするように。組織の上司さんとの約束だ。

 ああ、命を大事しないなら、私達の仕事が増える可能性かのうせいがあるだけだ。大事にしないのなら別に構わないがね。



組織の上司より


『山と言う名の心霊スポットについて』


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る