ACT.27 『ロングヘアーにお別れを』
数千片に及ぶ花びらが、役目を終え儚く散っていく
桜の木の下で、見つめ合う二人の少女たち。
その表情は、悲しくもあり嬉しくもあり...。
炎花がライラの長い髪を。
ライラが炎花の長い髪を...。
今まさに、髪を切るという行為。
こういう時に女性には未練がないのだろうか。物凄い勇気。
過去の自分との決別とでも言うのだろう。
「いくよ」
「うん」
瑞々しい顔のライラ
一瞬、表情が鈍る。
だが、しかし、
「シャキ、シャキ」
放熱した電磁ナイフで、炎花の茶色い長い髪を切ったライラ。切った髪が、桜の花びらと共に風でなびいていく...。
炎花が軽く笑った...。
身が軽いと驚く炎花。
声質が明らかに変わった。
「スゥ―」
「ハァー」
「フフフッ」
間髪入れず、
「今度は、私の番」
炎花、可愛らしく目をつむり、ライラの髪を切る。
「えい」
その瞬間、ライラもクスリと笑った
ライラの顔が大人っぽく見えた
互いのこの行為こそが、永遠を殺害する決意表明たらしめたのだ。
ショートヘアの二人。
ダブルヒロイン、ここに誕生す!
スロヴネンヤ《燃え殻》が、まさに『炎』になった瞬間であったのだろう。
少し前まで、淡い桜の花びらがある種の弱々しさをはらんでいたことが嘘のようだ。
後、炎花のワルキューレは、ライラと同じ機体色に施され、NO.02(ゼロツー)のステッカーが付与された。もう、この機体には、役目が回って来ないと言うのに..。まさかという時のとっておき・切り札、否、予備とでも言うものか。
今回は、複座式に生まれ変わったライラのNO.01(ゼロワン)で決着を着ける。新型デュアルコントロール・システム《DCS-d》の優位性に賭ける。一人では、駄目。2人ならば..。
「ライラ...」
「炎花...」
桜の木の下で、キスをする二人。
炎花とライラの気持ちは、数千光年先の宇宙。
永遠を倒す決意はここに決まった。
桜舞い散る中、この地を後にする。複座式のワルキューレに乗り込む二人。
もう、あんなに炎花のワルキューレが小さく見える。
「さよなら、私のロングヘアー」
と炎花が、さらりと言った。
ACT.31 『ロングヘア―にお別れを』終
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