第4話 強まる日差し、痛める喉

 夏への移ろいを感じる季節を迎え、ほんのり汗ばむ季節になりました。


 スーツの下に着るシャツは半袖です。まだ衣替えの季節ではないので、上着を着用。服装の規定は厳しくありませんが、スーツが無難なのです。きちんと感が出る上、毎日の洗濯物の量を減らせますし。土曜日にスーツ二着を洗濯、翌週は別のものを着用するようにしています。丸洗いできるスーツは優秀ですよね。ついでに、それを身に付ける人のステータスも向上してくれたらなぁ。喉が痛くならない、みたいな。


 仕事柄、声をよく使います。先生が教室のテンションを上げていかなければ、生徒の集中力が保たないのです。


 活字があれば嬉々として読み込むのは、物書きだけの習性らしいですね。教科書本文よりも、iPadへの愛情をひしひしと感じます。その画面は読解のヒントになりやしないぞと、机間巡視をしながら注意をする日々。


 もちろん、教科書に線を引いたり、書き込みをしたりする生徒もいます。ただ、授業について行けていない生徒ほど、支援がより重要になっているのです。できる子との差を生まないため、学習意欲を失わせないためにも。


 目指すのは、どの生徒にとっても分かりやすい授業。生徒に出す質問や指示は、なるべく具体的にしています。


「本文中から四文字で抜き出してみて」

「筆者はAと考えているけど、Aと考えた理由は何かな? 五段落から探してみよう」

「具体的に筆者はどんな具体例を挙げているの? その後の文章には何て書いてある?」


 分かりません、分かりません、分かりません。


 本文をろくに読まずに連続で言われれば、めげそうになります。分からないという言葉で逃げているのか、本当に分からないのかが判断しにくいから。首を傾げることも相槌もないから。


 焦りでこわばる喉を酷使して、フォローの言葉を絞り出すのでした。


「できるだけ『分かりません』って言わないようにしてね。自分の頭で考えてみてよ」


 発問の難易度を下げすぎると、やる気をなくす。難しすぎても駄目。ほかの先生方の授業を見学させてもらいつつ、ちょうどいい塩梅を模索中です。

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