第5話 風清らかな初夏

 長かった五月もようやく終わり、衣替えの時期に入ってきました。職場の雰囲気に慣れてきたものの、肝心の授業には、まだまだ課題があります。


 少しずつ見えてくる、生徒の胸中。ほかの先生が持っている、声かけの引き出しの多さ。


 そういうものを踏まえると、仕事に慣れましただなんて言えません。生徒の心に寄り添う教員を目指しているのに、生徒の不安や悩みに気付くことができていないのですから。


 教員間の連携がなければ、生徒との溝はより一層広がっていったでしょう。とある先生から詳細を聞くうちに、罪悪感で涙が溢れてきました。生徒は、どんなに苦しい思いを抱えていたのか。生徒のことを見ているようで見ていなかった自分を、不甲斐ないと感じました。


 泣くぐらいなら最初から上手くやれよとは思うのですけど、一旦このモードに入れば涙を出し切る必要があるのです。三つ子の魂百までとはよく言ったもので、幼稚園児のころから変わっていない性能。(ほんと、不要なオプションです。相手の先生の声に威圧された訳ではないと、嗚咽を堪えながら弁解しなければいけませんから)


 流した涙の分だけ、お豆腐メンタルがもう少し強化されれば良いのですが。泣ける話で涙腺がびくともしないくせに、困ったものです。

 まぁ、ボロボロになったおかげで色々な先生の体験談を聞くことができましたし、結果オーライなのでしょうか。相談先が見つかっただけでも、心に余裕が生まれましたもの。


 あとは、挙がってきた改善点をもとに修正するだけ。簡単に修正できないものもありますが、声かけを一言二言足すだけでも印象は変わるでしょうから、言葉選びをさらに意識付けてやっていっています。六月こそ自信を持って「仕事に慣れた」と言えたら、良いなぁと思います。


 自信を持つと言えば、カクヨムWeb小説短編賞2021の話題を。自作「雪に咲む」が

 https://kakuyomu.jp/works/16816700428947699774


 短編特別賞に選ばれました!

 わぁい、ぱちぱちぱち!


 内定のお知らせは、随分前に連絡がありました。受賞したことを早く伝えたくて、もどかしい日々を送っていましたね。


 完結できたことも、中間選考突破も、受賞の朗報も、すべて読者の皆さまの支えのおかげです。素晴らしい結果を導いてくださり、誠にありがとうございました!


 小説を投稿するときはドキドキしますが、実体験をもとにした「雪に咲む」は特に緊張しました。


 島崎藤村や石川啄木のように、私生活の詳細を知ってしまうと作品の感じ方が変わる作家はいますよね。石川啄木の場合は、日記が処分されなかったせいで明るみになりましたが。作品に罪はないのは分かっていても、何だかなぁと思ってしまいます。それゆえ「雪に咲む」を公開しない選択もありました。


 それでも公開したのは、行き場のない思いを誰かに受け止めてもらいたい気持ちがあったからです。書くだけでは満足できず、繋がりを求めた。そんな執筆の動機が、奇跡を生むことになるとは思いもよりませんでしたね。

 今回の結果を糧に、精進していきます。


「雪に咲む」に登場した占い師さん曰く、今の仕事が軌道に乗るまで五年。小説家の夢は、二〇二五年から二〇二七年まで長期的に取り組むこと。どちらも共通する五年後の自分は、何を成し遂げているのか。これから起こることが楽しみです。


 平日はほとんど執筆する余裕がありませんが、色んな人と接する職場は良い刺激になるはず。四月から蓄積された疲労が肌に出始めているため、肩の力を抜きつつ仕事と執筆に取り組んでいきたいです。

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