飛び降り自殺

飛び降り自殺

男　「飛び降りないの？」

女　「どうしてそんなこと聞くんですか？」

男　「決まってんじゃん。僕は人が死ぬ瞬間

　　　を見てみたいんだよ」

女　「あなた、本当に最低ですね」

男　「そうかな。人が死ぬ瞬間って滅多に見

　　　られないし、人生で一度くらいは見て

　　　みたいってみんな思ってるよ」

女　「それをネットに上げて、有名になろう

　　　って魂胆ですね」

男　「いや、それは違う。僕はあくまで一人　

　　　で楽しみたいんだ。人と共有するつも

　　　りはない。それに今、小説を書いてい

　　　るんだけどさ、飛び降り自殺するシー

　　　ンがどうにも上手く書けないんだよ。

　　　人が飛び降りて地面にぶつかる時の音

　　　は、一体どんな音なんだろうとか、遺

　　　体はどんな風に損傷しているんだろう

　　　とか気になるんだ」

男　「だからさ、早く飛び降りてくれな

　　　い？」

女　「あなたのせいで飛び降りる気がしなく

　　　なりました。今日はやめます」

男　「君、本当は飛び降りる気なんて最初か

　　　らなかったんだろう？ただ誰かにかま

　　　ってほしかっただけ。そういうのやめ

　　　なよ。いざという時に誰も駆けつけて

　　　くれなくなるよ。オオカミ少年みたい

　　　にさ」

女　「それ、私のこと嘘つきって言いたいん

　　　ですか？」

男　「だって、飛び降りる振りして、飛び降り

　　　ないのってどこからどう見ても嘘つき

　　　じゃん」