第6話 汗ばむ掌

 食事の時間を削って頑張りすぎると、あとで大きな代償を払わされます。免疫力が低下し、病気にかかりやすくなる。口内炎になれば、何日も痛みが続く。


 そんな代償を分かっていながら、ついつい食事を少量にしてしまいます。夏バテで食欲がない理由もあるでしょうが、特に朝ごはんをしっかり食べることが難しくなってきました。学生時代の体内時計と比べ、大幅にズレてきていることも要因の一つなのかもしれません。午前三時に目が覚めて、授業準備をすることはなかったですから。


 簡単に朝ごはんを済ませ、六時台の電車に乗り込む日々。

 一学期が終わるまで残りわずか。あともうひと踏ん張りだと、自分に言い聞かせていました。ただ、六月に入って大きな問題が出てきました。仕事道具チョークと、肌の相性が悪いという大問題が。




 私が生徒だったときは、チョークで手が荒れることはありませんでした。指や制服についた粉を叩いても、異変はなし。


 しかしながら、チョークを頻繁に使うと、指先が乾燥してしまうのです。教育実習期間中で身に染みました。


 三週間の教育実習のうち、授業をしたのは二週間程度。国語は四クラスの二時間授業、道徳は担当したクラスの一度だけ。計九回の授業で、両手は荒れに荒れました。九月下旬から十月中旬までの暑い時期だったため、汗とチョークの粉が反応したのでしょう。教育実習後半は、ただれた指に絆創膏を貼ってしのぎました。


 そんな教育実習の反省から、四月からチョークホルダーを使用しています。ただ、書く度にキィキィという嫌な音が鳴りやすいため、教室のチョークと併用中。掌の脱皮は最小限に食い止めているものの、いつ領地拡大されてもおかしくない状態です。


 iPadとプロジェクターを接続して、板書を映すこともありますが、一つの授業ごとにスライドを作るのは骨が折れます。また、費やした労力と生徒の学習意欲が釣り合わなければ、より疲労を感じます。準備時間を考えれば、やはりチョークで書く方が早いのですよね。生徒が板書を書かない心のダメージも、抑えられますし。


 肌に優しい、炭酸カルシウム製のダストレスチョークを購入してみようかしら。


 夏にかけて手荒れがひどくならないよう、何らかの対策を立てていきたいです。

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